指す将順位戦7th 振り返り vs最速キメさん

指す将順位戦7thにて、B級3組に初参加するしらがと申します。
今回の記事では、指す将順位戦7th3回戦 (vs 最速キメさん) を振り返ります。

今回の対局の内容については、対戦相手である最速キメさんの方でも記事を書かれています。
未読の方がいらしたら是非読んでみて欲しい!凄いから!
指す将順位戦7th自戦記 B級3組 3回戦 (vs しらが5級[1054])|最速キメ|note

note 最速キメさん

また、今回は最速キメさんが書いた本局の振り返りを読んだ上で、自分視点の振り返りを書いています。
後出しの見解となってしまうこと、お許し下さい。

1. 対局前

1-1. 最速キメさんについて

最速キメさんは、過去に指す将順位戦に参加した記録は見られなかったが、ゆかなか竜王戦や月光戦等、他の大会への出場経験があるご様子。
今期の指す将順位戦では1回戦でえるさんと対局し、相掛かりの出だしから横歩を取る展開で勝利。
2回戦ではルルーさんと対局し、ノーマル四間飛車相手に居飛車穴熊で勝利。
将棋倶楽部24の東京道場には今月の棋譜があり、直近10局の戦績は8勝2敗。

勢いがあることは確か。
ただ内容を見るに、勢いだけで片付けられるものではないような…

棋譜は将棋倶楽部24の東京道場の7月分を中心に目を通した。
本格派の居飛車党で、棋理を意識して妥協の無い指し手を選ぶ印象。
先手番だと▲26歩から▲76歩、後手番だと△84歩が、どうやら基本の出だし。
最速キメさんの自戦記からも分かるが、どの戦型に対しても自分の形を用意しており、無防備で相手の土俵に上がらない。
月並みな言葉ではあるが、まさに『隙が無い』といった感じ。

個人的に目を引いたのはゴキゲン中飛車相手に左側で位を取っていく将棋で、先手番だったら▲65歩、▲66銀 (右銀) と構える指し方。
いつかシレっと真似させてもらいます。

また、横歩取り (先手番) の情報が少ないことも気になった。
最速キメさんがどんな横歩取りを指すのか、そもそも普通に横歩を取るのか興味が湧いてしまう。
実際に先手で横歩を取った将棋が見れたのは一局のみ。
ただし、これは後手が△33角としなかったためあまり参考にはならなかった。
んー、一応横歩は取るってことで良いのかな?…

この程度の情報収集で作戦を立ててみたが、実は全く持って勉強不足!
当日は、見落としていたところが配点80の問題として出題されることとなる。※誇張表現です。

1-2. 対局前の準備

先手番を持ったら矢倉、後手番を持ったら横歩取りをメインに作戦を考えた。


①しらが先手:▲76歩△84歩
 この場合は矢倉を目指す。
 最速キメさんの対矢倉の棋譜を見ると、流行の後手急戦を採用しているものがあったので以下の局面を想定。

こちらは一歩手持ちにしたことを主張にしたい。
展開ははっきりしないが、6筋の攻めを一番に警戒。
この急戦策は自分の棋力帯でもこれから流行していきそう。

②しらが先手:▲76歩△34歩▲26歩
 この場合は横歩取りを目指す。
 最速キメさんが後手でこの出だしにすることは無さそうなので、想定局面は無し。
 もしこうなったら、消去法で雁木にされると予想。


③最速キメさん先手:▲26歩△34歩▲76歩
 この場合は、自分が後手で横歩取りに誘導する。
 最速キメさんがまともな横歩取りを指すところは確認できてないが、果たしてどういった展開になるのか…
 勝手ながら、青野流にならないかなーと期待。
 もし実現したら以下の局面を目指す。

一時期プロの間で流行。個人的に好きな形。
何故流行ったのか。何故今指されてないのか。
無知なしらがに、どなたか教えて欲しい。

③最速キメさん先手:▲26歩△34歩▲25歩
 この場合はノーマル三間飛車を採用。
 過去の最速キメさんの記事だと、ノマ三相手には一直線銀冠を用意していたご様子。
 将棋俱楽部24では対ノマ三の棋譜を確認できなかったが、その記事を参考に以下の局面を想定。

早めの△35歩で、隙あらば石田流を目指す。
これに反応して右銀が上がってきた時のために、
出口流の対策をおさらいしておく。


本番の用意はざっとこんな感じ。
ただ、今回は作戦家の最速キメさん対策に以下のような番外戦術 (?) も取り入れた。
『将棋俱楽部24に色んな戦型の棋譜を残せば、情報量がまとめられず準備を妨害できるんじゃなかろうか作戦』

最速キメさんなら、一つ一つ丁寧に漏れなく対策を考えようとしてくれるはず!
どれだけ作戦を用意してくれるのか見せてもらおう!
もはや妨害ではなくただの好奇心です。

持ち得る手札を全て切って、できるだけ色んな棋譜を用意してみたものの、最近指してない戦型は明らかにお粗末な序盤になってしまった。
苦手を晒して逆効果だったかな。
また、『しらが5級』として本番に臨むため躍起になってレートを上げた。

2. 対局本番

先手最速キメさん、後手しらが。
戦型はやさい式相掛かり。

2-1. 7手目 ▲58玉

恐らくここがやさい式相掛かりの基本図

なんだこの玉上がり!
これまで将棋指してて初遭遇!
分からないけど、無難に指せば横歩取りに合流するものなのか?…
無難にいこうと考えて、次に指したのは△32金。

 最速キメさんの自戦記にて高頻出の戦型『やさい式相掛かり』。
 絶対に知っておかなきゃならない局面。
第15期月光戦自戦記 C級2組 ダイジェスト|最速キメ|note

note 最速キメさん

2-2. 21手目 ▲48金

後手が悔しいようにしか見えないが互角の局面。
▲48金はAIの推奨手でもあり、5筋からの攻めを見越したバランスの良い形。

大丈夫かこの局面!?
これ、本だと「先手成功」とか書かれるやつ?
こっちの主張って何?

