4年ぶりの夏中さん

コロナ禍でしばらく開催されていなかった長浜の夏の風物詩「夏中さん」が4年ぶりに復活。例年は大通寺の夏中法要に合わせて開かれるのですが、今年は法要は7月2日~5日、縁日は6日~9日と完全分離で夏中さんというか夏中後さんという珍しい事態に。
 
大通寺の夏中法要はいつも赤い目立つポスターがあちこちに貼られますので、勘違いしてこの日程に合わせて浴衣姿で勇んで駐車場から大手門通りに向かっていった4人の親子連れが、屋台のないひっそりとしたアーケードを見て首を捻りながら残念そうに帰って行く姿を今年も見かけました。
 
それにしても、久しぶりだったせいか今年の夏中さんは大変な人出。おそらく観光客ではない地元の人がまちなかに最も集まるイベント。しかもいつもは商店街をすっかり見捨てている若者たちが、うようよと押し寄せる不思議な空間。駅前のコンビニは彼ら彼女らの臨時の駐輪場と化したように夥しい数の自転車が並んでいました。
 
さて、露店が並ぶだけの夏中さんにこれだけの市民が集まるのは何故か?そこには「物語がある」からではないかとおっしゃった方がありました。そこには親、子、孫と世代に共通の思い出が込められており、自分のアイデンティティを確認できる空間があるのではないか、と。
 
私自身は、自分のアイデンティティはそんなところで確認できるはずもない、とその時は聞き流し、その後も夏中さんの喧騒は敬遠しがちでした。しかし今年久しぶりに独り端から端まで歩いて見ると、どぎつい原色と照明に視覚を、若者と子供の歓声に聴覚を、そして屋台独特の様々な匂いの連続攻撃に嗅覚を攪乱され、五感のカオスによる非日常体験とも言うべき「夏中遊泳」を図らずも満喫してしまったのでした。

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