元ケースワーカーが語る生活保護 その4
今日のテーマ
皆様、こんにちは。バベルです。
今日は前回のその3でも出てきた「保護の種類」について、ざっと説明していきたいと思います。
保護受給の大筋とは離れる内容ではありますが、生活保護を知る上で欠かせない情報もちょいちょい出てきますので、最後までご覧頂ければ幸いでございます。
保護の種類って何?
そのまんまです。保護の種類って何でしょうかという話です。生活保護は生活保護で、それ以上でもそれ以下でもないんですが、要は「生活保護の内訳」とでも言えば若干イメージは付くかなって思います。
保護の種類は全部で8つ+1つで、全て保護の種類は「〇〇扶助(ふじょ)」と呼びます。「+1つ」って何ぞやって感じですが、それも含めて今から説明していきます。
①生活扶助(せいかつふじょ)
1つ目は生活扶助。言ってしまえば生活費です。
衣・食・住のうち、前2つの衣と食ですね。あとはライフライン(電気・ガス・水道)の支払や携帯電話の支払についても生活扶助から捻出する必要があります。
②住宅扶助(じゅうたくふじょ)
2つ目は住宅扶助。こちらは家賃ですね。
衣・食・住のうち、後ろ1つの住ですね。家賃の他にも、1~2年に1回ある住宅更新料の支払などもここに含まれます。
③教育扶助(きょういくふじょ)
3つ目は教育扶助。
これは小学校と中学校の義務教育時にかかる費用について支払うものになります。じゃあ保育園や幼稚園、高校は?って話ですが、まず保育園や幼稚園の費用は生活保護費からは出ません。これらに関しては、生活保護受給世帯の場合、免除になったりする可能性もありますので、市役所に相談してみてください。高校の費用はこれから出てくる生業扶助(せいぎょうふじょ)に該当します。
教育扶助の詳細として、最も重要なものが教育基準額と給食費です。あとは小中学校の入学時に支払われる入学準備金、教科書購入時に支払われる教材費、通学に自転車やバスが必要な場合に支払われる通学費、クラブ活動や部活動にかかる費用が支払われる学習支援費などが該当します。
④生業扶助(せいぎょうふじょ)
4つ目は生業扶助。
③で出てきたとおり、高校就学の費用はこちらになります。
生業扶助の詳細としては③とほぼ同じです。1つだけ大きく違うのが入学準備金の扱いです。教育扶助の場合、毎年3月の保護費に該当世帯に対して、上限額MAXを支給する(これを職権による支給なんて言ったりします)のですが、生業扶助の場合、領収書を提出してもらい、かかった分の費用を支給する実費支給方式を取るか、上限額MAXまで支給したのち、領収書を提出してもらい、余った分を返還する精算方式を取ったりします。
他にも、就労支援に関する費用もこちらに該当します。例えば、就労先が決定したけど、必要なスーツや靴などの費用が出せない場合は、上限額はあるものの就労支度金として支給することが可能です。
⑤介護扶助(かいごふじょ)
5つ目は介護扶助。そのまんま、介護保険料や介護サービス料の支払についてが該当します。
若干、生活保護の内容からは離れてしまうのですが、介護扶助について説明するには介護保険の知識が不可欠ですので、介護保険の内容も挟みながら話を続けます。(筆者は介護保険が専門ではないので、詳細については説明できない点をご理解ください)
そもそも介護保険料とは、年金受給者が年金額から天引きされるものと、役所の介護保険担当課から配布される納付書で納めるものがあるのですが、生活保護上では前者を特別徴収、後者を普通徴収と呼びます。特別徴収、普通徴収どちらの場合でも、基本的には生活保護受給者本人に介護保険料分の保護費を渡すということはありません。特別徴収の場合、年金額によって保護費から計算され、普通徴収の場合、介護扶助として保護費を支払いますが、生活保護受給者に代わって生活保護担当課が介護保険担当課に代理で納付する手順を取ります。これを代理納付と呼びます。
あとは介護サービスの費用についてですが、65歳以上の場合、9割が介護保険での支払で、残りの1割が自己負担となります。その自己負担分を生活保護費から支払うということになります。介護サービスの一部として、デイサービスや介護老人保健施設への通所、福祉用具レンタル費用や介護に必要な住宅改修費などが挙げられます。
なお、介護サービスは特定の疾病を持っている40~64歳の人でも受けられます。その場合、生活保護受給者は10割が自己負担となってしまいますが、それが全額生活保護負担となるわけですね。
⑥医療扶助(いりょうふじょ)
6つ目は医療扶助。要するに医療費ですね。
前回のその3でもチラッと話してますが、⑤の介護扶助と⑥の医療扶助は基本的に生活保護受給者本人に支払う費用ではないため、あまり意識はされないかもしれません。
