元ケースワーカーが語る生活保護 その2


今日のテーマ

 こんにちは。バベルです。
 今回は「生活保護の申請」についてスポットを当てて語っていきたいと思います。
 一つ目に「申請のための条件」についてお話して、二つ目に「申請時に必要なもの」を話す予定です。

生活保護の申請について

申請のための条件

 まずはどんな人なら生活保護を申請できるのか。
 世間のイメージでは、生活保護を申請する人は「お金が無い」「家が無い」「住民票が無い」「仕事が無い」・・・色んな「無い」人が想像されています。
 まあ間違ってはいないですよね。しかしながら、私が働いていた自治体で申請受理の基準としていた条件は次の内容でした。

 (1)申請先の福祉事務所が所管する地域内に定住している者
 (2)申請者全員が保護の申請に了承しているかどうか

 以上。これだけ。
 要するに「家がある」「保護を受けたい気持ちがある」ことだけが申請についての条件でした。
 じゃあオレも私も申請する、という声が聞こえてきそうですが、あくまでもできるのは「申請」だけ。生活保護が開始となるかはまた別の話。(詳しくは次回お話しします)
 ここでしれっと出てきた「福祉事務所」というワード。大抵は市単位で福祉事務所を構成するのですが、町村だと都府県の福祉事務所(県によって地区ごとに何個かに分かれていることが多い)が申請先になるので、お住いの都道府県に確認してみてください。
 つまり、A県B市在住の人はB市福祉事務所(大体はB市の市役所)に相談に行き、A県C町在住の人はC町の町役場に相談の上、A県中央福祉事務所に申請にするみたいな感じです。ちなみに私は市にいたので、町村単位の申請に関しては若干違う部分があるかもしれませんのでご理解ください。

 「住民票があるところが申請先じゃないのか」という声も聞こえますが、住民票がある場所に必ずしも居住しているとは限らないですよね。重要なのは、あくまでも申請時に住んでいるところがどこなのかということ。
 極端な話、住民票は北海道稚内市にあっても、申請時に住んでいるのが沖縄県那覇市だったら、那覇市役所の福祉事務所に申請しなければならないということです。
 ちなみに「住民票住所≠現住所」が長期間続いている場合、住民基本台帳法に違反する場合があるらしいのでくれぐれもご注意ください。
 ここで「住民票が無い人はどうするのか」という質問について。いるんですよねぇ、たまに。住民票が無い人。結論から申し上げますと、住民票の有無にかかわらず生活保護の申請はできます。

 さらに「家が無いホームレスの人はどうするんだ」という声。これはですねぇ…非常に難しい問題なんですよねぇ…。
 家が無いと保護申請できないけど、その家に住むための契約するだけの費用が無いから住めないという二律背反。アンビバレンス。
 ここで出てくるのが生活保護法第73条です。これは家が無い人が新しく家の契約を結ぶための費用は都道府県が負担するので保護申請してもいいんじゃない、という内容になります。
 じゃあ誰でも申請できるじゃん、yeah!と考える貴方、減点です。私の経験上、保護申請したいからアパートの契約をしたいと言って、不動産会社ですんなり見積書をもらえた人はごくわずかです。どんな不動産会社にも住宅を貸せるかの審査がありますから、その審査に生活保護未申請の人が通るのかという話です。まず無理ですよ、そんなの。ちなみに、どうやったら申請が通るんだとかの話に関しては、私は正直分かりません。これも私の経験上ですが、大手の全国的な不動産会社よりも、個人経営で地元密着型の不動産会社の方が何とかしてくれることは多い気がします。

 さらに申請受理の基準(2)でよくあるのが、「父親と同居しているんだけど、父親だけ生活保護を受けさせて、俺は受けたくない」というようなケース。
 これは申請受理できません。根拠としては、生活保護法第10条の中に「保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。」とあります。いわゆる世帯単位の原則です。
 ただややこしいのが、同じく生活保護法第10条に「但し、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる。」ともあります。
 いやどっちだよ、と思いますよね、これ。詳しく掘り下げるととんでもなく長くなるのでここでは書きませんが、要は個人のわがままや特段の理由なく、世帯内で保護か非保護かを分離することはできないよということです。
 同様に、保護の申請には世帯内全員の承諾が必要です。「俺は保護受けたいけど、父親が絶対反対している」という状態での申請受理はできません。

申請時に必要なもの

 正直、手ぶらで来てもらっても保護申請はできます。
 ただ、持ってきてくれると正直助かるものがいくつかあるので、それを紹介していきます。

①印鑑
 まあ市役所の手続きですからね。印鑑押すものが非常に多いんですよ。最近は印鑑を忘れたor持ってないなら、後日押印でもよくなってきてます。

②銀行通帳
 生活保護申請受理後に資産調査を実施する(詳細は次回)のですが、その調査のための副次的資料として使います。持ってきてくれる場合、最新の分まで記帳してくれると良いですね。

③各種手帳
 身体障害者手帳や精神障害者手帳、療育手帳など。これらは保護決定の際に保護費の加算に繋がる可能性がある(詳細は別の回にて)ので、持っているなら絶対に提出することをお勧めします。
 また、保護費の加算等には繋がりませんが、所持しているなら自立支援医療手帳(精神通院医療、更正医療)を提出してくれるとよりGoodです。
 あとは年金手帳ですかね。年金事務所へ資産調査を実施するときに役立ちますので。

④給与明細書、年金決定通知書
 どちらも持っていればの話ですね。
 給与明細書は直近3~4ヶ月分くらい、年金決定通知書は最新のものがあれば十分です。

⑤身分証明書
 代表的なところで言うと運転免許証、マイナンバーカード、国民健康保険証などですね。まあそれで何かするわけではないですけど。

 以上、①~⑤まで挙げました。
 これらを持って市役所に相談してくれれば文句ないと思います。
 ただ、あくまでも私がケースワーカー時代での話なので、別の市役所によっては異なる部分も多々あると思いますので、不安な場合は市役所に電話で確認してもいいかもしれません。

おわりに

 今回は以上になります。
 もう少し追加したいところや掘り下げたい部分もあるので、その時は別に書こうと思います。
 次回は「保護申請後の審査」についてお話しできればと思います。よろしくお願いします。

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