バンドを組む残像 | 毎週ショートショートnote
部屋で一人で過ごしていると、
「バンド組もうぜ~」と声がした。
恐る恐る声のした方を見ると、
部屋の隅に残像が見えた。
ぎゃあ!
アイツが出た!
一人いたら百人いると言われるアイツ。
すぐに薬局に駆け込み、退治用の道具を探した。
殺バン剤やコンバンドなどの製品が並ぶ中、
私は「くん煙剤」を選んだ。これでアイツを一掃出来る。
帰ると部屋は静まり返っており、
「バンド組もうぜ~」の声も聞こえなくなっていた。
隠れても無駄だ。
私はくん煙剤をセットした。
観念しろ!
煙の噴出を確認し、外へ出て一時間後。
再びドアを開けた瞬間、私は仰天した。
なんとアイツらのライブが始まっており、
最高の盛り上がりを見せていたのだ。
しまった!
このくん煙剤は煙を入場のスモーク演出と勘違いさせてライブを開かせ、成功に味をしめたアイツがメジャーデビューを目指してやがて家から出ていく製品だったのだ。
説明書を読まなかった私が悪い。
自分の選択を後悔し、私は仕方なく手拍子を始めた。
(410文字)
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