一陣の風
ピアノの前に座る。
私は、ショパンのエチュードの第2番イ短調を弾き始めた。
半音階のメロディーに乗って、空の上を気持ちよく駆け回っていた。
どこまでも駆けて、昇って、駆け抜いていこうとしていたその時、急に一陣の風が吹いてきた。
ショパンのエチュードの半音階のメロディーは、真っ逆さまに散らばりながら、バラバラになって、地上に落ちていった。
私も空から落ちてしまって、土手の上に仰向けになって倒れていた。
しばらくの間、そこで、仰向けのままで、高い空を見つめていた。
空は、遠かった。
その時、突然、私の横で、小さく真っ白な花が「どうしたの?大丈夫?」と話しかけてきた。
私は言った。「大丈夫よ。心配しないで。」と。
それから、私はゆっくりと立ち上がって、一歩一歩を踏み外さないように気を付けながら、歩き始めた。
その時、バッハのインヴェンションの第1番ハ長調のメロディーも私と一緒に歩き始めた。
そのメロディーは、滞ることなく、最後の一音まで余すところなく、鳴り続けて、ようやくThe endへと向かっていった。
私の足取りもそこで止まった。
時は静かに経過した。
そこは小さな一室だった。
「カチカチ」と弱く響く、置時計の秒針の刻む音だけの空間だ。
先ほどの一陣の風は、いったい何処に去ったのだろうか。
一陣の風は、果てしない空の奥に大急ぎで帰って行ったのであろうか。
今はもう、風も止んで、辺りは落ち着いている。
そろそろ、バラバラになったショパンの半音階のメロディーも、
無事に戻って来て、元通りの並び方になって欲しいものだ。
私は、もう一度、ピアノの前に座る。
ショパンのエチュードの第2番イ短調を弾き始める。
その半音階のメロディーに乗って、再び、空の上を気持ちよく駆け回って、昇っていこう。
メジャーコードで曲が締めくくられる喜びを期待しながら。
思いついたまま、書いてみました。
どうでしょうか💦
読み返してみると、文章がまとまっていなくて、
田舎臭く見える所も多かったので、悩みました。
少し変えてみたりはしましたが。
🌸最後まで、読んで下さって、どうも有難うございました。m(__)m🌸