病院自体にかかる費用よりも、生活保護受給者本人に関わってくる医療扶助で大事なのは通院移送費ですね。これは読んでそのまま、病院への通院交通費のことです。これは生活保護受給者本人と福祉事務所側とでトラブルになりやすいのが問題です。確かに生活保護から通院移送費として出せるのは間違いないのですが、月1回自宅から病院までバスの往復で300円を保護費で出す必要があるのかと言うのは、制度云々と言うよりも日常の生活費でどうにかなるレベルではないかという話が度々上がります。その逆に、月に何十回も何ヶ所も自宅から離れた病院にかかる分の交通費を出せと言われても、それが果たして適切な通院なのかいう問題点もあります。この辺りのさじ加減は地域の福祉事務所によって大きく変わる部分となるので、よく担当ケースワーカーらと話をすることをお勧めします。
他にも、治療材料と言う名目でメガネの作成費用なども該当します。再作成に必要な期間は、生活保護費でメガネを作成してから4年間(レンズ交換だけで終わるなら2年間)が目安となりますので、お住いの地区の福祉事務所のケースワーカーによくご相談ください。
⑦出産扶助(しゅっさんふじょ)
7つ目は出産扶助。出産費用のことです。
ご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、出産費用って実は保険適用外なんですよね。まあ出産時の補助金として出産育児一時金というものがあるらしいですが、これは生活保護受給世帯は対象外となっています。
じゃあ子供ができてしまった場合はどうすんのってことなんですが、そのために出産扶助があります。そう、あるんですが・・・現場の人間からすると、出産扶助って正直扱いに困るんです。と言うのも、これを安易に何でもかんでも認めてしまうと、生活保護費で出産費用を支給しますから、いつでも子供ができてもいいですよと言うニュアンスで取られることになってしまいます。少子化が問題となっている今、出生率の増加と言う面では良いニュースですが、仮に新生児の両親がどちらも働いておらず、まともに育児ができないような状況かもしれないと考えると、これを世間一般で見て扶助を出すことについて全員が納得できるかと言われると疑問ですよね。
かと言って、福祉事務所として知らん振りはできないし、というジレンマに悩まされます。それくらい非常に難しい扶助なんです。
⑧葬祭扶助(そうさいふじょ)
8つ目は葬祭扶助です。生まれることがあれば死ぬこともあります。だってにんげんだもの。
基本的に生活保護費と言うのは生者に対して支給されるもののことを言います。勘のいい方なら分かりますよね。葬祭扶助も保護受給者本人に対して支給される保護費ではありません。医療扶助などとは扱いが異なり、そもそも亡くなった人が直接生活保護費を取りに来ること自体が絶対にできません。また銀行口座に入金されても暗証番号が分からないのに預金先から下ろせませんし、振込の手続を行うこともできません。そうしたら葬祭業者に直接支払うしかないですよね。
葬祭扶助もケースワーカーを悩ますものの1つで、すぐに亡くなった生活保護受給者本人の遺族らと連絡が取れて、遺族らで葬祭費用は負担するということになれば、これほど楽なことはありません。ですが、大抵の場合が遺族はいないか、交流が無くて絶縁状態であったりする場合が多かったり、無事に遺族が見つかっても予期せぬ何十万の出費が払えない場合もあったりして、福祉事務所の負担となる結末がほとんどです。
結構多いのが、周辺住民らからの通報によって、誰にも気付かれずに自宅内で亡くなっているのが発見されることがあります。いわゆる孤独死です。私も現役のケースワーカーだった時に何件か経験しました。
⑨一時扶助(いちじふじょ)
最後が一時扶助です。これが「+1つ」の正体です。
とは言いますが、フタを開ければなんてことはありません。要するに生活保護受給者本人から支給に伴う申請を受け、臨時に支給される保護費のことを指します。
②で出てきた住宅更新料、③および④で出てきた入学準備金、⑥で出てきた通院移送費や治療材料の作成費用などが一時扶助に該当します。
これらはすべて一部になるので、判断は自分でせずに、必ずケースワーカーに相談するようにしてください。
おわりに
保護の種類、ざっと挙げてみましたがいかがでしたでしょうか。
一つ一つの内容について、生活保護受給者自身が支給の可否について独自に判断するのではなく、必ずケースワーカーに相談の上で判断するようにしてください。「出せると聞いた」「ネットで見た」は厳禁です。
今回は以上になります。
次回は「生活保護における就労と給与の関係」について話していこうと思います。それでは。