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ヘッドフォンを外し街に出よう?ノイズキャンセリングは程々に!
騒音に悩まされる現代人にとってノイズキャンセリング機能付きのヘッドフォンは救世主のようなもの、ここ数年であっという間に普及しました。しかし、この文明の進歩によって人々の生活は平穏なものとなったのでしょうか。文明の利器の盲点についての話をお届けします。
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◎”Sounds Fmiliar”(聞き覚えがある)
”雑音とは邪魔の中でもっとも不躾な(①impertinent)類のものだ。思考が中断するだけでなく、バラバラになってしまうからだ”
こうぼやいたのは20世紀を代表する哲学者、ショーペンハウエルでした。
雑音を遮って仕事に集中したり心穏やかに過ごしたいと願うのはZ世代の若者もドイツの哲学者もかわりません。
そんな雑音の問題を解決した21世紀のテクノロジー、”ノイズキャンセリング機能”でした。音を遮るのではなく、雑音を打ち消す音を発する事で静寂を保つという逆転の発想です。その効果に老いも若きも雑音から逃れんとこの世紀の発明に手を伸ばしました(そして結構なお金を払いました)。
ところが、そうやって手に入れや静寂と平穏の日々も良いことばかりではないようです。若い世代を中心に音の聞こえ方に問題があると病院に行く人が急増しているそうです。しかも、不思議なことにその受診達がいざ検査を受けると全く問題がない(②clean bill of health)と診断されてしまうのだとか。これらのケースを分析した専門家は問題は患者の耳ではなく脳にあるとの報告をしています。若い世代は早期から自分が聴きたい音以外を遮断する事になれるあまり、脳が本来備えている騒音をフィルターする機能がうまく働かないというのです。
また、ノイズキャンセリングで遮断してしまう音が全て悪いものでもありません。漏れ聞こえる恋人たちの喧嘩(③tiff)、ラジオから道端に響く音楽、子どもたちの笑い声など、これらの音は確かに聞こうとして聞く音ではありませんが、存外気持ちを明るくしてくれるものです。
雑音も含め人生なのかもしれませんね。そして、そんな心理に300年以上前に気がついていたのは英国人が大好きなシェイクスピアです。
”耳を塞ぐ事なかれ。路上は騒音やら美しい旋律やらで溢れている。その心踊る事よ。何の苦痛だろうか。”だそうです。
□本日のポイント■■■
①impertinent/不躾な
礼節と相手への敬意を欠く様子がimpertinent。入っちゃいけない所にはいったり、言ってはいけない事を言うという事ですね。
Chat GPTに英国人は誰かをimpertinentだと感じた場合には、どんな言葉を使いますか?と聞いてみました。色々出てきますね。
"Cheeky sod!" – 悪ふざけに対して一言
"You've got a bloody nerve!" –一線を超えてくるやつにぴしゃりと
"Who do you think you are?" – 丁寧な言葉に滲む怒り
自分の立場を弁え、上の言葉を投げられぬようにしないとですね。
🔳“Noise is the most **impertinent **of all interruptions, for it not only interrupts our own thoughts but disperses them.”
(試訳)雑音は邪魔なものの中で最も不躾なものだ。なぜならば我々の思考を中断するのみならずバラバラにしてしまうからだ。
②clean bill of health/全く問題ない
船が旅先の港に入港する際に乗組員達が伝染病に感染していない事を港に報告するための書式がbill of healthです。それがcleanという事は全く問題ないですよという報告なわけですね。
ちなみにbill of healthは入港前何時間と提出期限が定められている提出書類の一つで不備、不一致、懸念があると船上検査となります。
🔳 This week the NHS reported a curious phenomenon: young people who report hearing issues to their GPs, and then receive a clean bill of health when tested.
(試訳)今週のNHSが興味深い現象を報告している。それは医者に聞こえ方の問題があったと相談する若者達がいざ検査をうけてみると結果何も問題ないと診断されてしまうというものだ。
③tiff/喧嘩
争いというには小さい、ちょっとした喧嘩の事です。clashやbeefというほどでもない小さなものをtiffというそうで、主に恋人や夫婦の間でのものを指します。
街を歩いているとカップル達のちょっとした口喧嘩が耳に入ってくる事は確かにありますが、まあ微笑ましいという事ですかね。
A tiff today, a laugh tomorrow(今日の口論は明日の笑い話)という言葉もあり、争いというよりかはコミュニケーションという程度のものでしょう。
🔳 Not for the first time, the young’s desire to painstakingly curate and control all aspects of life is denying them small, unexpected pleasures: the lover’s tiff overheard, music from a tradesman’s radio drifting into a suburban street, the laughter of children.
(試訳)何も今始まった事じゃないが、若者達はあれこれ手を尽くして人生のあらゆる側面を思い通りにしようとするうちに小さな、予期せぬ喜びを逃してしまうのだ。漏れ聞こえてくる恋人達の喧嘩、郊外の通りに流れてくる職人向ラジオ(Fix radio)の音楽、子ども達の笑い声などだ。
◇一言コメント
予期せぬ喜びをもたらすものの例として”tradesman's radio”が出てきました。これは英国の様々な職人(tradespeople)をターゲットにしたラジオ曲Fix Radioの事を指しています。
Louis Timpanyが主に建設業界の職人達が作業をしながら聞く事を想定して設立したチャンネルで、ターゲットを意識しどこよりも詳しい天気予報や最新の工具や消耗品などの情報と一緒に音楽を届けるというコンセプトで多くの職人達の支持を得ています。
そんなFixradioをどこかの職人がかけているのが通りに聞こえてきていて、、という感じの情景を好ましいものとして描いているわけですね。
ちなみtradespeopleは建設業界の職人だけでなく、工場の中で機械加工をする人や調理関係もカバーする言葉です。英国では寿司職人などもSushi Itamaeとしてtradespeopleに分類されます(ラジオは聞かないでしょうが)。