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かもしれない弁天 | 毎週ショートショートnote
夕暮れの街を歩いていると、歌声が聞こえてきた。
綺麗なお化粧で弾き語りをする若い少女を見て私は思う。
あれは、弁天さんかもしれない。
楽器持ってるし…
「もしかして、弁天さんですか?」と声をかける。
「正解!私が弁天です!」
少女は弁天だった。
やった。
夜、お寿司屋さんに入ると、
鮮やかに魚をさばく綺麗なお化粧をした板前の女性がいた。
包丁の動きが速すぎて腕が8本に見える。
あれも弁天さんかもしれない。
弁天さんは元々インドから来た神様で、腕が8本あるっていうし…
「弁天さんですか?」
「正解!私も弁天です!」
やった!
その後も複数のテストを乗り越え、私は弁天免許に合格した。
ある夜、お風呂上りに小腹が空いたのでコンビニに行くと、
途中で警察に呼び止められた。
「そこのお嬢さん」
「何ですか?」
「弁天免許証出して」
「どうぞ」
「顔面不注意。2点減点ね」
しまった!
弁天さんは芸能の神様。
人前に出る際は化粧が必須だったんだ…
私はがっくしと肩を落とした。
(410文字)
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