2025年上半期の日本株について

金曜日の雇用統計を受けて、米金利は上昇し、また日銀の利上げ懸念から日経先物は38,753円まで下落した。特に米株について悲観的な意見も目立ってきて、日本株ホルダーである本記事の読者や私は不安な3連休を過ごしているだろう。そこで今回は、今年の、特に7月までの相場観を整理してここにまとめる。

2025年は米株よりも日本株がオーバーパフォームするだろう

いきなりの見出しで恐縮だが、2025年は米株よりも日本株を重視できる一年になる可能性が高いと見ている。根拠としては、金融政策、企業成長、需給の3点だ。

①日銀の金融政策について

1/10金曜日の報道では、物価見通しの引き上げを予告する記事が出た。ただしこれはノイズというか予告の予告のようなもので、利上げは春闘以降、つまり4月〜7月だろう。これは12月の日銀の声明ではっきりと読み取れる。今回の記事は、4月に利上げを行えるように、1月あたりからじっくりと織り込ませる意図があるだろう。従って、この予想が正しいとすると、1月〜3月の日銀会合は全て買い場となる。そのため、直近の下落は1月利上げを織り込みに行った部分もあるため、週末の下落は弱きになる必要がないだろう。
また、日10年金利が1.2%となったことで、銀行や保険会社の国債購入も始まり、緩やかな円高圧力になるだろう。これは日銀に更なる時間的余裕を与える。実際に、雇用統計後のドル高を受けてもむしろ円高に触れた。これはノイズの可能性もあるが、ドル円の上値の重さを感じた。

さらに感想となってしまうが、12月の会合では日銀が辛抱強く緩和を続ける姿勢を感じられた。今年の前半はこれに乗ってみようと考えている。いきなり予想を大外しした場合は、ゼロから組み直しとなってしまうのでドキドキだ。PFはゼロどころかマイナスからになるだろう。(泣)

生活全般ではインフレを感じて苦しいが、この苦しみは日本経済全体ではどうやらプラスらしい。

②日本企業の成長

東証の改革などを別にして、単純にEPSが順調に成長しているのは最も信頼できる材料だ。以下は加重平均EPSだが、2023年に9月以降ははっきりとした上昇トレンドだ。一年間で15%程度の上昇であり、これはSP500の9~11%成長を上回る。円安とインフレという血の代償はEPSに変換されているのだ。
EPSとPERの考え方は、短期や暴落時には目安にしかならないが、中長期では強力なサポートとなる。企業業績と同様に、EPSの成長が長く続けば、その分プレミアムが乗ることになる=PERが上昇する。
現状のPERは15~16倍と評価され、EPS2,500円に対して、37,500円〜40,000円と計算できるが、これが16~17倍へと変化すると、40,000円〜42,500円となる計算だ。これはただの数字遊びだが、EPSの安定した成長が海外投資家に評価されればPERの変化は起こり得る。参考までに、SP500のPERは29倍で、米株にはそれだけの成長期待とプレミアムが乗っているのだ。(もちろんこれが米株の下落リスクとして随所で紹介されている)
巷で話題の日経5万円のシナリオは、
 EPS:2,700円
 PER:18.5倍
で達成となる。このままEPSが伸び続ければ、今年かどうかは分からないが、近いうちに達成する可能性は十分にあるだろう。
EPSの持続的な成長による下値の切り上げと、成長実績によるプレミアム、この2つが噛み合った時は大きな上昇になる可能性がある。
これが本年は米国株よりも日本株にウェートを置く最大の理由だ。

https://nikkei225fut.jp/fundamental/nikkei?period=all より抜粋


③需給について

①自社株買い
 2024年の投資主体別売買動向を見ると、自社株買いが7.8兆円の買い越しとなり、これは売り手に回らない資金なので下値を強力にサポートしている。アベノミクスでの海外投資家の買いが16~18兆円程度と言われているので、今年も同じペースで進めばそれに近づくことになる。また、海外投資家は4.4兆円の売り越し、個人投資家は1.5兆円の売り越しで、これは今年の需給を見るとプラス要素だ。
特に海外投資家の累積を見ると、6兆円を下回っており、仮に今年これが全て売りに回ったとしても自社株買いで相殺できる。つまり売り手がいなくなるのだ。

