
#シロクマ文芸部 ハチミツはいかが bar渚2
「ハチミツは、甘~いのがお好き、とろ~りとろとろ🎵」
bar渚の貴美子は鼻歌交じりでカウンター内のコンロに向かっていた。ついさっき、養蜂家の吉森さんから極上のハチミツをいただいたからだ。
「そうだわ、ホットケーキ焼こうかしら」棚からホットケーキミックスを取り出し、卵、ミルク130ccを混ぜ合わせて、ボールの粉と混ぜ合わせた。
「フライパン、フライパン温まったら
ぬれたふきんでちょいと冷やす🎵」

貴美子は上機嫌で手早くホットケーキを焼き上げた。
「ハイ!出来上がりました~。」

美味しそう

「いただきま~す」
ちりり~ん、ガチャと店の扉が開いた。
貴美子は振り向いて目を輝かせた
「テッちゃん、久し振り、この頃顔見せないから気になってたのよ、どうぞ座って、ホットケーキ一緒に食べましょうよ」
テツヤは素直に従った。
「今日は海が綺麗だから、バイクで海岸沿いを平戸まで走らそうかと」
貴美子はミルクティーを飲みながら
「そうしたら、店に私の黄色いミニが止まってたから顔見せに来てくれたのね」
二人は窓から見える海を眺めながら
波の音を聞いていた。
貴美子は言った
「砂浜に打ち寄せる波の音、母親の胎内で聞いていた心音と似ているんだって、だから心身が壊れそうになったら海に来ると良いそうよ」
テツヤは頷きながら、
「本能的に感じることがあるよ、確かにリフレッシュするよね」
貴美子は思い出したように
「そうそう、テッちゃん西村由紀恵のピアノ好きなんだよね、私も昔よく聞いていたの思い出して、ほら」

「聞かせましょか、私はスマイルベストの中の 『手紙』が特に好きかな」
https://youtu.be/j0MBF58AKAg?si=qruQfCOOGAjNV4IM
「良いよね…、」
「良いわよね、しんみりしちゃう」
「私もさぁ、いろんな人(主人も含めて)今まで見送って来たじゃない、誰しも行き着く先は同じ、遅いか早いかの違いだけでね、だけど生きている間は千差万別、何時だってやり直せるし、新しい出逢いも有るかも知れない、生きているって素晴らしいことなのよ、
だったら、精一杯生きてみたいと思わない?」
テツヤも海を眺めながら
「そうだよなぁ…、」
テツヤも人生の岐路にあり、悩みの中にいた。
貴美子はにっこり笑って
「平戸から、その先の生月島に渡ってみたら綺麗よ、なんなら沖縄の海もみてきたら、コバルトブルーの輝く海、何で小さな事に悩んでたんだろうって、考え方変わるかもよ」
テツヤも席を立ち、
「ホットケーキ、ご馳走さま、ハチミツパワーでひとっ走りしてきまーす」
「そうね、気を付けて行ってらっしゃい、また顔見せてよね」
「じゃあ!」
テツヤは、バイクにまたがり手を振って行ってしまった。
貴美子はひとりカウンターで海を眺めながら、今度来るときは晴れやかな顔をしてテツヤがドアを開けてくるような気がした。
bar渚 誰かの心の寄り処であり続けます