保健師さん登場

マチの保健師さんが我が家に来ることになった。
高齢者二人の暮らしぶりを見にきてくれるのだ。
「ありのままの姿見せるのよ」と見守る娘の私。
しかし、澄子の大掃除は始まった。
さらに、喜朗にもいつもより小洒落た服に着替えさせられている。
保健師さんがいらした。
愛猫ゴンちゃんは早くも正座している彼女の太ももにくっついて離れない。
「猫、嫌じゃないですか?」と一応聞いてみる私。
「はい」と笑顔で答える保健師さん。
そりゃそうだろう。
こんなにめんこい猫にピトッとくっつかれてイヤな気がする訳がない。
間もなく喜朗のアレが始まった。
初対面の人に個人情報を質問攻め。
出身地、出身校などを聞き出している。
私は昔からこれが大嫌い。
しかし、喜朗に悪気はないのだ。
共通の話題を見つけて、会話を楽しみたいだけ。
そして健康状態、通院状況などを聞かれ、軽い認知テストも終わった。
喜朗がもじもじし始める。
飽きているのだ。
早く自室で時代劇の続きを観たいのだ。
しかし保健師さんの質問は終わらない。
ついに金槌を持ってきて、戸棚を直し始めた喜朗。
何故今?
帰ってくれアピールか。
普段は頼んでもやらないくせに。
いよいよ保健師さんが立ち上がって帰り支度をした。
「あんた、何歳だって?」
私は心の中で悲鳴を上げた。
こんなこと、今時のお仕事女子に聞くなんて!!
「29歳です」
にこやかに答えてくれた。
「そりゃあ、そろそろ結婚した方がいいよ。職場にもいい人いるだろう。」
やめてくれー!
心で叫ぶ私。
動揺しすぎて彼女の反応すら覚えていない。
さらに喜郎は
「早く結婚しないと、こんな風になっちゃうよ」
と私を指さした。
澄子は
「あらあら…これは、何ハラスメントになるの?うふふ」
とか言っている。
二人の女性にハラスメントをしてることをわかっているのか、この夫婦。
私の機嫌はまだ治らないが、保健師さんの初訪問はとりあえず終わった。


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