ひと夏の人間離れ | 毎週ショートショートnote
俺さ、エアコンの修理業者なんだ。
電話番・調達・修理、ぜーんぶ1人でやってんの。
一人親方ってやつ。
にしても今年マジで暑いよね。昨日もワンルームに修理行ったの。
親子3人で住んでて唯一のエアコンが壊れたらキツいよな。
俺は脚立に立って修理してたんだけど、修理依頼の電話が止まんない。
右手は工具、左手は電話。忙しすぎて二刀流だよ。
でね、しばらくすると暑さに耐えられず子どもが泣いちゃったの。
さぁ困った。
エアコンは故障、親はあたふた、扇風機もない、俺の両手も塞がってる。
しょうがないからさ、ウチワを自分のケツに挟んで、
一生懸命ケツを振って風を送ってやったのよ。
右手は工具、左手は電話、ケツをフリフリやってたら、
脚立がひっくり返って、視界がぐるりと回った。
「危ない!」
親御さんに叫ばれてさ。そこからはもう必死のパッチだよ。
バク中決めて着地した衝撃でケツからウチワが勢いよく飛び出した。
ひと夏の人間離れだよ。ホントに恥ずかしかったなぁ。
(410文字)
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