https://nikkei225fut.jp/taradestatusagent/foreignerssumより抜粋

②GPIFやその他年金による日本株ウェイト変更
これは噂レベルとされているが、噂として出ると相場を大きく動かしている。日本の年金といえば最大はGPIFで、公務員年金などがそれに続く形だ。現在はGPIFでは海外株:海外債券:日本株:日本債券が全て25%ずつとなっているが、これを5%動かすと10兆円以上の円買いフローとなる。日本株日本国債を30%ずつにした場合、25兆円以上のフローとなり、円高に大きな圧力がかかる。日銀の緩和を最大限引き出すためにこれがサプライズとして登場するかに注目だ。10兆円も日本株を買ったら流動性がさらに枯渇しそうだが、日経平均を4,000円程度押し上げるだろう。


リスクシナリオについて

日本株にとって最大のリスクシナリオは元安だ。米中の対立や、現在の中国国債バブルによって元安が進んだ場合、日本企業の中国相手の業績が悪化する懸念がある。これは2018年の米中対立によって日本が景気後退のとばっちりを喰らった構図が今も生きている。
アジア株として日本買い中国売り、日本売り中国買いのペアトレードも有名で、これは日本株にとって再度追い風となるだろう。

一方で米国のリスクはどう捉えたら良いだろう?実績にはともかく、トランプの不安は株価に対してはほとんど織り込みが済んだと見ていて、トランプ就任初日のDAY1では材料出尽くしでの買い戻しが優勢になると見ている。また、インフレについても、Cleveland PPIを見る限りは再利上げを心配するのは過剰だ。2022年を煽る人もいるが、ゴールの見えない&前例のないフロントローディングの75bps利上げとは比べる段階にすらきていない。

コアCPI 3.2%程度で推移か

さらに、ミシガン期待インフレ率を政党支持別に見ると、民主党支持者の期待インフレ率が1.5%⇨4.2%と急上昇した。一方で共和党支持者の中では3.6%⇨1.3%と大きく下がった。民主党支持者からはトランプの関税や減税によって大きくインフレが進むと見られているのだ。これはバイデン時代には逆のことが起こっていたが、民主党支持者の悲観シナリオが現在のNY市場の代表的意見になっている可能性は高い。つまり関税によるインフレの加速、財政赤字によるタームプレミアムの増加はこれらの悲観的な意見によって形成されている。これはいずれ修正されると考えたほうが賢明だろう。さらに、パウエル議長が以前、10%のドル高は2%の金融引き締めに相当する旨を述べていた。現在のドルインデックスは110に迫り、現在の悲観シナリオによる金利上昇とドル高で相当の金融引き締め圧力がかかっている。これによって結果インフレは抑え込まれるのではないかと見ている。結局インフレが抑え込まれていればただの好景気なので、来週のCPIに注目だ。
また、以前の記事で、景気後退を伴わない利下げ時には、SP500の押し目は5%と書いた。現状はほぼ5%水準で、ちょうど良い押し目だ。

まとめ

長くなってしまったが、日銀が利上げを目一杯引っ張るシナリオで、日本株は上半期には42,000円の高値を取りに行くのではないかと見ている。日銀が早期に利上げをしたらこのシナリオは崩壊するので注意が必要だ。米国株は、インフレ指標が再び中心に来るだろう。トランプリスクはかなり織り込んでいるので、就任後からは上目線だ。1/20までに大きく下げる場面があればそこは確実に拾いたい。
日本株の分野の狙い目は、
 ・自動車
 平均的な下げ期間を過ぎ、上昇に入っても良い頃合い。上昇相場を取れれば、TOPIXを大きくオーバーパフォームできる。
  例:トヨタ自動車、三菱自動車、SUBARU、スズキなど
 ・造船
 ドル円の見通しが最も保守的&造船需要の長期化がテーマになる可能性が高い。
  例:ジャパンエンジン、古野電気、中国塗料など
 ・海運
 トランプ関税に備えて船便需要はパンパンだ。
  例:商船三井など
 ・ソフトウェア関連
 関税戦争が激化した場合、ソフトウェア関連に逃げよう。
  例:NTTデータ、SCSK、PKSHAなど

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