バスとイノシシと砂場
不登校だった彼が2歳の頃、
当時広島に住んでいて、家から歩いて5分くらいのところにバス車庫があった。
そこまで毎日2人で歩いて、たくさんのバスを見るのが日課だった。
ある日、バスの運転手さんが、「運転席に乗せてあげよう」と言ってくれたが、彼は固辞した。
動物園に行った。
帰ってきて彼の発した言葉は
「イノシシ、おったー」。
象もキリンもいたのだが、彼は地味に地面に寝転んでいたイノシシが気に入ったらしかった。
他の子どもがいるときは公園に入らなかった。
誰もいない公園に行くと、砂場で1人でひたすら遊んだ。
黙々と砂を掘っていた。
バスとイノシシと砂場。
何がおもしろいのか、何が楽しいのかよくわからないが、
彼にとっては大変に惹きつけられるものたちだったようだ。
私はそんな彼を見ていて楽しかった。
毎日が不思議な発見だった。
子どもらしい、とか可愛いとかいう、一般の基準とはかけ離れていた気がするが。
おもしろい子どもだった。
今は大人になってしまったが、おもしろかった小さな彼が、彼の奥の方にひそんでいる。
おもしろい大人になったと思う。
2018年 06月 12日