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DOACの使い分け、中止基準
はじめに
DOACについて一通りまとめてみました。
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DOAC概論
ワーファリンを好き好んで使用する医師はもういなくなるでしょう。
食事制限がない
PTのモニタリングが不要
という患者にとっても医師にとってもいい薬。DOACが適応外でワーファリンを使用する場合は弁膜症性の心房細動に限ります、具体的には僧帽弁狭窄症MS、および機械弁の患者の2種類しかいないはずです。
DOACの注意点として腎機能が極度に低下している患者には使用不可(CCr<15では禁忌)という欠点があります。なのでほぼ末期腎不全の心房細動患者ならワーファリンWf、、、、という話に理論上はなりますね。
しかしそこまで腎機能が悪い患者にワーファリンを使用すること自体出血リスクが非常に高い行為です。透析患者の心房細動において抗凝固薬はルーチンで推奨されていない現状も鑑みて、Wfを考えなく開始するのはやめたほうがいいでしょう。
透析に近い腎不全の心房細動患者において、本気で脳梗塞の予防を考えるのであれば抗凝固薬をどう続けるかよりも根治治療であるカテーテルアブレーションや経カテーテル左心耳閉鎖術(WATCHMANによる閉鎖)を検討したほうがいいです。
他の欠点としては、OACは薬価が全般的に高いことです。金銭的事情がある患者ではワーファリン使用もやむを得ません。
出血リスク
概ねDOACはWfと比較して脳出血リスクは低いものの、消化管出血リスクはやや高い傾向にあります。
DOAC一覧
直接経口抗凝固薬(DOAC:Direct Oral Anticoagulants)の使い分けについて解説します。DOACには主に以下の4剤があります。基本エリキュースかリクシアナの使用のみで十分かと。
主に使用するのは非弁膜症性心房細動(僧帽弁狭窄症MSの合併、または機械弁はワーファリンを使用)かPE/DVTですね。どの病態に使用するかで容量が変わるので気をつけましょう。
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ダビガトラン(プラザキサ)
好き好んで使う状況はほぼないです。食道炎、血球減少など副作用が他のDOACに比べて多く、以前は唯一中和薬があるDOACとして名が上がりましたが、2022年に他のDOACにも対応できる中和薬(オンデキサ)ができたのでその利点も無くなりました。
何より消化管出血のリスクが一番高く、110mgの減量容量では多少マシになるもののピーキーな薬、という印象が拭えませんね。
リバーロキサバン(イグザレルト)
こちらも消化管出血のリスクが高く、大出血イベントも他のDOACと比較して多めです(ROCKET-AF)。まぁエリキュースやリクシアナと比較して容量調整が簡単(腎機能だけ考慮すればOK)というメリットがあります。
アピキサバン(エリキュース)
出血リスクが最も低いDOACで、1日2回飲む手間さえ目を瞑れば総合力No1です。
エドキサバン(リクシアナ)
1日1回のコンプライアンス向上が見込める内服。60mg、30mg、15mgという3段階の容量調整ができるところも強み。
DOACの用量(非弁膜症性心房細動)
1日2回の内服に問題なければエリキュースがbest。次点でリクシアナ。
非弁膜症性かは一度確認しておきましょう。聴診でMSを疑うopening snapが確認できればかっこいいけど、どちらにせよ心機能や形態は確認するべきなので心エコー必須です。
DOACの用量調整のポイント
ダビガトラン
150mg 1日2回が基本だが、高齢者や腎機能低下例では110mg 1日2回に減量。
消化管出血リスクが高い場合も110mg推奨。
CCrが30以下であれば禁忌
リバーロキサバン
腎機能が低下(CrCl 15~49mL/min)した場合、15mg 1日1回に減量。
食事と一緒に服用することで吸収が向上するため食後に服用することが重要。
アピキサバン
80歳以上・体重60kg以下・血清クレアチニン1.5mg/dL以上のうち2つ以上を満たす場合は2.5mg 1日2回に減量。
1つだけ満たす場合は減量しない。
エドキサバン
