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【使うか、使わぬべきか。それが問題だ】ビットコインが人間にもたらしたものに”迷いと後悔”以外の何があるのか?
暗号資産の歴史はそう長いものでは無いですが、その急激な変動に人々は一喜一憂、振り回されています。その短い歴史はチャンスを逃した人々の嘆きで満ちているわけですが、それは一般市民だけでなく財務大臣も変わらないようです。イギリスのRachel Reeves財務大臣の迷いについての話です。
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◎”Grab a Slice”(一切れ頂く)
Newport出身のコンピューター技術者、James Howells氏 は地方議会に自らがかつて捨てたハードディスクドライブを埋め立て地から採掘するという申し立てをしました。実に変わった申し立てですが、彼がそこまでしてそのハードディスクドライブに執着するのにはある大きな理由がありました。
それは昨今価格が急騰している暗号資産。Howells氏が20代の頃に誤って捨ててしまったそのハードドライブには、なんと現在の価値で5億ポンドになるビットコインのパスワードが保管されているというのです。Howells氏も必死です。採掘を許可してくれたら地方議会にいくらか分け前として支払うという提案までして食いさがりましたが、遂に議会は首を縦に振る事はありませんでした。20代の失敗を悔やむという事はままある事なわけですが、Howells氏の後悔は特大のものとなってしまいました。
噂では財務大臣のRachell Reeves女史もこれまで国が犯罪者から接収したビットコインをかき集め、値踏み(①stare one’s own gift horse in mouth)をしているといいます。過去の犯罪者を逮捕する際に差し押さえたビットコインは50億ポンド相当となり、資金不足にあえぐ財務省にとっては”経済の無料牢獄脱出カード(②get-out-ofjail-free card)"になりうる金額です。Reeves女史が市場が下り調子になる前に売り抜けたいと思っていても何ら不思議はありません。
価格の変動が大きい暗号通貨にはこの手の話が数多く存在します。あの時ピザ2枚に払った暗号通貨は今だったらどれくらいの価値になるのか。あるいは娘の二段ベッドを買うのに使ってしまったあの暗号通貨が今残っていれば。この手の逃してしまった機会を嘆く話には枚挙にいとまがありません。
Reeves女史にも同じことが言えるかもしれません。2025年の今、ビットコインを売り抜けてインフラ整備に使ったとして、そのビットコインが更に急騰すれば将来更に高価なものとなる可能性もないとは言えません。そうなれば後世の人々から5000億ポンドになる可能性ものあったものを使ってしまった間抜けとして評価されてしまうでしょう。ただ、暗号通貨の流動性は悪名高いものであり、良くも悪くも転ぶ(③work both ways)性質のものです。いっそ換金して一抜けしまうのもありでしょうし、そうでないならバカでかいペパロニピザの支払いに使ってしまうというのもありますね。
□本日のポイント■■■
①stare one’s own gift horse in mouth/値踏みをする
"don’t look a gift horse in the mouth"という言い回しが元になっていますね。gift horseは文字通り贈り物として贈られた馬。口の中を覗き込むというのは馬の健康状態を確かめる為に行われる行為です。
普通もらったものを値踏みするような行動は非礼となるので、そういう事をしない良いという意味です。そこから値踏みする、過剰に分析するという言い方になっています。
🔳 Now we learn that Rachel Reeves, the cashstrapped chancellor, is staring her own gift horse in the mouth.
(試訳)どうやらお金に困った財務大臣のRachel Reeves女史が、自らの手にある”贈り物”の値踏みをしているらしい。
②get-out-ofjail-free card/無料牢獄脱出カード
monopolyってボードゲームやった事ありますか?やって事ある人はピンとくるかもしれませんが、はずれのマス(GO TO JAIL)にとまると刑務所に叩き込まれます。そこにいる限りサラリーを得る事ができなくなるので、何とか50ドルを払って出してもらうという事をしなければなりません。
そんなルールの中でお金の支払いなく刑務所から釈放されるという抜け穴(loophole)のようなラッキーカードがこれです。
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何の代償もなく窮地を脱出できる(dodging trouble without a scratchという意味で使われていますね。
🔳 As borrowing costs rise and cuts to public spending loom, this stash could be — in the words of one bitcoin expert — an “economic get-out-ofjail-free card”.
(試訳)国債の借入コストが重くなり、支出削減が間近に迫る中でこの隠し財産は”経済の無料牢獄脱出カード”になりうるとビットコインの専門家は語る。
③work both ways/良くも悪くもなる
positiveな方向にも、negativeな方向にもどちらにも働くという意味ですね。
暗号通貨の場合は値上がりと値下がりどちらにも転ぶという感じですね。
に言語には良し悪しという言い方や、両刃の剣という言い方がありますね。
🔳 But the notorious volatility of this market works both ways.
(試訳)しかし、この市場の流動性は悪名高いものであり値上がりする場合もあればその逆もまた然り。
◇一言コメント
イギリスには犯罪者を逮捕した場合、その財産を国が没収する事が法律で定められています。これはProceeds of Crime Act 2002, POCA(犯罪収益法)という名前の法律で、国庫に少なからぬ貢献をしています。
得られたお金は被害者がいればその支援に使用されますが、そうした用途がない場合は遠慮なく国が懐に入れる事となります。
Reeves女史は正々堂々と犯罪者が溜め込んだ暗号資産を没収できるというわけです。