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のほほん双六 #056 おはなし ブゥ家の三兄弟 09

一話から八話までのあらすじ

穏やかに暮らしていたブゥ家の三兄弟。
ある日【災い】という魔物に襲われたところを5人の妖精に助けられ、自分たちが【災い】が不老不死になるために必要なシルシをもっていることを知らされる。

【災い】から逃れるため安全な場所、妖精の村へ行く事に決めた三兄弟は旅の途中で魔女に肉を食べることができない呪いをかけられたオオカミのツキカゲと連れの藍色の鳥ヨツユと出会う。
彼らは願いを叶えてくれる【幸い】のことを老フクロウから聞き、手がかりを追って三兄弟のあとをついて来ていた。

ブゥ家の末っ子ブゥブブブがオオカミといっしょに旅をしようと言いだし、兄弟同士でモメていると、どこからともなく現れた老フクロウが【災い】へと変貌し、ブゥ家の兄弟は2回目の襲撃を受ける。

【災い】は『泉で待っている』と言い残しブゥブを連れ去ってしまった。

オオカミのツキカゲがブゥブブを連れて行方知らずに。

残されたブゥブブブは妖精たちの師匠で大事な力を魔女に盗られた、うららかな日和のようなヒトと出会う。

第九話  窮地

オオカミを信用なんてしてはいけなかったんだ…。
あ、ブゥブブブ!弟はどうしたろう?無事ならばいいのだけれど。
また泣きそうになったけど、泣いている暇なんてない。起こってしまった事はしょうがない、それならばなんとかしてこの縄をほどいてオオカミ…ツキカゲから離れないと。奴は見当たらないし、逃げるなら今がチャンス…

「!」
この感覚。まさか…
『どうしたの?寒いの?』急に僕が震えだしたので妖精が心配そうに聞いてきた。
「そうではなくてー。」
遠吠えが森中に響き渡る。
『え?なに?』妖精が僕の頭のほうへよじ登り、遠吠えが聞こえたほうを眺める。

ぶつかる音とツキカゲの叫び声。
そして…
「あのブタをよこせ!オレたちの今夜の食事にするんだ!」
ひーっ!恐怖が駆け上がる。

美味しく食べちゃうよー

バキキッ
後ろで木の幹が折れる音がし、グラリと傾く。
『あっ、じっとしていないと落っこちそうだ。』
妖精め、呑気にもほどがある。じっとなんてできっこない、はやく逃げるか隠れるかしないと。でもここで動き出すのは危険かも。ならば今はこのまま…

「妖精ならば魔法を使って折れそうな木を元に戻すことくらい出来るでしょ。」
それを聞いた妖精は目を丸くして驚いている。
「?さあ!落っこちるま…」
さっきよりも大きな音で遠吠えが響き渡ったので妖精の声がよく聞き取れなかったけど、まさか『ごめんなさい』って言った?

バキッ
木は折れ、僕は地上へ向かって落下していった…

『わぁぁぁぁっ』
妖精の叫ぶ声、地上スレスレで一瞬止まってー。

ドスンッ
痛たた…減速はしたけど落ちた事に変わりはない…起き上がりたくてもこう縛られていたら身動きなんて取れやしない。妖精はメソメソして謝ってばかりいる。
「起き上がるの手伝って…」
『あっ…』

見上げると傷だらけのツキカゲが立っていた。
効果がないとわかっていても睨まずにはいられない。
「ごめんよ、気が動転していて道を間違えた。」
そう言って僕を担ぎ上げる。
妖精は、ツキカゲの肩に乗って涙を拭いている。
「苦しいかもしれないけど我慢して。」

ものすごい速さでツキカゲは走り出した。
眼の端に2匹の倒れているオオカミが見えた。
「気絶しているだけ。彼らが目を覚ます前に遠くか、もしくは安全な道へ行かないと。」

『安全な道?妖精の道のこと?だったらー』

「おいっ!妖精、一体どっちの味方なんだ…」
『ヒャッ!』
妖精の悲鳴と、僕の背中の衝撃が同時だった。
ツキカゲが振り返りその反動で僕は放り出され尻餅をつく。

背中に温かいものを感じる。
妖精が背中に向かって言葉を唱えてる。
『たくさん勉強して習得したのに、なんで?上手に出来ないの?うわーんっ』
どんどん痛みが激しくなって温かいもの…あぁ、きっと血だ。
寒いし、気が遠くなってきた。
2匹のうち1匹のオオカミが目を覚まし、僕たちに追いついたようだ。

ああ、ここで僕は終わってしまうのかー。
意識が遠のく中、ツキカゲの咆哮が聞こえた。   ーつづくー

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