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シェルター

私にとって自分の家は絶対的に安全な避難場所だ。

何の用事もなければ基本的に家にずっといたいし、外にいる時だって早くお家に帰りたいなぁと思っていることが大半だ。

家の中は安全だ。
誰も私を傷つけないし、私1人の時間の流れ方で時がすぎていく。

どんなにズタボロになった夜だって大好きなお家の中にいれば、息ができなくなるぐらい泣きじゃくってるところとか、ベランダから裸足で真夜中の空を見てるところとか、誰も見ることはないでしょう。


みんなはぐいっと上がったまつ毛にマスカラを塗って、髪の毛はふわふわに巻いて、CHANELのchanceの匂いを振り撒きながらヒールの音を鳴らして歩く私しか知らなくていい。


私の家だけが知ってる私の弱さとか寂しさが嫌いじゃない。この時間が外での私を強くする。


本当に私にとって自分の家というのは大切な場所なのだ。

今まで何回も失敗した。
別れを告げてきた彼に必死に縋りついて別れたくないと泣いた玄関とか、徐々に会いに来てくれる頻度が減った彼の使われない荷物だけが収まったクローゼットとか、渡してた合鍵が返ってきてキーケースに全く同じ鍵が増えてしまったりとか。


自分の大切な居場所であるはずの家に、しょうもない思い出が紐付いて、私がしっかり息をできる場所がどこにもなくなってしまった。私を強くする場所がなくなってしまった。


断ち切ったはずの思い出は、毎秒鮮明に蘇ってきて、しかも日が経つごとに実際の記憶からどんどん美化されていくのだからタチが悪い。


その頃の私はすごく余裕がない人だったと思う。とにかく人生に対して焦っていて、泣き言を言ったり、かと思えば怒ったり、強がったり、変な人だっただろう。


だけど、幸せなことに私は定期的に引っ越しが出来たからその度に深呼吸できるようになった。


それで、あんなに絶望していた人間が生き変わったように元気になれるのだから不思議だな。人間の脳ってつくづく面倒くさい。


今の家では、後で思い出した時、幸せだったな、私に必要な時間だったなと思える記憶しか残したくない。


だから私は、なんやかんや理由をつけて本当に信頼できる人しか家に呼ばない。家では自分の好きなことを沢山する。好きなものを沢山食べて、飲んで、お気に入りの曲を流して、好きな映画を見る。夜風に当たりながら、日向ぼっこをしながら眠りにつく。



ずるいかな。
もう26歳、若くない。
私なりの、外で強い自分でいるための生き方は思ったより楽しいし、新たな自分に会えて嬉しい✌️



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