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のほほん双六 #132 おはなし ブゥ家の三兄弟 12

第12話「妖精の村」

妖精の道を使ったらあっという間に妖精の村に着いてさ。
そうそう、なんでブゥブブがオオカミに襲われているのを知って助けに行けたかというと…

『心配なら様子を見てみましょ。』
妖精が懐から袋を取り出した。そばにあった皿に水を注ぎ袋の中身をパラパラと入れ、呪文を唱える。
「あっ!」
水の表面にオオカミに追われているブゥブブが映った。

その先からの記憶が曖昧でさ、突き飛ばされて気がつけばブゥブブがいた場所だったわけ。

「喉が渇いた…。」
「ああ、ごめんよ。」
手に持っていたコップをブゥブブに渡す。
「何これ、甘くて不思議な味がする。」
「怪我によく効くんだって。横になる?」
ブゥブブに手を貸す。
「少し眠ろうかと…。」
「うん。そのあいだ妖精の村がどんなところか見てくるよ、あとで教えるね。」
ブゥブブの寝息が聞こえてきた。
僕はそっと部屋を出る。古びた感じだけど大事に手入れされているし、日当たりが良く居心地はいい。けれど外へ出るとその気持ちも萎んでしまう。天気は良いのになんだか空気が重い。

妖精の村に着いた時、
「すっかり荒れちゃったねぇ。」
石の中からうららかな日和のようなヒトがつぶやいた。

『【災い】が泉を占領しているからじゃ。』
声がした方を見るとだいぶ歳を召した妖精たちが数人、僕らを出迎えてくれた。

『遠路はるばるようこそ我らが村へ。大したおもてなしはできんが、まずは疲れを癒していただきたい。』
ブゥブブを家の中へ入れるよう指示をする。

「お世話になります。」
挨拶が済むと出迎えてくれた妖精たちが石を抱えているツキカゲの周りを取り囲んだ。

『呪いが解けてなんと心強い!』
『長生きした甲斐があったというもの!!』
『これで我ら妖精も安泰じゃ!』
老齢の妖精たちにぎゅうぎゅうと押され、ツキカゲはオロオロしている。

『こらこら、そんないっぺんに喋らないでおくれ。またこうしてみんなに会えて嬉しいよ。』
それを聞いた老齢の妖精たちは感激して泣き出してしまった。
え?ツキカゲの奴、もらい泣きしてるの?

昨晩のことを思い出しながら歩いていると、老齢の妖精たちがツキカゲの毛を…って、え?毛を抜いている?!

『オオカミの毛は魔除けになるからの。』
『めったに手に入らないからこれは幸い。』
「ちょっとっ、やめなさいよ!!取りすぎよ!!」
ヨツユが妖精たちの周りを飛んで怒っている。
見れば身体のあちこちにハゲができていた。

「ハハッいい気味だ。」
ツキカゲと目があったけど無視してそのまま先へ行くことにした。

草むらの奥から僕のことを呼ぶ声がした。
声がする方へ行ってみると、うららかな日和のようなヒトが封印されていた石がそこにあった。
石の中にいる方が落ち着くし、身体の回復も兼ねてしばらく石の中で過ごすって言ってたっけ。

『ブゥブブくんの調子はどう?』
「眠っています。昨晩よりも顔色が良くなりました。」
『それは良い兆候だ!ところで…君とツキカゲくんはいつ仲直りするんだい?』
「仲直り?ブゥブブをあんな目に合わせた奴と?」
『腹が立つのはわかるよ、けれどみんなで協力しないと【災い】には太刀打ちできない。』

「…けどブゥブブはここに残るし、満月の日に僕ら三兄弟がそろわなければ【災い】はまた消滅するのでしょ?ブゥブブを助けるために泉に僕ひとりでだって行くけれど、ツキカゲと一緒はイヤです。」

言うだけ言って僕はまだ何か言おうとしているうららかな日和のようなヒトから離れた。
ツキカゲを誘ったのは僕で、ただでさえ後ろめたいって思っているのに仲直りだって?

「あっ…。」
たどり着いたところは丘の上だった。
イライラして、山道を上へ上と歩いていることに気が付かなかったみたい。
そこにツキカゲとヨツユ、妖精の姿があった。ツキカゲは怖い顔をして、ある一点を見つめている。

『呼ぶ手間が省けた。』
妖精がこっちに来てと手招きする。
『ここから【災い】が言い残した“泉”が見えるのよ。』

「グルルルルッ」
ツキカゲが怒りで唸っている。

妖精が指差すその先にー。

天にも届きそうなほどの大きな木がそびえ立っていた。そしてふもとには陽が当たってキラキラと輝く泉と…

「ブゥブ!」
泉でブゥブと小さなオオカミの子供と、あれはタヌキ?がのんきに釣りをしている姿が見えた。 ーつづくー

『心配しないで』(挿絵)

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