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【カンボジアニュース】またもや特殊詐欺犯25人逮捕。カンボジアで何が起きているのか?

日本でも注目され、大きく報道されているこの事件。報道を取りまとめ、現地カンボジアで入手した情報を加えて投稿します。今年3回も特殊詐欺の摘発があったカンボジア。その背景も含めてまとめてみたいと思います。

最新の状況

カンボジアから日本に特殊詐欺の電話をかけたなどとして、日本の警察当局は8日夜、9月から現地当局に拘束されていた20~42歳の日本人の男25人を、日本に移動するチャーター機内で、詐欺と詐欺未遂の容疑で逮捕しました。容疑者は、埼玉県内の複数の警察署に分散して移送され、今後取り調べが行われます。被害は8道府県に及んでおり、捜査は北海道・岩手・長野・三重・京都・兵庫・和歌山・広島の8道府県警合同で、100人体制で行われる模様です。

8日昼過ぎ、国家警察出入国管理局から移送される容疑者

報道によると、今回逮捕された全員が詐欺グループの「かけ子」役とみられ、被害は全国で少なくとも数億円に上る模様です。埼玉県警大宮警察署に設置された合同捜査本部においては、「闇バイト」を通じて指示役らからカンボジアに集められた可能性を視野に、カンボジアにおいてどのような日本人グループが受け皿となったのか、全容解明を進める方針です。

余談ですが、埼玉県警の記者会見においては、逮捕されたのは「石原寛和他24名」とされています。あたかもこの石原容疑者が主犯と誤解されかねない表記ですが、あいうえお順で1番最初にある名前が石原容疑者だっただけのようです。

日テレ報道より(埼玉県警の記者会見)

また、摘発の翌朝に拠点から逃げ出した容疑者の中で、現在も逃走を続けている3人については現在も発見されていません。捜査関係者によるとこの3人はタイ国内に潜伏中で、このうちの1人が今回のグループの主犯格のようです。

テレ朝報道より(監視カメラに容疑者が確認された国境のカジノ)

捜査関係者によると、容疑者の多くは首都プノンペンの拠点アパートメントで軟禁状態に置かれていた可能性があり、中には現地の日本大使館に助けを求めた者もいるようです。9月の摘発の際には多数のパスポートが1カ所で発見され、大半の容疑者はパスポートを取り上げられていたものと思われます。

NHKによると、容疑者は「午前9時から途中1時間の休憩を挟んで午後7時まで毎日10時間拠点のアパートメントにいた。月に1回休みはあったが外出は許されなかった」と供述してるようです。また、8階建てのアパートを貸し切り7階のフロアを電話をかける専用の場所「かけ場」として使用していたとみられるということです。

今年に入ってからのカンボジアでの連続摘発

カンボジアでは今年、日本人による特殊詐欺グループの摘発が相次いでいます。4月には、警視庁がシアヌークビルのリゾートホテルで拘束された19人を詐欺容疑で逮捕しました。このリゾートホテルの実際のオーナーは日本人であるとも言われており、事件との関係性について懸念する声も聞かれます。

また、5月にもタイ国境アンロンベンで、現地有力者が保有し中国系のマフィアが運用していると思われるカジノ施設併設の建物において、摘発が行われました。日本への送還後に、佐賀県警がそのうちの3人のみを逮捕しています。現地での拘束人数と異なることから、パスポートを取り上げられ軟禁状態で強要されていた被害者もいることが推察されます。また実際には摘発ではなく引き渡しだったとも言われており、中国マフィア等の影響力が推察されます。また日本の反社が多国籍で連携する国際化を懸念する声も聞こえてきます。

特殊詐欺だけではないカンボジアでの反社活動

こういった特殊詐欺にとどまらず、カンボジアにおいては、数年前から日本の暴力団や半グレなどの反社会的勢力の進出が懸念されていました。コロナ禍では反社と見られる多くの日本人がカンボジアに流入し、在留邦人らが恐喝や暴行の被害に遭うトラブルも顕在化しました。現在は、目立たぬようにとの反社内部での指示のもと被害が減少しているようですが、カンボジアからいなくなったわけではありません。統制が取れるようになった多くの反社会的勢力構成員がカンボジア国内に存在する事実に変化はありません。また捜査関係者によると、今回の特殊詐欺拠点に直接関わっているとみられる人物のグループは、コロナ禍に銃器での武装を強化していたとも言われています。

