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霊泉寺温泉。

5/11土曜日の夕方。
山間小集落の古い温泉へ。
源平時代から続く小さな温泉。

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国道254号を通るたびに、「霊泉寺温泉2km」という案内看板に惹かれながらなかなか奥へ向かわなかったのが、この日はすんなりと。

営業している旅館は二軒のみ。

心細くなるような田舎道を抜けると、赤い欄干の橋と共に集落端に辿り着く。
とはいえ、歩く人も見えないし、灯り自体僅かである。

集落自体に新し目の住宅は数軒。

灯りのない元旅館


人のいない元商店


元旅館

既に営業していない元旅館の奥から、家族喧嘩らしい声が聞こえてくる。
良し悪しは別にして、土曜日の夕方に寂しさから発露する苛立ちは解る。
何をどうするにも、「どうしようもない」のだろう。

共同浴場


番頭のいない番台

日帰り入浴は共同浴場のみ可能。
ドアを開けると、むんと鼻を突く汗の匂い。番台隣の下足棚から臭う。
二百円を料金箱へ投じ、形式上の義理を果たす。
脱衣場は大人四人でいっぱいになる広さ。
浴室との境のドアは古くて隙間があり、時計は不正確、扇風機は動いていない。
いいねえ。この場末感。
いや、それは失礼だ。
むしろ、このハードルを意に解さぬ心で心地良い温泉を求めてきた者だけが入ることを許される、天然掛け流し温泉。


静かです。

タイル張りの浴槽に注がれる湯量は豊富!
アメニティがなく配管剥き出しの洗い場もヨシ。

適温の湯船に身体を沈めると、先客が一人、二人と「お先に」と声掛けして脱衣場へ去っていく。図らずも湯船に一人。

手足末端部が温まるのを待つ時間がゆったりと過ぎていく。
すべすべの湯と、窓から入る土曜日の夕暮れの風、BGMの無い空気。
限りなく俗っぽくて、限りなく静謐。

元々きこり達が作業後に立ち寄って汗を流した小さなちいさな温泉だったとは、脱衣場で言葉を交わした地元の老人の話。
風呂上がりに居合わせた県外者・隣町の男性との四人で十分ほど言葉を交わし、一期一会の時間を過ごした。

次は集落奥へ進み、廃墟となっている療養所などを巡ってこよう。

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