働かなくていい社会を作りたい
相川計氏の「働きたくないから生活保護を受けてみた。毎日が豊かになった。」を読んだ。感銘を受けた。こういった生き方があるんだと感じた。私は今大学生だが、働きたくない。もちろん就職活動もしたくない。一生だらだらと暮らしていたい。
そこで私は、社会構造を変革しようと思った。つまり、働きたくない人は働かないで働きたい人だけが働く社会、そんな社会を作りたいと思った。
ではなぜ働きたくないのか
よく大学で就活の説明会などに参加すると、「好きなことを仕事にしましょう」と言われる。そこで自分にとって一番満足度が高いのは何だろうと考えると、寝る時間が一番満足度が高いことに気づいた。では、寝たら稼げる仕事は果たして存在するのだろうか。就職指導課の方にも聞いたが、もちろんそんな仕事が存在するはずもない。
次に満足度が高いことはなんだろうかと考えると、学問に触れる時間である。例えば今、スティーブン・ウォルトの『同盟の起源』やハンナアーレントの『エルサレムのアイヒマン~悪の陳腐さについての報告~」を読んでいる。他にも読みたい本がいっぱいある。しかも増えていく一方だ。仕事をすることでこれらの本を読む時間を奪われたくない。
そして何よりも1日8時間週5日も働きたくない。そんな時間があるなら図書館に入り浸っていたい。そこには一生かかっても読み終わらないだけの本があるからだ。つまり、自分にとって労働とは時間の無駄である。
ベーシックインカムを実現せよ
働かなくていい社会を作るために、ベーシックインカムをを導入することを提案する。ベーシックインカムで全国民に月25万円支給すると仮定する。メリットとしてはまず、生産性の低い人を労働市場から排除できることが挙げられる。詳しくは『ベーシックインカムを福祉以外の理由で支持する人たち』を読んでほしいが、ひろゆきやホリエモンなど高所得者の中にベーシックインカムを支持する人がいる。以下引用する。
上の図をみると、仕事の価値がマイナスな人が働いた場合、5万円の損失が発生すると仮定すると、給料25万円と損失5万円を足した30万円がかかるが、彼らが働かないと損失が発生しないので、給料25万円だけですむ。つまり、ベーシックインカムを導入することで有能な人(ここでは働くことで社会にプラスの便益を与える人のことを言う。学歴やIQなどは関係ない。)だけが働き、無能な人は働かずにご利益に預かる。そのほうが無駄なコストが減り効率的な社会が実現できる。
また、デヴィッド・グレーバー著『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』によると、世の中には、なくてもなんも困らない仕事、さらには逆に無駄になっているのにもかかわらず存在する仕事がある。ちなみにイギリスのYouGovによる世論調査では、労働者の37%の人々が世の中に貢献していないと回答し、オランダの調査では40%の人が世の中に貢献していないと回答した。
ではなぜ、そのような仕事が存在するのだろうか。雇用を維持するためである。つまり、機械の導入などで効率化できるのにあえてそれをしないのは、失業者を発生させないためである。雇用を維持するために、無駄な仕事が作られ、さらにはイノベーションを阻害する要因になりうる。ベーシックインカムを導入することで、労働人口を減らすことができる。そして、非効率的な仕事の削減やイノベーションにつながる。
ベーシックインカムには他にも様々なメリットがある。まず、少子化の解消につながる可能性がある。ベーシックインカムで全国民に月20万円支給すると仮定する。Aさん一人だと月20万円もらえるがBさんと結婚すると月40万円、C君を生むと月60万円、D君を生むと月80万円というようにこどもを産めば生むほど所得が増える。つまりこどもを作るインセンティブが生まれる。
ここで一つ疑問が生まれる。「そんなにもらったら人は働かなくなるのではないか?」と。それにはこう回答しよう。ではなぜ、イーロンマスクは働いているのだろうか?彼には働かなくても一生暮らせるだけの資産があるのに。他にもトランプ前大統領はなぜ大統領職を務めたのだろうか。彼も不動産収入で働かなくても暮らせるというのに。また、トランプ前大統領は、大統領の給料として1ドルしか受け取らなかった。世の中には、彼らのように働くことを生きがいだと思っている人がいる。彼らのように働くことに意義を見出している人は働けばよい。もちろん働けば働いた分だけ(税金が引かれるが)所得は増える。
生活保護でいいじゃないかとの声もある。生活保護だと申請に手間がかかり、また受給できない可能性があるが、ベーシックインカムは日本国民全員に一律同じ額を給付する制度である。誰でももらえるため、生活保護と違い給付に埋もれることはない。また、年金や生活保護などを廃止しベーシックインカムに一元化することで行政側も手間を省けるメリットがある。
ベーシックインカムと行動遺伝学
ベーシックインカムを導入することで格差が広がるとの批判がある。確かに働く人と働かない人の間で格差は広がるだろう。しかし、それが問題だとは思はない。すこし話はそれるが、最近「親ガチャ」という言葉が流行っている。生まれる環境によって人生が決まってしまうというあきらめ言葉である。心理学の一分野に「行動遺伝学」があるが、親ガチャ概念は行動遺伝学的に正しい。行動遺伝学とは、遺伝子がひとの生活にどう影響するのか研究する学問である。
慶応大学教授安藤寿康氏によると親ガチャは遺伝ガチャなのであって、親が子に提供できる環境ガチャの影響は限定的である。例えば、知能の7割が遺伝で、2割が環境、1割が努力で決定される。こどもは遺伝子を選ぶことはできないし環境も選ぶことはできない。例えば、金持ちの家に生まれるのか生活保護を受けている家に生まれるのか選べないし、日本に生まれるのかウクライナに生まれるのか選べない。もし自分がウクライナで生まれていたらまともに学ぶことはできないだろう。つまり9割が自分ではどうしようもない要因で決定されてしまう。
もちろん知能だけじゃない。運動神経、芸術的才能から性格までありとあらゆることが(もちろんそれぞれの影響度は違うが)遺伝の影響を受ける。生まれてくるときにどの分野に才能があるのか決定されてしまう。さらに不平等なことにある人は知能、スポーツ、芸術的才能すべてに素質を持って生まれても、他の人にはこれらの才能が全くないこともあり不平等である。マイケル・サンデル教授の言うように「実力も運のうち」なのである。
人は生まれる国や時代・どの家に生まれるのかを選ぶことはできない。そして生まれた環境によってその先の人生が決まってしまう。この問題は残念ながら解決できない。そして格差が生まれることはしょうがない。なぜなら遺伝的な差があるからだ。しかし、ベーシックインカムを導入することで誰もが生活できる社会を作ることができる。遺伝的才能に恵まれた人は働けばよく、遺伝的才能に恵まれなかった人は働かなくてよい。
私は働きたくない
私は働きたくない。なぜなら、働くことで寝る時間や読書をする時間が奪われたくないからだ。「ほしいものがあるから働く」という人がいるが、生きていくために必要な衣食住意外だとamazonくらいしかほしいものがない(本は図書館に行けばよい)。ほしいものがある人は働けばよい。働くことに意義を見出している人は働けばよい。そして働くことで社会に貢献できる人、働く才能がある人が働けばよい。私みたいに働くことに意義を見出していない人や働くことで迷惑をかける人が職場に来ても迷惑だろう。働きたい人だけが働き、働きたくない人は働かずに御利益に預かる。そんな社会を実現したい。