文学トリマー | 毎週ショートショートnote
「ブルータス…お前もか?」カエサルは驚愕した。
古代ローマの執筆を生業とする板野はここで手を止めた。
昨日買った『文学トリマー』を使ってみよう。
削ってほしい文章を声に出して指定すると、
その部分を切り取ってくれるらしい。
これで推敲した文章をアップロードしよう。
板野は文学トリマーの電源を入れた。
…昨晩からインターネットの調子が悪く、
天井裏で2人の作業員がルータ交換を行っている。
アベが上司でサトルが部下らしい。
「アベさんそっち線見えますか?」
「OK、ルータとってくれ!」
アベの声はデカい。その瞬間、文学トリマーが反応した。
<ルータをトリムシマス>
「ブス…お前もか?」カエサルは驚愕した。
文章からルータが取り外されてしまった。
これじゃブスの罵りあいだ。
「あの、少し静かに…」
「サトル!!!」
<サをトリムシマス>
「ブス…お前もか?」カエルは驚愕した。
カエサルが蛙になってしまった。
なんだこの欠陥品!
板野は頭を抱えて机に突っ伏した。
(410文字)
カエルも驚く欠陥品。