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エフェクチュエーション実践講座⑨縦割り組織の弊害と解決のアイデア

はじめに

 エフェクチュエーションは、限られた資源を活用して未来を創造する思考法です 。予測不可能な未来に対し、持っているものから始め、許容できるリスクの範囲で行動を起こし、予期せぬ出来事を機会に変える力を重視します。

 このプロセスは、大企業の新規事業やイノベーションの推進に有効ですが、伝統的な縦割り組織では障害になることがあります。

縦割り組織の課題

 大企業はしばしば、縦割り組織の構造を取っています。この構造は、部門間の連携が困難であり、個々の部門が自己完結型で動くため、企業全体としての柔軟な行動や新しいアイデアの実現が難しくなります。

 また、個人の自由な社外活動や横断的なプロジェクトへの参加が制限されることもあり、エフェクチュエーションの精神とは相反する場合が多いです。

エフェクチュエーションを大企業で実現するポイント

①社員も社長である旨のマインドを持たせる

 社員一人ひとりが、自分の行動や決定が企業の未来に直結するという認識を持つことが重要です。これは、社員が自主的に行動し、イノベーションを推進する文化を育む基盤になります。

②権限と責任を委譲する

 部門や個人に対し、より多くの自律性と責任を与えることで、柔軟で迅速な意思決定が可能になります。これにより、エフェクチュエーションの原則に基づいた行動が促進されます。

③社外活動を奨励する

 社員が社外での活動を通じて新たな視点やスキルを身につけることは、企業内での新しいアイデアの源泉となり得ます。社外のネットワークや異業種とのコラボレーションを通じて、新たな機会を創出することができます。

④横断的な組織を形成する

 縦割り組織の壁を越えたプロジェクトチームを設けることで、部門間の知識とリソースの共有が促進され、企業全体としての柔軟性とイノベーション能力が高まります。

⑤失敗を許容する文化を育む
 エフェクチュエーションの精神は、失敗を恐れずに新しいことに挑戦することを奨励します。このためには、失敗を責めるのではなく、学びと成長の機会として捉える文化が不可欠です。

事例
 エフェクチュエーションと縦割り組織の弊害を克服する具体的な事例として、ファンマーケティングの活用があります。このアプローチは、顧客やファンを事業の一環とみなし、彼らとの協力を通じて新たな価値を創造しようとするものです。

 以下では、ファンマーケティングを取り入れた企業の事例を紹介し、それがエフェクチュエーションの考え方と縦割り組織の問題点をどのように解決するかを解説します。

エフェクチュエーションの視点から見たファンマーケティング

 エフェクチュエーションでは、持っている資源を活用し、未来を創造することに重点を置きます。ファンマーケティングはこの考え方を体現しています。

 既存の顧客やファンという「手持ちの資源」を最大限活用し、彼らと共に新しい商品やサービスを開発したり、ブランドのメッセージを広めたりすることで、未来のビジネスチャンスを創出します。

縦割り組織の弊害とファンマーケティング

 縦割り組織では、部門間の連携が不足しがちで、外部のアイデアや意見が内部に浸透しにくいという問題があります。

 ファンマーケティングは、顧客やファンを企業のイノベーションプロセスに直接参加させることで、この壁を取り除きます。

 外部の声を聞くことで新鮮な視点がもたらされ、部門横断的なプロジェクトが促進されるのです。

 ある音楽関連の大企業が、新しい商品開発のためにファンマーケティングを導入した事例を考えます。同社は、独自のソーシャルメディアプラットフォームを通じて、ファンから新商品に関するアイデアを募集しました。

 このプロセスでは、マーケティング部門だけでなく、製品開発部門、顧客サポート部門など、企業内の様々な部門が協力してファンの意見を収集・分析しました。

 この取り組みにより、ファンからの直接のフィードバックを基にした新商品が開発され、市場導入された際には大きな成功を収めました

 ファンたちは、商品開発プロセスに参加したことで企業への愛着を深め、より一層のブランド忠誠心を示すようになりました。

 また、企業内では、ファンからのアイデアを受け入れることで、部門間の垣根を越えた協力が自然と促進され、社内のコミュニケーションとイノベーションが活性化しました。

まとめ

 大企業でエフェクチュエーションを実践するには、縦割り組織の課題を克服し、柔軟で開放的な組織文化を育むことが重要です。

 社員が企業の将来を共に創造するパートナーとして活動できる環境を整えることで、革新的なアイデアが生まれ、企業の持続的な成長が実現します。

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