航空券を予約し忘れてイギリスで単独行動することになった話①
私は昔から、忘れんぼうである。
小学校のときの彫刻刀にはじまり、さまざまなものを忘れ、「もう絶対に忘れないようにしよう」と思ってはまた忘れている。
今は「絶対に忘れないようにしよう」という意識を保っていられるのは仕事くらいで、プライベートにはその労力は残っていない。
そんなテキトー忘れんぼう太郎は30歳を目前にしても絶好調で、この度とんでもない忘れ物をしてしまった。
遡ること半年前、イギリスに駐在している友人とテレビ電話をしていると、「駐在もいつ終わるかわからないし、遊びにおいでよ」と誘われた。
たしかになあと思いながら、しっかりものの友人に促されるままに
イギリス行きの航空券を予約し、9月の夏休みにイギリスとスペインに行くことになった。
アクティビティや交通手段の予約などは全て友人とLINEでやり取りをした。
「こっちで何をしたい?」
と友人に聞かれたが、日本ラブで海外に目をむけず、世界史も専攻していない私にとっては、ヨーロッパという広大な地からやりたいことを探すにはあまりに選択肢がありすぎる。
悩んだ末、
「うーん、建物見たいかな」
という何の回答にもなっていない注文をした私に、友人は選択肢を3つに絞って提示してくれたりした。
ヨーロッパよりこの子の心の方が広いのでは?
と調子のいいことを思いながら行く場所をきめ、2人で諸々の予約をした。
しばらく経って、日本の暑い夏に辟易としていた9月、ようやく私の夏休みがやってきた。
いよいよ出発当日。
英語は苦手なので、飛行機は直行便一択だ。
機内では、「家畜のブタのようにまるまる太らされて食べられてしまわないか」という心配をしたくなるほど、
寝て起きるたびに、機内食、軽食、ジュースが提供され、常に満腹で到着までの13時間を過ごした。
無事、食べられることなくイギリスに到着し、友人と合流した。
1日目〜2日目はイギリス
3日目〜6日目はスペイン
7日目〜8日目はまたイギリス
というスケジュールで、楽しい初めてのヨーロッパトリップが幕を開けた。
2日目、別の友達も交えて優雅にアフターヌーンティーをしていたそのとき、事件は起きた。
いや、起きたというより、すでに起きていた事件が発覚した、という方が正しい。
友人が「明日の飛行機のオンラインチェックインをしておこう」
と言って、ブリティッシュエアーのアプリを開き始めた。
よしよし、私もやっておこう、とアプリを開き、ログインをしようとする。
あれ、入れない。
メアドを入れて「パスワード再発行」のボタンを押す。
メールが来ない。
・・・。
頭の中で記憶を呼び起こす。
何の根拠もないけどフワちゃん並とよく言われる素早いフリック入力で、LINEのトーク履歴を検索する。
-----------------
4/14、友人から、
「アプリを入れて、このスペインまでの航空券をとってね」
という連絡を受けている。
4/15、私が
「economyってやつでいいの?」と写メを送っている。
4/15、友人
「どうせ席バラバラだから好きなのでいいよ!」
4/15、私
「ありがとう!」
「ところでこのホテルの予約なんだけど〜」
-----------------
・・・謎は全て解けた。
4/15の私は、お礼だけ述べて飛行機をとり忘れていたのだ。
よくばってホテルの話なんて先んじてしようとするからこんなことになる。
とりあえず今から予約ができるかと思い
「book flight」のページを押す。
当初予定していたフライトは6:00発。
予約が残っていたのは・・16:00発のみ。
終わった。完全に終わった。
え、わたしイギリスに1人で居残り?
一旦落ち着くためにアールグレイを飲もうとカップに口をつける。
「それ入ってないよ笑笑」
と友人がいう通り、もうカップに紅茶はなかった。
それくらい焦っている。
もう白状するしかない。
覚悟を決めた私は、
「ごめん、予約できてないみたい。そして残ってるのが16:00発しかない・・・。」
すると友人は、
「え?!やばいじゃん!!
・・・ちょっと待ってね。
・・・・あ!こっちの飛行機なら5:50発がある!1人で空港で待つ時間もそんなないしこれにしたらどう?
そんなに高くないし!」
やっぱり彼女の心はヨーロッパより広い。
そう確信しながら、飛行機を予約した。
友人「ただ、これは出発の空港が別だから、
1人で向かわなきゃだけど頑張ってね!」
つづく