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エフェクチュエーション実践講座11ジェフペゾスのAmazonをエフェクチュエーションで考える

はじめに

 私は顧客価値フリークでネットビジネスをWeb1時代から齧っていたので顧客価値を高める努力をしてきたAmazonが大好きなAmazonウォッチャーです。

 当然、ジェフペゾスも大好きで、カンブリア宮殿のAmazonの回もみていますし、日本のAmazonの方たちに聞いて顧客価値を高める9の手段や、AWSの管理者向けに講演をしてAmazon好きをアピールしているくらいです。

顧客価値を高める9のメソッド(TM)

 ジェフ・ベゾスは、本のネット販売からスタートしたアマゾンを創業し、顧客価値の高い、世界最大のオンライン小売業者にまで育て上げました。

 いくつもの研究本やAmazonの中の人に聞くと、Amazonを育てた過程でペゾスが取り入れた戦略は、驚くほどエフェクチュエーションの原則と密接に関連しています。これは注目すべきこと。

 ベゾスの行動をこの原則に沿って考えることで、企業経営者や起業家が取るべき行動の指針を見出すことができます。

1. Bird in Hand Principle(手持ちの資源を活用する)

 ベゾスは、最初にアマゾンを立ち上げた際、特に書籍販売から始めることにしました。これは、彼が確信を持って扱える市場であり、インターネットを利用した書籍販売が、当時としては比較的容易に開始できるビジネスモデルだったからです。

 再販制度があるので本はどこで買っても同じ値段で、安売り合戦で体力を消耗するリスクがないと考えたのです。デジタルで便利に買えるようにすれば必ず売れると考えました。

 このようにベゾスは、インターネット技術への理解と顧客中心のビジネスポリシーを生かし、ちゃっかり自分のビジネスが不利にならないようにも考えていたのです。最初はビジネスを小さく始めることでのちに大きくなる市場に育てあげました。

2. Affordable Loss Principle(許容できる損失を前提にリスクを取る)

 アマゾンが新しい市場に進出する際、ベゾスは常に許容できる損失を計算に入れていました。例えば、アマゾンは初期の段階で大量の在庫を抱えるリスクを避けるために、オンデマンドで書籍を仕入れるという方法を採用しました。

 また、失敗を恐れず、新しい事業モデル(例:AWS、キンドル)に投資し、これらが今日のアマゾンの大きな収益源となっています。最初からこれらのビジネスが想定されていた訳ではありません。コーゼーションではなくエフェクチュエーションで事業を大きくしていったのです。

3. Crazy Quilt Principle(協力とパートナーシップを通じて機会を形成する)

 アマゾンの成功の鍵の一つは、他の小売業者や出版社との協力関係にあります。ベゾスはこれらの企業とパートナーシップを結び、アマゾンプライム、マーケットプレイス、AWSなど、互いに利益をもたらす多くのサービスを創出しました。

 一見、競合を利する行動で、Amazonの中の人は「何故、競合を助けるのか、ペゾスよ!」と怒ったことでしょう。しかしペゾスは他を利して最終的に自分を利したのです。

 このエフェクチュエーション的原則に則った行動により、アマゾンは競争ではなく、共創を通じて市場を拡大してきました。

4. Lemonade Principle(予期せぬ出来事を機会として利用する)

 ベゾスは、市場や技術の変化を恐れず、それらをアマゾンの成長機会として捉えてきました。例えば、初期のインターネットの急成長を見て、彼はオンライン小売の潜在性を見抜き、迅速に事業を展開しました。

 本しか売っていない頃、顧客から「Amazonは本を買うのにとても便利だ。本以外の商品も売ってくれよ」と言われました。

 この苦情というか苦言を一つづつペゾスはAmazonに取り入れていきました。まさにエフェクチュエーションです。

 また、電子書籍市場の台頭を予見し、キンドルを開発、これが後に電子書籍市場のリーダーとなりました。

5. Pilot in the Plane Principle(未来を創造する)

 ベゾスは自らのビジョンに基づいてアマゾンを導き、革新的なアイデアで市場を形成してきました。

 彼は顧客満足を最優先し、それを実現するために必要な技術やビジネスモデルを自ら創造しました。AWSの成功は、ベゾスがクラウドコンピューティングの未来を見据え、積極的に投資し続けた結果です。

 ジェフ・ベゾスの成功は、エフェクチュエーションの原則を実践することで、大きな不確実性や限られた資源の中でも、革新的で持続可能なビジネスを創出できることを示しています。

ジェフ・ベゾスがエフェクチュエーションに成功した理由

 彼の独特なビジョン、戦略的な意思決定、そして変化に対する柔軟性にあります。ベゾスがエフェクチュエーションの原則を実践し、成功を収めた要因を考えてみましょう。

①独自のビジョンと顧客中心の姿勢

 ベゾスは非常に強いビジョンを持っていました。それは、インターネットを利用して顧客に前例のない価値を提供することです。

 彼は顧客が何を欲しいかを深く理解しようとし、そのニーズを満たすためにアマゾンを構築しました。この顧客中心の姿勢は、エフェクチュエーションの「Pilot in the Plane Principle」に合致します。

②リソースの最大化とリスクの管理

 ベゾスは「Bird in Hand Principle」に従って、手持ちのリソースを最大限に活用しました。初期のアマゾンでは、限られた資金とリソースの中で、書籍市場に焦点を当て、その後徐々に他の商品カテゴリーへと拡大していきました。

 また、「Affordable Loss Principle」に従い、大きなリスクを冒す前に許容できる損失を常に計算し、賢明な投資決定を行いました。

③協力とパートナーシップの促進

 「Crazy Quilt Principle」に基づき、ベゾスは他の企業とのパートナーシップを積極的に推進しました。

 アマゾンは多くの小売業者、出版社、そして後にはサードパーティのセラーと協力して、プラットフォームを拡大しました。これらの協力関係は、アマゾンが提供する価値を大きく高め、新しい市場機会を創出しました。

④変化を機会に変える能力

 ベゾスは「Lemonade Principle」を体現しています。市場や技術の変化を予測し、それをアマゾンの成長機会として捉えました。

 彼は常に変化に適応し、挑戦を新しいビジネスの機会とみなしました。例えば、クラウドコンピューティングや電子書籍の台頭を見越してAWSやKindleを発表し、これらの分野でリーダーになりました。

まとめ

 ジェフ・ベゾスがエフェクチュエーションを使ってビジネスを成功させているのは、これらの戦略的な行動と原則に基づく彼の能力によるものです。

 彼は自身の強みと機会を最大限に活用し、許容できるリスクの中で判断を下し、協力とパートナーシップを通じて新しい価値を創造しました。

 不確実性の中でも柔軟に対応し、自らのビジョンに基づいて未来を創り出してきました。これらの要素が、彼とアマゾンが長期にわたって成功を収める基盤となっているのだと思います。

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