CrClが低い(15~50mL/min)または体重60kg以下の場合、30mg 1日1回に減量。
出血リスク次第で15mgの使用も可能
まとめ
腎機能低下時(CrCl 15〜50mL/min) → すべてのDOACで減量が必要
高齢者・低体重(特にアピキサバンとエドキサバン) → 減量基準に注意
DOACの用量(PE/DVT)
循環動態が保たれている肺塞栓であればイグザレルト、もしくはエリキュースが使用できます。特にエリキュースは7日間のloadingで済むので一番使いやすい。
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PE/DVT治療のポイント
リバーロキサバン・アピキサバンは初日から単剤で使用可能(ヘパリン前投薬不要)
ダビガトラン・エドキサバンはヘパリンの前投薬が必要
維持療法は通常3~6か月(再発リスクが高い場合は長期治療)
出血リスクが高い場合、アピキサバンや低用量エドキサバンを検討
消化管出血リスクが高い場合、アピキサバンが最も安全
長期治療(6か月以上)では、アピキサバンの2.5mg 1日2回が推奨されることがある
OACの継続、中止について
概ね出血イベント、もしくはAKIの際には中止せざるを得ないでしょう。肺塞栓症急性期治療の場合は抗血栓薬をやめるかどうかは非常に難しい、、、、ですが、これは循環器内科の仕事です。
みなさんが困るのは主に慢性期治療でのDOACの中止についてだと思うので、そちらについて解説していきます。また中止する場合には必ず以下のICを行いましょう。病院によっては抗血栓薬中止のために同意書まであったりします。
中止する場合のIC
「現在患者様の体の状態から、血液サラサラの内服は中止せざるを得ません。脳梗塞などの塞栓症リスクが多少上がってしまうことは重々承知しており、万が一塞栓症が起こった際には当院で迅速に対応いたしますのでご了承ください。」
AKI
Crクリアランスが15以上であれば容量調整して投薬継続、、、、って方法もできなくはないですが、個人的には全例中止してヘパリン置換を検討するべきだと思います。
なぜならAKIの時点で腎臓に負担がかかっており、腎排泄が主であるDOACは思った以上に体内に残留すると考えるべき。そして今後腎機能がさらに悪化する可能性もあるわけで、朝の採血を見て「昨日は大丈夫だったのにこんなに腎機能悪くなると思わなかった、、、、朝DOAC内服してしまってるよ、、、、、」という悲しい事態になることは防ぎたいですね。
そうなるとヘパリンに置換していたほうがリバースも容易で管理もしやすいのでおすすめ。腎機能もあまり気にせず調整できますしね。
AKIを脱して状態が安定すればDOACを再開しましょう。
出血イベント
大出血イベント(消化管出血、脳出血、創部出血など)は問答無用で中止。出血イベントが落ち着き次第できるだけ早期再開です。病態によってはオンデキサという中和薬を使用してリバースします。
鼻血や血尿などの小規模のイベントであれば、wet purpuraなどの易出血傾向の所見が他にもないかを診察+採血で貧血を確認(血小板や凝固系は抗血栓薬内服中でも一旦確認するべきかと、高齢者だと複合的な要因が多いので内服のせいだと決めつけるべきではない。出血傾向の記事はこちら)して、問題なければ継続とする場合が多いです。
内服の時間、コンプライアンスがどうかはきっちり問診しましょう。飲み忘れがあったから2回分まとめて飲んだとか、患者さんは時々とんでもない理屈をつけて内服を調整していることがあります。夕方に飲めないから朝と昼に飲んだとか、、、、そんな飲み方したら出血傾向にもなるでしょってことを平気でやる人もいるので、そこは確認したいですね。あとは薬剤の相互作用も注意したいところ(抗不整脈薬のアミオダロンは、ワーファリン含め抗凝固薬の作用を増強します、一度薬剤師に確認してもいいかと)。
また、心房細動患者に限りますが出血イベントの大小に関わらず、循環器内科へカテーテルアブレーション、もしくは経皮的左心耳閉鎖術の検討をしてもらったほうがいいでしょう。なぜならこのカテーテル手術で(患者背景にもよりますが)抗凝固薬を中止できることがあるからです。100%ではないですが、抗血栓薬を中止できるのはやはり魅力的です。
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