復習Tシャツ | 毎週ショートショートnote
「なんで腹かいとーと?」と美羽が言う。
凪と同居して1年。二人は倦怠期だった。
「知らんやん、おまえが怒るけんこっちも嫌な気になる」
凪は美羽を睨みつけた。
「は~?なんその顔、ばりむかつく!」
美羽は自分の部屋にこもった。喧嘩の原因も覚えていない。
ふと壁に貼った小さなシールに気が付いた。
凪と付き合った日、福岡タワーで撮ったプリクラだ。
「好いとーよ」の文字、キラキラした表情、お揃いのTシャツ…
(あの頃はよかったな)
甘酸っぱい気持ちが一気に蘇り、美羽は閃いた。
必死で探して棚の奥からペアのTシャツを拾い上げた。あった…!
美羽は部屋を出て凪に向かい合った。
目の前にTシャツを広げ美羽が言う。
「うちら復習したい!」
「えっ…どういう意味?」
「付き合った頃に戻って二人で福岡タワー登ろ!」
「…」
「いけん…?」
「…ふふっ」
真剣な美羽の顔を見て凪は思わず吹き出した。
「よかよ…さっきはごめんね」
膨らんだ2枚のTシャツが思い出の復習を始めた。
(410文字)
たらはかにさんの企画に参加させて頂いております。