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15回目のラジオ~エリクソンの発達段階と苦しみを考える~

今年の2月から始めたラジオも、もう15回目。
8カ月がやってきます。

時が経つのが早いです。
ほんと、あっという間に1年が過ぎてしまう。

ちなみに、時の早さって年齢が高くなればなるほど早く感じるんだそうです。
例えば、10歳だと、人生10年分の1年=1/10
これが80歳だと人生80年分の1年=1/80
1/10>1/80だから、そりゃそうだ、と納得です。

私の子どもの頃って、長い休みが待ち遠しくて、「夏休みはまだかな」「冬休みは、お正月はまだかな」と、ずっと「まだかまだか」と思ってました。
20代は子育て、家事、仕事、先のことより、毎日のことで精いっぱい…
30代は進学したので、20代の頃に学校が加わり、1日24時間じゃ足らんって思い始めて、40代は、子どもたちが中学高校大学…と短いスパンで受験が来るのと、私自身は仕事で夜勤もしていたので、夜勤で日マタギ勤務をすると2日経つんで、1週間がとても早かったです。
50代半ばになった今は、やりたいことが多すぎて、あれもこれもと一度に手をつけちゃうんで、さらに時間が経つのが早くなりました。

さて、15回目の放送は9月の前半、1・2週の放送です。
本当は、この内容は夏休みが終わる前にお話ししたかったんです。

これまでのラジオ放送で、「苦しむ人への援助と5つの課題」や、「折れない心を育てるいのちの授業」のお話をさせていただきました。
その中で「苦しいときにこそ見えてくる支え」「支えがあれば穏やかになれる可能性がある」こと、そして「自分なんか何もできない」「誰の役にも立たない」って思うことがあっても、自分のことを認めてくれる誰かがいることで、自分のことを「これでよい」と思えることをお伝えしました。

なぜ、今回、今からお話しするテーマなのかといいますと・・・

だいたい長い休みの後って、気持ちが沈みがちになるんです。
特に、学校に行っている年代、思春期の子どもたち。
前回、14回目の放送で、「広島いのちの電話」の西野さんとも、そのお話をしたので、また同じこと言うの?って思う人もいるかもしれません。
でも、私は、とても大事なことって思うんです。
だって、この時期の関わり方が、思春期の子どもたちのその後の人生に、大きく影響するかもしれないから・・・

実は、8月終盤から9月の初めの数日間は、文部科学省も「学校再開が精神的負担になっている可能性がある」として、教育現場に対策を促している、という記事を過去に読んだことがあります。

そこで、まず大事にしたいことは「居場所を確保すること」です。

「ここにいてもいい」と思える安心できる居場所は、支えを見つける9つの視点にもありましたよね。
両親尊き保て役割委ねようかな(りょうしんとうときたもてやくわりゆだねようかな)この、「しん」の部分、「安心できる環境」です。
では、どうやったら「安心できる居場所」を確保できるんでしょうか。

自分自身のこととして考えてみてください。
どんな環境だったら「ここにいてもいい」と思えるでしょうか。

自分のことをわかってくれる人がいると、そこは安心できて「ここにいてもいい」って思えるんじゃないでしょうか?
わかってくれる人って、どんな人?

苦しむ人への援助と5つの課題で何度も出てきましたね。
わかってくれる人とは・・・話を聴いてくれる人。

でも、親になるとこんな言葉を言ってないですか?
「そんなことないでしょ」
「何を言ってるの」
「もういいから、早く寝なさい」
「何度言ったらわかるの」

「ここにいてもいい」と思えるには、自分のことを肯定してもらうことが必要です。
「そんなことないでしょ」「何言ってるの」→相手の言葉を否定している
「もういいから、早く寝なさい」→話を聴く気がないと言っているよう
「何度言ったらわかるの」→何度言ってもわからないあなたはダメね
これでは、肯定してもらえている感じはしませんよね。

話を聴いてくれる人・・・自分の話を受け止めてくれる人。
「あなたはそう思ってるんだね」相手の思いを受け止めてメッセージとして相手に返します。
これ、何という技法でしたっけ?
「反復」でしたね。
「オウム返し」とは少し違いますよ。
「オウム返し」は共感という感情が添えられていません。
「反復」は相手の気持ちに寄り添い、共感します。
相手の目を見て、頷いて…

どうか、保護者の方はお子さんに「ここにいてもいい」という安心できる居場所を確保してあげてください。

実は、私は過去に自分の居場所を見失ったことがあります。
私が高校生のときでした。
私の家には、私のことを邪魔に思っている人がいました。
もちろん、その人との人間関係はわるかったです。
そういう、家庭環境が嫌だと、親に訴えたこともありました。
でも、返ってくる言葉は「我慢しなさい」。