特殊詐欺拠点に弁当を供給していた日本料理店「胡蝶」が、摘発の翌日に夜逃げ

報道によると、今回摘発された特殊詐欺拠点では、パスポートが取り上げられ、移動の自由が制限されてた模様です。捜査関係者によると、かけ子には外出の自由はなく食事については弁当が届けられており、プノンペン都内中心部バンケンコン地区にある胡蝶という日本料理店で作られていたとのことです。関係者によると、毎日150個以上の弁当が作られていたとのことで、今回摘発された拠点以外にも複数の拠点が存在することが推察されます。

蛇足ですが、テレビ朝日によると、日本での取り調べにおいて「食事もおいしくなかった」と言っているそうです。

フジ(胡蝶レストラン跡地)

在留邦人からの情報によると、胡蝶においては開業当初に日本から呼び寄せた調理人が監禁暴行され日本大使館に助けを求めた事件の他、コロナ禍でシェムリアップの関係者から派遣された日本人調理人が、どこで働いているかを友人知人にも口外しないまま、コロナ隔離中に元気に友人と連絡を取った翌日に亡くなったなどといった話も噂されているようです。

胡蝶は以前より前述のような噂がささやかれ、在留邦人はほとんど立ち寄らない店だったと言われています。先日、バンケンコン地区に立ち寄ったついでに胡蝶に隣接する病院の警備員に聞き取りしたところ、「客はほとんどいなかった。1週間に2人か3人しか客は来ていなかったが、デリバリーが非常に盛況だった。テイクアウトじゃないですよ。店の従業員が大量のお弁当を車に乗せて届けに行くのが毎日見受けられました。」「大家さんに6000ドルのデポジットがあるらしいらしいけど、それを捨てて逃げたみたいだよ。あれは閉店ではなくて、夜逃げだ。」「店で働いている日本人は2人いた。」といった話を聞きました。

飲食業関係者によると、胡蝶は特殊詐欺拠点が摘発された翌日に閉店しています。その後に突貫で内装工事を行い、鰻家が10月から2号店を開店するとの情報が飲食業関係者の間で出回っていましたが、在留邦人の間での噂の広まりを受け、9月末に断念した模様です。同様に関係者が元オーナーから買い取った唐揚げ東京なるお店も同様に9月末に閉業した模様です。

胡蝶のオーナーが誰なのか商業省データベースで検索しても、店の名前がなく確認できませんでしたが、胡蝶についてカンボジア政府高官がFacebookで投稿した情報を入手しました。投稿された文章からは2021年9月当時、高官はこの日本人を胡蝶のオーナーと認識し、招待を受けていたことがわかります。また驚くべきことにこの人物は、昨年日本大使館が在留邦人に対して、日本人が加害者となっての金銭的肉体的被害を被る事件に警鐘を鳴らすメール発信が行われた翌日、プノンペンの日本料理店「縁」で会食中だった私やその同席者が、隣席から恫喝されたと感じた人物と、顔が一致します。

準暴力団(半グレ集団)摘発のために

近年、暴力団対策法の数次にわたる改正や、全国各地で制定・改正の動きが続く暴力団排除条例(暴排条例)によって、暴力団が外形的に縮小しています。特殊詐欺などで暗躍するピラミッド構造を持たない準暴力団(半グレ集団)らを取り締まるために、警察庁は本年、実態に合わせてより広い概念の「匿名・流動型犯罪グループ」との定義を新たに行いました。

「闇バイト」や「特殊詐欺」を始めとする多くの犯罪で暗躍し、離合集散を繰り返す「匿名・流動型犯罪グループ」については、組織犯罪対策部門と生活安全部門が協力して取り締まりに当たることとし、都道府県警の規模や地域性に応じて専従の係や班、担当を置いて実態解明を開始しています。ボーダレスの特殊詐欺被害撲滅に向け、大都市を管轄する一部の警察本部にその他の警察本部が捜査を嘱託する体制を構築する模様です。今回の事件についても埼玉県警大宮警察署に8道府県警察合同の捜査本部が設けられています。

ここカンボジアにおいても、反社対策は行われています。日本人学校などを運営し、在留邦人のコミュニティーであるカンボジア日本人会では、既に7年前に反社排除条項を設けていて、健全な日本人コミュニティーを維持すべく、関係諸機関の協力のもと警戒をしています。

カンボジアから不正な人間が一掃される日を、願ってやみません。様々な動向については、引き続きウォッチし、投稿したいと思います。

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