《写真の保存修復を考えてみた vol.10》~写真の劣化2~ by タケウチリョウコ
今日2月16日の誕生花は「セントポーリア」です。花言葉は「小さな愛」「親しみ深い」だそうです。
育てやすいので、室内園芸の女王とも言われているそうですよ。
こんにちは。タケウチリョウコです。
今回は前回記事の続き「写真の劣化2」の「化学的劣化」である銀鏡に注目します。
**********
銀鏡(ぎんきょう)は英語でSilver Mirroringと呼ばれています。銀塩写真は名前の通り、細かな銀粒子によって画像を形成しています。
そのためスプーンなどの銀製品が錆びてしまうように、写真画像も経年変化により銀粒子が錆びていくのです。
その結果、銀鏡として青味がかった金属的な曇りとして現れる事があります。
fig.1 private collection (left:normally, right:silver mirroring)
【銀鏡の劣化プロセス】
酸化・還元反応によって起きる典型的な症例で、写真画像の高濃度部に見られる青っぽい金属光沢したものが銀鏡である。写真の画像を形成する金属銀は、フィラメント状の形態である。その銀元素が酸化により反応性の銀イオンへと分解され、このイオンは一旦生成するとバインダー層の表面へと移動し、そこで還元性の雰囲気の作用でコロイド銀へと変換され、銀鏡として現れる*1。
*1:『写真画像の安全性と保存』 Klaus B.Hendriks(訳河野純一)日本写真学会誌第52巻 第1号 1989年2月 pp7-9 引用
画像を形成する銀粒子が多く含有されている部分に銀鏡が生じやすいため、鑑賞する角度によって全体の画像が見えにくい状況になっている写真もあります。
fig.2: private collection (upper:normally, lower:silver mirroring)
私の祖父が残してくれた写真たちは昭和初期のものが多くfig.1も2も銀鏡が生じて「このままではいけない!」っという状態になっています。
このキラキラした部分を綿棒でそっと触れてみましたが、銀鏡が取れることはありませんでした。(保存の観点からこのような行為はオススメしません!!個人所有のものなので実験をしてみましたが…。)
このような状態になってしまうと、元の状態(銀鏡が生じる前の状態)に戻すことは出来ません。写真の状態によっては拭き取ることも可能かもしれませんが、画像を形成する銀を拭き取ることと一緒なので、将来的には画像の消失を早めてしまうことになります。
適切な保管をして劣化の進行を遅らせるための処置を行う予定です。
さて、この銀鏡に関する研究は盛んに行われており資料もあります。
**********
次回も「写真の劣化」の続き、化学的劣化である黄変と退色に注目します。
それでは4週間後にまたnoteを見に来て頂けたら嬉しいです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?