映画『赤毛のアン』(2016)

アマゾン・プライムで『赤毛のアン』(2016)を観た。映画は3作あるようだが、その1作目。

中学時代に朝読書で3冊目まで小説を読んでいる。小説の詳しい内容は忘れたが、この映画は、小説にほぼ忠実で、余計な脚色もなく、覚えのあるセリフなんかも出てきて懐かしい。グリーンゲイブルズの内装やアンたちの衣装もイメージ通り。

ただ、ダイアナは美人だけどカラスのような黒髪ではないし、ギルバートはアンより年上の設定なはずなのに、小さくて幼く見えた。

話の進みは遅く、1冊目の途中まで。

とりあえず、原作と映画を兼ねた感想を。

私が子供の頃は、赤毛のアンのマリラ、ハイジのロッテンマイヤー、小公女のミンチン先生を3大嫌なおばさんだと思ってたけど、マリラは悪い人ではない。少なくとも、マリラとミンチンを同列に並べてはならない。

マリラが初めてアンを見て、「男の子がよかった」と本人目の前にして言うのはデリカシーがなさすぎるけど、働き手になる男の子がほしいという条件での手違いだったのだから、先方のミスであり、マリラが悪いわけではない。アンも知ったことではないけど。

想定外の女の子を引き取るにあたって、金銭的にも、マシュー・マリラの年齢的にも不安だろうし、自分たちが引き受けていいものか?もっと他に最適な家庭があるんじゃないか?と躊躇してしまうのは当然だ。

この映画の最後、マリラがアンを受け入れる決心したときには、いろんな葛藤の末覚悟したんだろうなーって見ていて胸が熱くなるし、涙が出る。

この映画のマリラは、イメージ通りでセリフもそのままなのに、意地悪な感じも冷酷非情な感じもしないのがすごい。素朴で無骨で、でもアンへの愛情と真剣さが伝わってくる人物像で、原作のイメージが上手く表現されていて、良かった。

生活に余裕があるわけでもない、子育て経験もない兄妹が、見ず知らずの孤児を引き取って育てたなんて、無償の愛を感じるし、信じられないことだ。

さらに、マシューマリラは、田舎暮らしで、おそらく田舎から出たこともなく、学もなさそうなのに、学問に理解があって、女の子のアンを大学まで行かせたのもすごい。100年ぐらい前の時代。

あの2人に自然豊かな環境の中、のびのびと育てられたからアンも優秀になったんだろうなと思う。血縁のない男性であるマシューも危ないおじさんじゃなくて、優しい人で本当に良かった。

堅物で頑固だったマリラがアンとの出会いを通して柔軟に、感性豊かに成長していく話でもあるし、あの年で柔軟に成長できるのだから、もともとマリラも素直な人なんだろう。

最初、破天荒なアンに、恥ずかしいから喋りすぎるな、とか、みんなと違う変わったことをしたら私が恥ずかしいというようなことを映画で言ってたけど、田舎だからか昔だからか知らないけど、同調圧力みたいなものって、海外にもあるんだなって思った。

世間体気にする癖に流行には疎いマリラ。アンが袖の膨らんだ流行の服がほしくて、でも、買ってもらえなくて、学校に行ったら女の子たちが袖の膨らんだ服を着ていて、羨ましくて周りに気後れしてしまう気持ち…
わかる。
大人からしたらどうでもいい些細なことだけど、小学生女子からしたら大きな問題で、なんだか昔を思い出してしまう。こういう感覚って大人になると忘れちゃうんだよね。

マリラが自分でアメジストのブローチをなくしたのに、アンに濡れ衣を着せるシーンはいつ見てもアンが気の毒だけど、見つけたら、ちゃんとアンに謝るし、やっぱりそれほど悪い人ではないんじゃないか…?
私の大事なブローチなんだよ!とか言って、もしかしたら、マリラの宝物なのかもしれない、と思うとなんだか微笑ましくもある。

転校生で友達のいないアンにダイアナを紹介したのもマリラだし、なんでよりにもよってそんな育ちの違いそうな(マリラとも合わなそうな)お嬢様を…なんて思うけど、生涯の親友になったのでマリラ先見の明あり。ダイアナを家に招いて、わざわざ手作りのケーキまで用意してアンのために尽くしている。

ちょっと厳格で古風だけど、普通にいいおばさんではないか。私が子供の頃とはこのおばさんへの見方が変わった。

映画の最後、小学校でのクリスマス音楽会のシーンで、マリラが他の保護者たちに混じって嬉しそうにしていたのが、なんだか感慨深い。

マシューマリラにとって、アンという存在が、子育てすることなんてないだろうと思って生きてきた2人へのプレゼントのよう。

赤毛のアンシリーズは、アンの成長物語でもあるけど、子供や愛と無縁だったおばさんとおじいさんが、アンと出会ったことで、人生が変わっていくという話でもあると思う。

小説では、赤毛では幸せになれないと決めつけていたアンが、大人になるにつれて容姿へのコンプレックスに折り合いがつくようになっていくんだけど、暖かい家庭で過ごしていく中で、自己肯定感が育って自分を受け入れられるようになったんだと思う。

自分が大人になったら、視点や感じ方が変わる物語だった。

映画の中のbgmも民族的なサウンドで、きれいな草木や、家具とマッチしててよかった。

胸が締め付けられる。

余談だが、アンは地元を出て街の大学に行くんだけど、外に出て外の男性を知ったのに、結局地元で出会ったギルバートを選ぶあたり、素敵だなと思う(ギルバートにも同じことがいえるけど)。

アンは小学校の先生にいい思い出なさそうなのに、小学校の先生になり、校長にもなったから、すごいなって思う。

そういえば、映画の中でアンの小学校のシーンで国歌を歌ってて、え!イギリス国歌?あー、カナダはイギリスの植民地だったのか!って思った。


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