「中飯降遺跡」縄文遺跡剥ぎ取りの地下を体験【和歌山かつらぎ町】
和歌山県かつらぎ町には、西日本最大の縄文遺跡「中飯降(なかいぶり)遺跡」が保存されています。
遺跡発見のきっかけは2008年の京奈和自動車道建設。
ちょうど橋脚にあたる予定地から、縄文時代の竪穴式大型建物4棟の遺跡が出土し、大きな話題となりました。
その後、自動車道の橋脚部分の位置を変えることは難しかったため、「中飯降遺跡」の1棟はFRP樹脂(強化プラスティック)で精巧な型どりをする「遺跡の立体剥ぎ取り」の技術を使い、橋脚の間に移設されています。
2024年12月1日、特別公開として移設された保存遺跡の地下を見学できる、ということで、かつらぎ町教育委員会主催の「保存遺跡の裏側を見てみよう!」に参加しました。
保存されている「中飯降遺跡」は一見、普通の土に見えますが、これはFRP樹脂で作られたもの。
最初にシリコン等を使って遺跡そのものの型どりをする際、実際の土そのものを一緒に接着するよう剥ぎ取ることが大切なのだそうです。
何度かの工程を経て、精巧に剥ぎ取られたFRP樹脂製の遺跡は、空洞になった地下の鉄骨によって支えられています。
地下に降りて保存遺跡を見上げると日の光が透けて、星がまたたく夜空のように見えました。
一等星のように光るのは、降雨などで保存遺跡の表面に溜まった水を抜くための穴。
当初の予定にはなかったらしいのですが、水はけのことを考え作ってもらったそうです。
地下の側壁には水分を溜め込まないよう「吸い出し防止剤」が施され、地面には一面に砕石が。
滞りなく水が外に流れ出るように設計されているとのことで、この日も空気はからりと乾いていて、じめじめした感じはまったくありませんでした。
保存遺跡の地下というものはごつごつの無機質なもので、もっとじっとりとした閉塞感のある場所だと私は想像していました。
でも「縁の下」には思いがけずとても美しい空間が広がっていて、本当にびっくりしました。
貴重な体験が出来てありがたかったです。
保存遺跡は水平に剥ぎ取られたものですが、こちらは遺跡の地層を垂直に剥ぎ取った断面だそうです。
いずれ設置する場が決まれば、また公開してゆきたいとのことでした。
この日、詳しい説明をしてくださったのは、発掘に携わったかつらぎ町教育委員会生涯学習課 副主任文化財専門員の和田大作さん。
6月のライター部での「中飯降遺跡」取材時にも大変お世話になりました。
今回もわかりやすく丁寧な解説で、現代の遺跡剥ぎ取り技術について学んだことは大きかったです。
12月7日には、紀州かつらぎ熱中小学校に講師として来てくださいます。
その授業もまた楽しみです。
(ライター部:大北美年)