弔い酒
貴方を思って酒を飲むよ。
みんな笑っているよ。
みんなで爺さんの話をしている。
優しい人だったとか。
若いときはイケメンだったとか。
釣りと酒が好きだったとか。
婆さんは嬉しいような切ないような顔をしている。
泣いているような、笑っているような。
今まで見たことのない顔をしているよ。
だからもっと側に来てやってよ。
そんな遠くにいないでさ。
婆さんの隣にさ。
くっつく程近くに居てやってよ。
酒のことは任せてよ。
みんなの顔を見て
みんなのコップを見て
私が上手く注いでまわるからさ。
みんな貴方の不在を噛み締めてるんじゃない。
爺さん、
貴方がみんなを泣かせてるんじゃないよ。
みんな貴方を想っていた分だけ顔に出てるだけだよ。
爺さん、
貴方も旨い酒を飲んでよ。
貴方を思って酒を注ぐよ。