恩情
22歳の12月15日。前回の入院の日のこと。
ある人から突然電話がかかってきた。
その人は直前の講義で同じ班になっただけ、
すれ違ったら挨拶する程度の人だった。
私はその人に講義を休むから班に迷惑をかける旨を連絡していた。
しかしまさか電話で折り返してくるとは思ってもいなかった。
その人の第一声は「今どこですか?」だった。
その時にはもうある程度私の状況がなぜかわかっていたと、あとから聞いた。
その日からその人は毎日連絡してきた。
夜には電話もしてきた。
いつもいつもただ私のことを気にかけてくれた。
思いがけなく嬉しかった。
入院中は疎か、退院しても支えてくれた。
実技試験・筆記試験・レポート課題の山もその人の支え無しでは乗り切れなかった。
何気ない会話にただ救われた。
何の得も無い筈なのに、毎日ただ「調子どうですか?」と聞いてくれた。
私はなんでも言えた。
本当に同仕様も無い状態の私を、ただ見守ってくれた。
そして今回の入院。
あの時の感謝を伝えたくて久しぶりに連絡した。
本当にあの時以来だった。
私達はまるで昨日までの事のように話せた。
思いがけなく、今回もまたやりとりは続いた。
本当に毎日ただ「調子どうですか?」と聞いてくれた。
やっぱり私はなんでも言えた。
本当に同仕様も無い状態の私を、ただただ見守っていてくれた。
でもそれ以上でも以下でも無い、
不思議な関係。
家族や友達には言えない事、
家族や友達とは違う私。
他に形容し難い。かけがえのない人。
大袈裟でなく、その人無しでは生きられなかった。
唯一無二の恩人。
私が生きるからには、
いつかこの人を助けたい。
助けられる自分でありたい。
それまで生きたい。
他に形容し難い。かけがえのないその人。
私の生きる欲。