#7 2022/10/03(ジャズ考察)
Flor de lis / Andrea Motis
最近、スペイン人のトランペッター、Andrea Motisに激ハマりしている。最初に彼女の演奏を聴いたのは1年ほど前、Flor de lisというDjavanの曲をジャズでアレンジした演奏動画をYoutubeで聴いた。これがとにかく良い。イントロはラテンのリズムでアップテンポな曲が始まり、すぐにIgnasi Terazzaの軽快なピアノが入る。次にAndreaのハスキージャズボイスの"Valei me deus ~"というイントロの歌詞が続く。軽快な音を奏でるリズム隊に目をやると、Joan Chamoroが微笑みを浮かべながら楽しそうにウッドベースを奏でる。今にも釣られてにやけてしまいそうな気持ちになってしまう。他のメンバーも楽しそうにリズムに乗り各々の音を奏でている。ここまで楽しそうに演奏するジャズバンドはあまり見たことがない。ジャズの巨匠として有名なBill Evans, Oscar Peterson, Thelonius Monk, Mccoy Tynerらの奏でるジャズはもちろん好きだが、思わず体が乗ってしまうラテン系のジャズ(ボサノバと呼べるのかは不明)はもっと良い。ところで、Flor de lisはAndreaがボーカル/トランペットを担当している動画が一番好きだが、次に好きな動画はLua Amarelaがボーカル/トロンボーンを務めた演奏である。Lua AmarelaはAndreaと同年代のトロンボーン奏者であり、Joan Charemolo率いる楽団のメンバーの一人だと思われる。実はAndreaもコーラス/トランペットとして参加しており、Luaとのハモリがまた心を高鳴らせてくれる。
Flor de lisという楽曲について
Flor de lisはもともとDjavanという70-80年代のブラジルの音楽会を牽引した音楽家によって作曲された曲であり、Joan Charemorroらの演奏するラテンのリズムからは想像ができないほどゆったりとした曲調の楽曲である。したがって、オリジナルのFlor de lisと比べるとJoan CharemorroらのFlor de lisはかなり早いアップテンポなアレンジに仕上がっているということになる。話は逸れるが、スペイン人の話すスペイン語とブラジル人の話すポルトガル語は同じラテン語派の言語としてかなりの部分で共通する文法・語彙を有していることが知られている。一方で、イントネーションに関してはスペイン語に比べるとポルトガル語は井上ジョーさんの動画のようにかなり訛ってまったり聞こえるため、スペイン人からするとブラジル人の話すことばは言うならば訛りまくりの田舎人の言葉のように感じるらしい。Joan Charemorroらのアレンジはこの言語の関係性を反映したようにポルトガル語の世界で作曲されたFlor de lisをかなり早口な風に作り帰ってしまっていることが伺える。かえってスペイン語世界で編曲されたFlor de lisは、Andrea Motisという美貌を兼ね備えた最強ジャズ歌手にどハマりし、華やかな魅力に溢れる演奏へと進化を遂げたのだと考えられる。
話は元に戻るが、Flor de lisという楽曲の邦題は「百合の花」である。歌詞はこちらのサイトに掲載の通り、あからさまに儚く物憂げな雰囲気を醸し出している。曲調は歌詞に馴染んだものになっており、サビの部分はなんとも言えないが、大切なものを失った男の自省と嘆きの雰囲気をどこか感じさせる。サビの部分だけ以下に取り上げてみたいと思う。
サビの歌詞
E o meu jardim da vida ressecou, morreu
Do pé que brotou Maria
Nem margarida nasceu
私の人生の庭園は、すっかり枯れ、死んでしまいました。
マリア様が生まれた茎の元には、
マーガレットの花すら、咲きませんでした。
ここのサビのコード進行は次のサイトの通り、C7→ FM7→ Bb7→ Em7→ A7→ D7→ G7…となっており、これは五度圏(Circle of fifth)に則った比較的簡単なコード進行だと思われる。このサビのコード進行の部分が個人的には好きで、Andreaの歌声ver.のサビが脳裏に焼き付いている。
I didn't tell them why / Andrea Motis
話は変わるが、最近はFlor de lisから始まり、あまりにもJoan Charemorroバンドが羨ましかったため、Andrea Motisの他の楽曲にも目を向けてみた。そこで発見した楽曲がI didn't tell them whyである。これは個人的にはAndreaの歌声が一番映えている曲なのではないかと思っている。また、ここでも同じにJaon Charemorroバンドのお馴染のメンバーが軽快なサウンドを奏でており、いつも通りJoan Charemorroの表情は微笑ましい笑。加えて、この動画ではAndreaのトランペットがビッグバンド並みに映えている。そう、全てにおいてこの楽曲は彼女の性質に適切したものだと断言できる。(後ろのおじさんたち、白髪にジャケット、カッコ良すぎる。。。)
Joan Charemorroについて
ところで、このJaon Charemorroという人はどんな人なのだろうか?Wikiで調べてみると
とある。どうやらSant Andreu Jazz Bandの創設者で、Andrea Motisを含む若手ジャズミュージシャンを育てたプロデューサーのような方なのだと思われる。
より詳しい詳細は下記が参考になりそう。
こちらのサイトのインタビューでJoanの理念的なアイデアが掲載されていた。
自らが教えた生徒の成長を心の底から喜んでくれる最高の教師であるとともに、どこまでも自身が成長しようと努力を弛まない謙虚な姿勢を持っている素晴らしい方なのだと感じた。いつか自分もジャズミュージシャンとして成長し、こんな素敵なジャズミュージシャンの方々と共演してみたいものだと妄想に耽った今宵でした。
次回はJoan Charemorroの半生を調べてみたいと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?