私は、何のためにこの家にいるんだろう・・・そんな思いで毎日を過ごしていました。
でも、家以外に行くところもなく、居心地が悪いと感じながら、居場所がないと感じる家にいるしかなかったんです。
そんな高校生の夏休みに、5歳年上の社会人の恋人ができました。
社会人なので、とても大人に見えましたね。
車を持っていたので、デートではこれまで行ったことのないところに連れて行ってくれました。
私の頭を撫でてくれたり、手を繋いでくれたり、抱きしめてくれました。
家に自分の居場所を見つけられなかった私は、恋人と過ごす時間に居場所を見つけたんです。
そうすると・・・家にいるよりも恋人といるほうを選ぶようになりました。
無断外泊を繰り返すようになり、それをとがめる親との衝突で、生活が乱れていきました。

約40年前のことです。
連絡手段は家の固定電話しかありません。
今のように携帯電話や一般家庭にインターネットは普及していない時代です。

今は、誰でも、どこからでもインターネットに繋がります。
さっきまで知らなかった誰かと、ほんの一瞬で知り合うことができます。
「居場所がない」その弱みに付け込んで、近づいてくる悪い大人もいます。
犯罪に巻き込まれてしまう可能性は、私が思春期を過ごした時代と比べて、数倍も高くなっています。

大事なことなのでもう一度言います。
どうか、「ここにいてもいい」という安心できる居場所を確保してあげてください。

https://mantennote.com/lifecycletheory/より画像引用

上に、「エリクソンのライフサイクル論」の画像を貼り付けています。
エリクソンの発達段階といって、人間の生涯を8つの段階に分けて、それぞれの段階で獲得すべき発達課題、これを「心理社会的危機」といいますが、人間の心理は、周囲の人々との相互作用を通して成長していく、という考えの元、各発達段階において、人間は心理社会的危機を乗り越えることで「力」を獲得できる、と提唱しています。

私は、この心理社会的危機が、苦しむ人への援助と5つの課題の「苦しみ」にあたると感じて、「苦しむ人」は、人生の最終段階に限らず、もう常に、そこここにいるじゃん、と思いました。

さきほど、私の高校生の頃のお話をしたんですけれども、高校生って思春期の後半ですね。

https://mantennote.com/lifecycletheory/より画像引用

思春期の後半、エリクソンの発達段階では5の青年期にあたります。
青年期の課題は、アイデンティティVSアイデンティティの混乱です。
私は「自分は何のためにいるのか」と悩み続けていました。
家族の中での自分の立ち位置、居場所はわからず混乱していました。
けれど、恋人ができたことで自分の居場所を見つけ、恋人にはかわいがってもらえる存在なのだと、自分の生きる意味をそこに見出し、「愛される自分」こそ必要なのだと思っていました。
(のちに、「愛される自分」ではなくなると、存在価値はないと思い込んでしまうので、この発達課題は、私自身は青年期にクリアすることはできなかったのです)

https://mental-coaching.jp/より画像引用

各発達段階の心理社会的危機について、お話しします。
乳児期:基本的信頼VS不信
【親や周りの大人に愛情を受け、世話をされることで基本的な信頼を形成させる時期】です。
きちんと愛情を受けて育ち、世話をされながら生きて育っていくことで乳児期と関わる人の「基本的な信頼感」が構築されます。信頼感が生まれることにより、乳児期には「希望」を得られるでしょう。反対に、育児の放任により誰にお世話をされなかった乳児期は、周りに不安や不信感、自分に対する無力感を持ってしまいます。「希望」を得られなかった乳児期は「不信」を抱き、今後の人生において多大な影響を及ぼしかねません。

幼児前期:自立性vs恥・疑惑
【周囲の人や物、自然などの環境と関わり、全身で感じることにつながる体験を繰り返すことで自我が芽生える時期】です。
幼児前期では、今まで周りがしてくれたことを自分でできるようになり、何でも自分でしたいという挑戦欲や自立性が芽生えます。
適切なチャレンジの機会があれば、「もっといろんなことをしてみたい」と思うことにより、自分の「意思」を得られます。ただ、全てのことに周囲の人が手を出してしまうと、子どもの挑戦する機会を奪ってしまいます。そして挑戦して失敗したことを非難や否定をされてしまうと、自律性は育つことはなく、逆に周囲が自分を信じてくれないという「恥・疑惑」が生まれてしまうのです。

