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子どもたちをスマフォから守る!諦めない教員達の戦い

スマフォが子供の成長や生活に良くない影響を持つことは火を見るよりも明らかな事実です。しかし、それを禁止する事に対しては諦めムードなのは日本も英国も同じ様です。しかし、そんな状況を打開すべく立ち上がった教員達のお話です。

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◎”Smart Move”(賢い行動)

スマフォと子どもたちの関係を振り返るとスイートスポットは1990年代後半だったとされています。エリートビジネスパーソンの持ち物だったスマフォが普及し、子供と親の連絡手段として定着したあたりです。安全、安心という観点からはかつてない進歩であったはずです。

しかし、25年の年月を経てスマフォは進化し”物言わぬ”便利な道具から、外の世界への入り口に姿を変えました。その結果として子どもたちはソーシャルメディアや恣意的な世界観を植え付ける動画サイトに引き込まれ、精神的な苦痛に苛まれる日々を過ごしています。当時から世紀末タイムトラベラー(①A fin de siècle time traveller)の様に現代の状況を覗いた人がいたとすれば、その進化と子どもたちの力のない表情に驚く事は間違いありません。

物知り顔な有識者はスマフォを禁止するのは不可能だ、スマフォというジーニーをボトルに戻す事はできないなどと論じるのかもしれません。しかし、それは”諦めのアドバイス(②a counsel of despair)”に他なりません。私たちはこれまでたばこのように一度は許容されていた害悪を改めて禁止し抑制してきました。スマフォについても同じ事ができるはずです。

StAlbans校の校長を始め教員たちはこうした諦めのアドバイスを受け入れるつもりはありません。スマフォが子供たちにもたらす精神的な苦痛を押し戻す(③stem the tide of)べく親達に14歳までは子供にスマフォを持たせないように説得する活動を続けています。電話代を払いスマフォを子供に与えているのは親なわけですから、彼らにはそれを禁止する力がないはずはありません。諦めない教員達の活動は続きます。

□本日のポイント■■■

①A fin de siècle time traveller/世紀末トラベラー

fin de siècleはフランス語で世紀末を意味しますが、ここの世紀は特に19世紀を指します。この時期はHGウェルズが代表作”タイムマシーン”を発表した時期で時空を超えて未来を垣間見るというサイエンスフィクションが物議を醸しました。原作では19世紀末から恐ろしい未来を垣間見るわけですが、ここではスマフォが便利な道具にすぎなかった時代の人が現在の様子を垣間見たとすればHGウェルズの作品ばりにドン引きするだろうという感じですね。

🔳 A fin de siècle time traveller catapulted a quarter of a century into the future would be shocked by the effects of smartphones, not least the glazed expressions of children using them.

(試訳)世紀末タイムトラベラーが25年先の未来に旅をしたとすれば、スマフォの影響に驚く事だろう。それを使う子供達のぼんやりとした表情は特に衝撃的だろう。

②a counsel of despair/諦めのアドバイス

絶望の助言という意味の言葉です。無理だよ、諦めようよというアドバイスの事ですね。
英国の歴史は幾度となく、このcounsel of despairを覆す事で築かれてきました。代表的な例は第二次世界大戦中のダンケルク撤退戦です。80万の軍勢と最強の機甲部隊を擁するドイツ軍に包囲され窮地に陥った英仏軍40万名を救出する史上最大の撤退戦です。まさに絶望の助言に満ちた状況の中諦める事なく指揮を取ったのは首相になったばかりのウィンストンチャーチルでした。民間の船にまで動員を嘆願しイギリスが一丸となって挑んだ結果、兵の大半を本国に帰還させる事に成功しました。こうして維持した兵力が後の逆転攻勢につながっていきます。スマフォも規制を諦めてはいけないという事ですね。

ちなみにgenieはアラブ諸国で語り継がれる精霊で人の願いをかなえる力をもつすごいやつです。伝説的なイスラエルの王、ソロモンから瓶詰にされていました。それを願い叶えて欲しさに後世の愚か者が解き放ち、手をつけられなくなるという所から生まれた言い回しです。

🔳 Critics may argue that it is impossible, that the smartphone genie cannot be put back in the bottle. This is a counsel of despair.A society can indeed row back on harmful behaviour, delegitimising that which was once acceptable, like smoking.

(試訳)反対派は不可能だと言い、スマフォのジーニーはボトルに戻すのは不可能だと言うだろう。これは絶望の助言に他ならない。事実はこうだ。社会には有害な行為を抑え込む力がある。例えば喫煙のように、一度は許可した行為であっても改めて禁止する事はできるのだ。

③stem the tide of/押し戻す

圧倒的な力を持って進んでいくものや状況を食い止めて押し戻すという意味の言い回しです。そういう状況がtide(波)で、stemは船の船首をその波に向けて進んでいくという事で押し戻す、抵抗して進むという感じです。breast the tide、buffet the waves、stem the floodなど同様に勇ましく航海を進める系の言い回しは多いですね。

🔳Now, head teachers in St Albans are attempting to stem the tide of mental distress engulfing junior school pupils and younger teenagers by persuading their parents to ban smartphones until the age of 14.

(試訳)St Albansの校長は中学生や10代の若者を蝕む精神的苦痛をくいとめるべく親達にスマフォを14歳まで禁止するように説得しようとしている。

◇一言コメント

子育てをしている身からすると頭が痛い問題です。序文に記載しているように何かあったら子供とすぐに連絡が取れる、位置が把握できるというのは大きな安心につながります。特に送り迎えが必須な田舎に住んでいると連携のために必需品とさえ言えます。

しかし、その悪影響は疑う余地はありません。果たして何が”smart move”(賢い行動)なのかを真剣に考えると、やはり禁止か用途の制限ではないかと思います。このあたりの悩みは日英同じなのですね。

それにしても英国人はHGウェルズが好きですね。100年以上前の人ですが、見事に現在の世界が抱える問題を予見している鋭さがあります。未来を予見する古典なわけですね。なんか暗いのでいまいち一冊読んでみようという気にはなりませんが。

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