青空




何度目だろうか。


生きていて良かった。


この空の青さに今この瞬間が満たされる。


目一杯吸い込んだ空気が身体の隅々まで行き渡る。


長く病棟から出た後で。


こうして幸福を感じられるのだと知った。


幸福を確かめられることが喜びと分かった。


例えばこの空の向こうのどこかで。


少年はサッカーをしていて。


そのグラウンドは爆撃されて。


少年の両脚は一瞬で吹き飛んだとして。


その少年が亡くなるのがその数秒後だとして。


同じ空の下で異なる数多の現実があると知った時。


そう気づいた一瞬後で。それはもう同じじゃない。


その数秒後で何かが変われる。


その少年の無念さに。その現実の無残さに。


知った自分が代弁したっていい気がした。


どんなに現実が辛かろうとも。


何も変えられないと打ちひしがれようとも。


まだ生きているじゃないか。


そうもう光を写すことの無い瞳は許してくれないだろうから。


だから私はただ不条理に屈しない人であろう。


こうしてまだ空を見上げられるのだから。













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