幼児後期:自発性・積極性vs罪悪感
【幼稚園や保育園での同世代の子供との関わりが増え、外の世界に興味を持つ時期】です。幼児後期では、遊びや関心があるものについての「自発性・積極性」が形成されます。また、さまざまな事柄の「なぜ=目的」を知ることで「目的意識」という力を得られ、自分の興味があることへの追及ができるようになるでしょう。しかし、子どもの自発性や自主性のある積極的な活動に対して親が嫌な態度を取ったり、厳しくしつけたりしすぎると、子どもは「罪悪感」を覚えます。過度なしつけは子どもの罪悪感が強くなり、自発的な活動を妨げることに繋がってしまうのです。

学童期:勤勉性(完成)vs劣等感
【小学校に通って勉強を始めとしたさまざまなことを習得する時期】です。
自信をつけて自分には能力があると理解し、高学年になると物事への認識が可能になっていきます。学童期では様々な課題に取り組むことで自分に能力があることを自覚し、「有能感」を得られます。
そのため自己肯定感を持ち始める時期でもあり、物事を達成することにより次の課題への「勤勉性」も見られるでしょう。半面、物事に失敗したり、苦手なことでつまずいたりすることも多くなるでしょう。出来ないことを怒ったり否定するだけでは、子どもは「自分には無理だ」と「劣等感」を抱いてしまいます。その際に周りの大人のフォローが必要です。
自分のことも客観的に捉えられるようになり、発達の個人差も大きく見られる時期です。

青年期:アイデンティティvsアイデンティティの混乱
【自意識と客観的事実との違いに悩み始める時期】でもあります。
様々な葛藤の中で自らの生き方を模索しはじめると共に、「自分は何者であるのか」を思いう時期です。
青年期では、自分らしさとは?自分は何をしたいのか?など、多くのことを考え悩みます。
「自分とはこうである」=「自我同一性」つまりアイデンティティを確立できれば、自分自身の価値を信じ、それに対して貢献し応えようとする「忠誠心」の獲得が可能となるでしょう・アイデンティティを確立できなければ、自分は何者なのか?何故存在しているのか?と悩み続け、「アイデンティティの混乱」から抜け出せなくなるでしょう。そのため現代では、青年期すべてに共通する引きこもりの増加といった傾向があります。

成人期:親密性vs孤立
【もう子どもではなく自分を確立していき、友人や社会、恋愛などにおいて信頼できる人たちとの仲を深めていく時期】です。結婚をする人も多い年齢層になります。
成人期では、相手に自分を受け入れられるか、自分を否定されたときにどうするか?などアイデンティティの確立や「孤独」に立ち向かいます。
しかし、自分が自分を受け入れ、本当に信頼できる人と関わることにより獲得できるのが「愛や幸福」です。
エリクソンは親密性を「相手に自分を賭けても自分を失わない存在」と表現しました。
成人期には苦悩を通して自分自身の人生において、意味あることと捉えられるか否かという意味づけが重要です。
青年期までの発達課題を順調に克服できなかった場合、自己を確立できず、他人と積極的に関わることができません。
表面的な付き合いしかできなかったり、人との関わりを拒絶したりして「孤立」に陥ってしまうでしょう。

壮年期:次世代育成能力vs停滞
【次の世代を支えていくものに積極的に関心を持つ「世代性」の発達が重要な時期】です。
過去に家庭や職場などで上の世代から学んだことを活かし、子どもや孫など下の世代に伝えていけば、「配慮」の能力を得られます。
壮年期の後半では孫の子守りを任されることも多く、次の世代に関わるきっかけになり、精神の健康にも繋がるでしょう。
世代の繋がりを持たなかったり次の世代のことに興味がなかったりなど、自分の世代のことだけ考えていると「停滞」と呼ばれる状況に陥ります。
次世代に何を残すか意識した生き方ができていないと、自分が存在する意味が分からなくなってしまうのです。

老年期:自己統合vs絶望
【多くの人が退職し、子育てを終えて老後の生活を始める時期】です。
壮年期までの発達課題をクリアしていれば、老年期で「知恵」を得られます。
自分が想像していた人生と違っていても、大きな歴史の流れのなかで「自己統合」という自分の人生の意味を見い出せるでしょう。
前の世代から受け継いだものや次世代に残せるものもないと、自分が存在した意味を確認できず「絶望」に陥ってしまうでしょう。
自身の死に直面しても、自分の人生には意味があったのだと納得できず死を受け入れられなくなります。

このように、どの時期にいても苦しみは存在します。直面した苦しみに、どう向き合いどう折り合いをつけていくか、それを考え乗り越えた時、人は力をつけて成長するんですね。
エリクソンの心理社会性理論と、それって、苦しみの中にこそ見えてくる大切な支えにもつながる話だな、と思いながらお話しさせていただきました。

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