[ 今日の出来事 ] No.05
[ 今日の出来事 ] 2023.06.17(Thu)
5月にチャールズ国王の戴冠式が終わったばかりの英国ですが、君主の公式誕生日を祝う軍事パレード「Trooping the Colour(トゥルーピング・ザ・カラー)」が6月17日にロンドンの中心部にて執り行われました。
現在74歳のチャールズ国王の誕生日は11月ですが、英国王室では伝統的に毎年6月に君主の誕生日を祝っており、在英の人にとってはすっかりお馴染みのイベントです。チャールズ国王は、2歳のころからTrooping the Colourに出席されていたそうです。
こちらの写真は、1951年に行われたTrooping the Colourの時の様子です。若きチャールズ皇太子が、祖母の女王エリザベス2世と叔母のマーガレット王女とともに写っています。
この公式誕生日を「King’s Birthday」または「Sovereign’s Birthday」と呼ばれています。君主が2つの誕生日を持つ習慣は、ジョージ2世統治下の1748年に始まります。ジョージ2世の誕生日はチャールズ国王と同じ11月でしたが、ただでさえ雨が降りやすい英国の気候の中でも天候が一層悪い秋。最悪のコンディションが危惧され、夏に行われる「Trooping the Colour」と祝賀イベントを組み合わされることになりました。以降この伝統は今日まで受け継がれており、女王エリザベス2世のときは6月の第2木曜日を公式誕生日としていました。
写真は、1965年のTrooping the Colourの際、ホース・ガーズ・パレードにてウェールズ近衛兵の制服を着て敬礼する女王エリザベス2世。
トゥルーピング・ザ・カラーの起源
「Trooping the Colour」は、260年以上にわたって行われてきた英国君主の公式誕生日を祝う軍事的なパレードです。毎年6月には、1350人以上の兵士、200頭の馬、300人以上で構成される音楽隊などが、軍隊の規則だった正確な動きや馬術、華やかな合奏を披露します。
このパレードは、チャールズ2世の治世(1660〜85年)に初めて行われたと考えられています。最初にも書きましたが、同パレードは1748年にジョージ2世の公式誕生日の祝賀行事として決定され、1760年ジョージ3世の即位以降、毎年恒例のイベントとなりました。また、参加部隊の近衛歩兵隊は、英陸軍で最も古い連隊のひとつで、イングランドでチャールズ2世が復位し、それまでの共和制から王政に戻った1660年以来、君主の個人的なボディーガードとして任務を果たしています。
カラーの役割
Trooping the Colour の「Colour」とは、英陸軍を構成するさまざまな連隊が持つ旗を指します。Colourには、各部隊の記章や、その部隊が戦い、健闘した歴史的な場所を記した名誉勲章(Battle Honours)がデザインされており、隊によって色やデザインが大きく異なっています。
今のように無線通信などがない時代、兵士たちは戦場で必死に戦っているうちに方向感覚を失い、全然違う土地へ行ってしまうことがよくあることでした。Colourは、兵士が遠くから所属部隊を簡単に見つけられるようにするため、また所属兵士を一致団結させるために重要なもので、戦闘前に若い将校が部隊の前をColourを目立つように動かしながら歩き、兵士たちは自分のColourがどれかを確認できるようにしました。この一連の動きが、今日まで「Trooping the Colour」として残っています。
公式誕生日会の流れ
Trooping the Colour本番1週間前には、最終リハーサルの「カーネルチェック」がおこなわれました。リハーサルの日は、晴天で気温が30℃にまで上がり、熱中症になって倒れてしまう近衛兵が続出してしまったほどでした。そんななか、パレード当日はすこし曇り空だったので、なんとか乗り切れそうな安心感が漂いました。9時ごろから馬車に乗った王室メンバーとともにバッキンガム宮殿を出発しました。
今年の先頭馬車には、昨年にウェセックス伯爵夫人からランクアップしてエディンバラ公爵夫人となったソフィー妃とアン王女の夫であるサー・ティモシー・ローレンスです。
チャールズ国王自身も馬に乗り、バッキンガム宮殿前の大通りを華やかに進まれました。女王エリザベス2世は高齢だったため、1987年以降は馬車に乗ってパレードに参加されていたので、37年ぶりに国王が馬に乗っての参加となりました。
