ANCA関連血管炎による側頭動脈炎

ANCA関連血管炎(AAV)は小型血管炎を呈する病態として有名であるが,
稀に大型血管である側頭動脈や大動脈の血管炎を合併することがある.

こういった症例報告や人伝の話はよく聞くものの, 実際どの程度の頻度なのか, またどのような特徴があるのか, ここでまとめておく.

側頭動脈炎を合併したAAVの頻度は?

スイスの施設において, 10年間に診断されたAAV症例101例をレビュー
(GPA 58例, EGPA 28例, MPA 15例)した報告

(Rheumatology International (2021) 41:2147–2156)

・このうち5例でLVV所見が認められた(5.0%[1.6-11.2])
 
・この頻度はスイスの一般人口におけるLVV発症率を比較して優位に高値
(OR 234.9[91.18-605.2])であった.
・5例全例がGPAであり, PR3-ANCA陽性例が4例, MPO-ANCA陽性例が1例

・側頭動脈炎が3例, 大動脈炎が2例

他に, TA生検で血管炎を認めた354例のうち, 0.8%がAAVであったという報告もある

(Am J Surg Pathol 2014;38:1360–70)

側頭動脈炎を合併したAAVの特徴は?

フランスとベルギーの施設において, 
側頭動脈炎を合併したAAV: TA-AAV症例と,
 Classic GCA症例を後ろ向きに比較したCase-control study

(Arthritis & Rheumatology Vol. 73, No. 2, February 2021, pp 286–294)

・TA-AAVはTAを示唆する側頭動脈病理所見異常/症状が認められるAAV症例

 または, 組織で異常が認められなくてもTAを示唆する症状を有し, ACR 1990分類基準を満たす症例で且つAAVを満たす群対象とした.
・TA-AAV 50例を抽出. GCA control群100例と比較した.

臨床症状/障害臓器の比較

*有意差を認めるもの

・TA-AAVでは
腎病変や肺, ENT,
神経障害など
小型血管炎で障害される
病変が有意に多い.
・一方でClassic GCAでは基本敵に肺病変, 腎病変やENT病変, 神経障害, 皮膚病変は起こさない. (注: GCAの初期症状として上気道症状や下気道症状はありえる)

TA-AAVのAAVは,
・GPAが62%, MPAが32%, EGPAが6%.
 (これはGCAの割合が多い海外ということも関連があるのか, GPAが多いのか.)
・ANCA陽性例は88%(44例)
 
MPO-ANCA陽性例が28例, PR3-ANCA陽性例が15例であった.

TAB所見

・差があるのは小枝血管炎やフィブリノイド壊死所見だが, TA-AAVでも23%と頻度が低い. GCAで認められる単核球浸潤や内弾性板の破壊などは双方で認められる. 巨細胞もTA-AAVでも認められている.

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