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織姫妖怪 | 毎週ショートショートnote
年に1度の逢瀬を前に、感情が昂ぶり眠れなくなる織姫。
彦星に逢う日は毎度大きなクマを目にぶら下げておりました。
「織姫や、会いたかったぞ」
「私もです。この日が待ち遠しすぎて1週間寝ておりませぬ!」
充血した眼とやつれた顔で両手を広げ、
彦星の胸に飛び込む姿はまるで妖怪。
彦星は少し恐怖を感じておりました。
そして今年の七夕の日、織姫はとうとうやってしまいます。
徹夜を続けた結果、当日に深い眠りに落ちてしまったのです。
目が覚めると23時45分。残す時間はあと15分しかありません。
「グォオォォォオ!」
織姫は叫びました。むくむく体が巨大化し、
服が千切れ、太腿から筋肉に包まれた足が新たに4本生えました。
織姫は8本の手足で地面を這いずり、
涎を垂らしながら彦星の元へ駆けつけます。
着いた時間は23時58分。
さぁ彦星の胸へ飛び込まん!
彦星は、そんな織姫の姿を見つけるや否や、
「ヒィィッ!」
と情けない声を上げて、一目散に逃げていったそうです。
(410文字)
織姫の執念。
たらはかにさんの企画に参加させて頂いております。