【5月読書記録②】『美しき愚かものたちのタブロー』
GWに読んだ2冊目の本はこちら。
(全然記録が追いつかない笑)
『美しき愚かものたちのタブロー』原田マハ
史実を元にした仕立てがスゴイ
「松方コレクション」がいかにして生まれたのかを紐解く美術品×歴史もの長編小説!
一気に読んでしまいました。
「松方コレクション」という言葉は聞いたことがあるものの、
この作品を読むまでは詳しくは知りませんでした。
松方コレクション(まつかたコレクション)は、日本の実業家であった松方幸次郎が大正初期から昭和初期(1910年代から1920年代)にかけて築いた美術品コレクション。
第二次世界大戦ののち、
フランスから日本に寄贈返還された美術品の数々は、
誰の手によって集められ、戦禍から守り保管され、
どのような形で日本に渡ったのか・・・
原田マハさんの「小説」だとわかっていながらも、
読み進めるうちにその時代を生きた人たちを目撃した感覚になりました。
実在する「愚かもの」たち
魅力的で「愚かな」登場人物たちが物語をグッと面白くしています。
①田代雄一(架空、主人公)
矢代幸雄という実在する美術史家がモデル。
田代は、フィレンツェで西洋美術を研究するために
日本での仕事と妻を捨てて(妻には見限られて)、
ヨーロッパに渡航するという、わりとガチな愚かもの。
②松方幸次郎(実在)
田代は、フィレンツェに行く途中で松方幸次郎に出会う。
松方は、田代の力を借りてヨーロッパの美術品を目利きし、
戦争特需によって得た巨額の資金をつぎ込んで
膨大な数の美術品を収集する。
③日置釭三郎(実在)
海軍のエリートで、将来を期待されていた日置。
松方と出会ったことによってパリで美術品の番人をさせられることになり、
軍事エリートの道を逸れて、まさに命がけで
戦渦から美術品を守り抜くことになる。
個人的には日置に関するストーリーが不器用で愚直で好きですね。
元軍人がゆえに命令に忠実で、勤勉で、でも女には弱いところとか。
愚かなほど美しい生き様
仕事も家族も放り出すほど夢中になれるものって、
いったいどんなものなんだろう?
田代にとっては美術品そのもので、
松方にとっては美術館を日本に作ること、
日置にとっては、松方から託されたコレクションを守り抜くこと、といったところでしょうか。
ただ単に「好き」という気持ちだけじゃなくて、
「こうしたい!」という志や、使命感や、希望があるから続けられることなのかな。
自分を省みると、まいにち目の前のことをやるだけで
なんとなく生きている感じがして、ちょっと落ち込む…
でも、こういう人たちがいたから今は美術館がたくさん日本にあるし、
素晴らしい絵画や作品が見れるんだなぁと
歴史と平和に感謝する気持ちになる。
歴史から学ぶことって大事だし、知ること自体がおもしろいですね。
ということで、美術品や美術史に詳しくなくても
スイスイ、ぐんぐん読み進められると思うのでおすすめです。