シアヌーク国王が監督・主演の映画「ボコールの薔薇」についての考察
1969年に当時のシアヌーク殿下によって制作されたボコールの薔薇という映画があります。殿下自身が監督し、そして主人公の長谷川大佐を演じました。恋に落ちるヒロイン役は、モニク王妃です。
中国韓国を始めとしてアジア各国で製作された、第二次世界大戦当時を描いた映画では、極悪非道な日本人がよく登場します。自身でメガホンを持ち、日本軍の大佐の役を演じても日本を悪し様に表現しなかったシアヌーク殿下の想いはどこにあったのでしょうか。
2000年に小渕総理がカンボジアに来られた際には、シアヌーク国王主催の晩餐会での小渕総理の挨拶でも、この映画について触れられています。
この映画については都市伝説が存在して、北朝鮮で撮影されたと誤解されている記載を散見します。イギリス人ジャーナリストの本の記載からの引用のようですが、撮影地は国王の別邸のあったカンボジアのボコールです。翌70年にはクーデターで亡命することになり、持ち出されたフィルムは北朝鮮で編集されました。その為映画の冒頭に北朝鮮のハングル文字が確認できます。またこの映画が完成して、当時の金日成主席や近正日と平壌某所で鑑賞したとの口伝も聞いています。
この映画のあらすじは以下の通りです。
帝国陸軍大佐の長谷川一郎の率いる部隊が、高原避暑地であるボコールに展開。フランス軍を武装解除します。(1945年に行われた明号作戦と思われます。)そこで出会ったのが、映画の題名でもある「ボコールの薔薇」と呼ばれるフランスの血の入ったカンボジアの美女、ロゼットでした。(ロゼットはモニク王妃が演じています。)彼女は、フランスからの解放と言いつつ、同じように侵略しようとしている日本人の長谷川に心を閉ざしていますが、その後抗日運動に参加した彼女の弟が逮捕されます。日本の敗戦の色が濃くなる中、ロゼットの弟を釈放した長谷川大佐に、ロゼットの心は揺れ動いていきます。お互い惹かれあいながらも最後には別離を選ぶことになります。
この映画の中では、日本軍の規律正しさが描かれている点が印象に残りました。また残虐非道なといった表現が全くなく、主人公の長谷川大佐など、真面目で誠実な人物として人情味豊かに描かれています。
公開前にクーデターで国を追われ、北朝鮮で編集された幻の映画として、ボコールの薔薇は知る人ぞ知る存在でした。1990年代に入り、新生カンボジア王国で即位し帰国が叶ったシアヌーク国王は、晩年この映画をカンボジアでも改めて発表しますが、残念ながら遠い過去の映画が注目される事はありませんでした。
今年は日本カンボジア友好70周年です。この映画を改めて両国で多くの方に見ていただけないか、現在日本カンボジア友好70周年文化交流事業実行委員会で検討中です。
とても親日だったシアヌーク国王、この映画を作ったその理由については、改めて投稿します。
当ブログは「にほんブログ村」のランキングに参加中です。1日1回のクリックにご協力ください。