そして、国王のすぐ後ろに近衛騎兵ウェルシュガーズ連隊の大佐であるウィリアム皇太子とエドワード王子が続きました。
近衛騎兵第二連隊の大佐を務めるアン王女の姿も。戴冠式と同じブルーズ・アンド・ロイヤルズの軍服を着用されており、ほんと72歳とは思えないほどカッコイイですね。
昨年12月チャールズ国王から、これまでアンドルー王子が務めていたグレナディアガーズの名誉大佐に任命されたカミラ王妃は擲弾兵連隊、アイルランド近衛連隊の名誉大佐に任命されたキャサリン妃のおふたりも同じ馬車に乗られています。
キャサリン妃のコーデは、アンドリュー・ゲンのドレスとフィリップ・トレーシーの帽子で、どちらもアイルランドのナショナルカラーであるエメラルド色に統一されています。優雅で落ち着いたロイヤルな感じで美しい衣装ですね。
カミラ王妃の軍服風コートドレスの肩章は擲弾兵連隊を表していますが、軍服ではありません。王妃御用達のデザイナーであるフィオナ・クレアによるデザインで、連隊の制服をモチーフにした軍服風なドレスです。
黒いファシネーターも、近衛歩兵連隊の帽子からヒントを得てフィリップ・トレーシーによって作られたもの。こちらも連隊が被っている大きい帽子のベアスキンがモチーフだそうです。ヒールもドレスと似合っていて、とてもお洒落でカッコイイですよね。何処となくシーモア・ドロシーの衣装と系統が似てる気もします。
そしてザ・マルを通って、セント・ジェームズ・パーク前のホース・ガーズ・パレードまで移動。10時からウェルシュガーズ連隊の第一大隊の下士官が軍旗を持ち、整列した兵士の間を行進します。元々この部分が「Trooping the Colour」(軍旗の行進)と呼ばれていました。1400人以上の兵士による行進や400人の音楽隊による演奏などなど大変賑わっていました。その後、ホワイト・ホールを経て、最後に国王ら王室メンバーがバッキンガム宮殿のバルコニーに姿を見せ、フライパストを見守りました。
フライパストには英国空軍と海軍、陸軍から約70機の飛行機が参加しました。ウィリアム皇太子の子供たちも宮殿のバルコニーで儀礼飛行を見守りましたが、ジョージ王子とシャーロット王女が手を振る中、ルイ王子が敬礼をする場面もありました。
そして、宮殿上空で18機が国王のモノグラムである「CR」を形作ると観客から大歓声が巻き起こりました。この「CR」はラテン語でチャールズ国王を意味する「CharlesRex(チャールズ・レックス)」の頭文字です。
---追伸---
国王の即位後、初めての誕生日会でしたが、王室を離脱したヘンリー王子と妻のメーガン妃は欠席されました。英国メディアは、「王室を批判した回顧録の出版などをきっかけに、関係がぎくしゃくしている中での欠席となった」と報じています。そして、戴冠式に続いてアンドルー王子と、娘で公務に携わっていないベアトリス王女とユージェニー王女も出席していませんでした。大事な行事に家族全員が揃わないのは、やはり寂しいと感じてしまうのですが、チャールズ国王はどのような心境なのかお聞きしてみたいところですね。国王の目指すスリム化した王室が今後どのような変化をもたらして行くのか注目です。また英国政府は、チャールズ3世の国王即位後初めての叙勲リストを発表しました。ポピュラー音楽関連では、Soul II Soulのリードシンガーのキャロン・ウィーラー(Caron Wheeler)に、OBE(大英帝国勲章4等勲爵士)が授与されることとなりました。ガーター勲章授与式が楽しみですね。
また6月22日には、チャールズ3世国王陛下の公式誕生日会及び戴冠式の祝賀会が英国大使館で行われました。
スペシャルゲストとして、とにかく明るい安村という日本の芸人が招待されました。
ジュリア・ロングボトム英国大使の前で持ちネタである「安心してください!履いてますよ!」の英語版「Don’t worry , I’m wearing !」を披露し、会場の人々に笑いを届けていました。しかし、このネタが海外でこんなにもウケるとは。非常に興味深いですね。以下は、調べて出てきた面白かった写真を載せました。
参考資料
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