【息ぬき音楽エッセイvol.1】シルヴィ・ヴァルタンと悲しさ by 村松社長
みなさまこんにちは。カロワークスの村松社長です。
わたくしの投稿は4週間ぶりとなりますが、4週間前と比べて皆さんの生活に変化はありましたか?
全国の緊急事態宣言は解除されたものの、まだまだ予断を許さない状況。”with コロナ”という言葉も生まれているなか、この長期戦に備えるには各々の免疫力を高めることが重要だと私は思うわけです。
免疫力…。寝ることや笑うことでも上がりますが、泣くことでも上がるらしいですよ。
というわけで、今回は「悲しさ」についてです。
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vol.0で、幼少期に父セレクトの音楽を聴かされ続けたエピソードをお話ししましたが、父セレクト曲の中でひときわ思い出深い一曲があります。
これまで映画やテレビCMに何度も使われてきた曲なのでご存知の方も多いと思いますが、皆さんはこの曲を聴いてどんな印象を持ちましたか?
(バックダンサーの踊りに目が奪われてしまう方は目をつぶってお聴きください…)
映画やCMでの使われ方を見るとよくわかりますが、”さわやかで、明るくて、リズミカルで楽しい曲”というのが一般的な印象のようです。
邦題も「あなたのとりこ」で、恋の曲ですしね。
でもなぜか幼少期の私(4歳か5歳でした)は、この曲を聴くと「悲しい」という感想以外なにも浮かびませんでした。
同時期の私・泣ける曲ランキング2位「大きなのっぽの古時計」が、おじいちゃんっ子の私に突き刺さる歌詞と涙を誘うメロディーにも関わらず、1位の「あなたのとりこ」には大差で敗北していたほど。
何か悲しいことがあると(両親が喧嘩したとか、おもちゃが壊れたとか)、よくソファの下にもぐってこの曲を歌いながら号泣していたものです。
もちろんフランス語もわからず、恋の切なさも知らない頃だったので、あの感情はメロディーやリズム、声や楽器の音色など「音楽そのもの」から受け取ったとしか考えられません。
この「悲しさ」の正体について、大人になったいま考えられることをまとめようとしましたが、正直なところ自分でも納得できるような答えは見つかりませんでした。
音楽と「悲しさ」については、例えばこんな本が書かれています。
上記の本を参照しつつ、J-POPの切なさ(エモさ)について論じた興味深い論考もあります。
ここに述べられている「サビで最高音に達する=サビを感情の表出のピークとして構成する」という点などで言うと、J-POPの黄金のセオリーが1960年代のフレンチポップにも見出せる、ということなのかもしれません。
しかしながらよくよく思い出してみると、幼少期の私にとっての泣きどころはこの曲の「間奏」だった気がします。
この曲は構成が少し変わっていて、短い前奏のあといきなりサビが始まり、Aメロ(?)を挟んでサビのメロディーをそのまま繰り返す間奏が入ります。
同じメロディーを繰り返すという一般的な手法(リフレイン)の中に、「悲しさ」の正体があるのかもしれない…と考えたときふと、ある一編の詩を思い出しました。
入沢康夫の第1詩集『倖せ それとも不倖せ』(1955年)に入っている「夜」。大学生の頃はじめて読み、理由のわからない悲しさに包まれた詩です。
彼女の住所は四十番の一だつた
所で僕は四十番の二へ出かけていつたのだ
四十番の二には 片輪の猿がすんでいた
チューヴから押し出された絵具 そのままに
まつ黒に光る七つの河にそつて
僕は歩いた 星が降つて
星が降つて 足許で はじけた
所で僕がかかえていたのは
新聞紙につつんだ干物のにしんだつた
干物のにしんだつた にしんだつた
※原文は「にしん」に傍点
「あなたのとりこ」の間奏を聴くときに心を占める感情はなかなか他で経験することがなかったのですが、この詩の3回目の「にしんだつた」には限りなく近いものを感じます。
切なさやエモさとは少し違った、悲しさとしか言いようのない感情。
免疫力、上がったでしょうか…?
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ところで、今回シルヴィ・ヴァルタンの曲を取り上げたのには、免疫力の他にもう一つ理由がありまして。それは先日5月15日に発表された「レナウンの経営破綻」というニュース。
シルヴィ・ヴァルタンさん、実は「あなたのとりこ」リリース前、1965年にレナウンのCMに出演しています。
この曲と映像を知ったのは高校生の頃でしたが、それまで”シルヴィ・ヴァルタン=悲しい曲を歌う人”というイメージしかなかった私には、かなりの衝撃でした…。
ちなみにこの「ワンサカ娘」、作詞・作曲は小林亜星さんです。
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…さて、ここからは前回に引き続き、COVID-19をテーマとした曲をご紹介するおまけです。勝手にシリーズ化しちゃいました。
・Have a Nice Day!「SPRING BREAKS 2020」
まずは浅見北斗率いるHave a Nice Day!(ハバナイ)のニューシングル。4週連続配信の第3弾としてリリースされました。
彼らには珍しくセリフが入った曲で、最後の「罪深いオレたちはきっと生きながらえるさ。どうせなら、見に行ってみようぜ」という言葉はハバナイらしい(ひねくれた)ポジティブさを感じます。
ハバナイについては、いつか本編でも取り上げられればと思っています。
・Sting「Don’t Stand So Close To Me - Dave Audé Remix」
元はStingが在籍していたThe Policeの1980年の曲ですが、「そんな近くに立つなよ」(社長訳)というタイトルがまさに今の状況と重なり、再び注目されています。
ソーシャル・ディスタンス呼びかけのため、StingとプロデューサーのDave Audéが新たに共同制作したリミックス。
引き続きご存知の曲がありましたら教えてくださいね!
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