既に消費時間に2分42秒の差が開いている。
途中どこか抜け道が無いかと探ってたが、結局この局面になってしまった…
中々にパニック状態。

そしてそこに追い打ちを掛ける謎の▲48金。
その金も知らん!
さらにパニック状態。

一応AIの評価値は互角らしい。ただ改めて見ても後手で選びたい進行ではない。

8手目からここまでの進行は、△3二金 ▲2四歩 △同歩 ▲同飛 △8六歩 ▲同歩 △同飛 ▲2二角成 △同銀 ▲7七角打 △8二飛 ▲8三歩打 △5二飛。

どうやら、▲58玉に対して後手がいつもの横歩取りの指し手を選ぶと、この局面に陥ってしまうっぽい。
先手が▲78金と上がってないことから、後手は△8六歩を急ぐ必要が無かった。というのが今の自分の見解。
また、▲58玉に対して寧ろすぐに△86歩、という手順もあるらしい。
血気盛んが過ぎる…

2-3. 29手目 ▲35飛

ここでは△53銀がAI推奨手。
2枚銀で先手の飛車を圧迫させさがら中央を手厚くできると良い。

この局面で真っ先に警戒したのが▲85飛。
これは読みではなく本能によるもの。
2回戦 (vsうぃるさん) のトラウマが蘇る!

ただし今回は△53銀としておけば、▲85飛から▲22歩成も怖くなかったよう。
(△52飛車の横利きで受かってる)

▲85飛を恐れすぎて指した手は△55歩。
この手をきっかけに、最速キメさんが完璧にペースを握ることとなる。
良くない負の連鎖で視野が狭くなっている。

2-4. 31手目 ▲22歩打

△同銀 ▲55角に△同飛とできなくなっている。
これもAIの推奨手。

△55歩に対し、▲同角でも▲同飛でもなく▲22歩打!
どう対応しても後の大駒交換で分が悪い。
いやーお見事。指されてみればこの一手か。
自分が弱いのはともかく、最速キメさんの手が鋭すぎる!

2-5. 41手目 ▲37桂

後手は既に妥協できる局面では無い。
苦しいながらも△29飛成で勝負するしかなかった。

結局分の悪い飛車交換に応じてしまい、はっきり劣勢となってからのこの局面。
ここで△24飛と指したが、これは桂馬の攻めを呼び込んでしまっただけの超緩手。
△29飛成に▲25歩打を恐れていたが、△39竜の銀取りを見せて勝負に行かなければならなかった。
観戦者の方々も、この△24飛に違和感があったよう。
自分に生じてる感覚のズレに気づけたのはかなりの収穫。
指す順の醍醐味を堪能してます。

2-6. 48手目 △52飛車打

一気に後手玉が寄ることは無くなったが、
先手の攻めが途切れないため先手勝勢。
後手は大駒コンプリートだが、先手玉は安定してて飛び道具にも強い。

先手は大駒をぶっちぎりながら鋭く迫る。
こちらは将棋を終わらせないよう、必死に受ける。

ここでは詰めろを受けただけの△52飛打。
かなり悔しいが、ここを凌ぎきれば回復できると期待していた。

この△52飛打に対し、最速キメさんは4分以上の長考。
消費時間に5分ほど差があったので持ち時間逆転には至らなかったが、それにしても大長考!

ほほう…

対してしらがは、一気に後手玉が寄る筋は見えなくなったことで、急場を凌いで長い戦いに持ち込めたと踏んでいる。
なんなら形勢も持ち直したと思っていた。
『もしかしてこの大長考は、困っているのか?』

長考の真相については最速キメさんの自戦記を読んでもらいたいが、どうやらこの局面を先手良しの勝負所と見定め、決め手を探していたとのこと。
それもそのはず。既にAIは先手勝勢と示す局面。
どうやら後の▲82金打 △同金 ▲82歩成 で、後手に良い受けが無く、反撃の手も無いということらしい。 

明らかにこの将棋で、自分だけ置いてけぼりを食らってる。

2-7. 99手目 ▲68金

先手から王手馬がある局面だが、AIの推奨手は△22金打。
もはや手の良し悪しを評価できる局面じゃなくなっている。
紛れを生む指し手を選びたい。

着実に追い込まれていき、どうしてもこちらにチャンスが巡ってこない。
先手玉が鉄壁で、カウンターが入らないのが辛い。
それでもこちらは、99に眠る馬に全てを委ねていた。

あの48手目から50手ほど進んでこの局面。
ここで自分が指した次の手が△34歩打!

▲29飛打の王手馬があるぞー!

何を受けたか分かってないが、何かを受けようとした△34歩打。
次に▲29飛打で綺麗に王手馬が入り、希望が絶たれた。

2-8.124手目 ▲64馬 (投了図)

△53金打 ▲同馬 △同歩 ▲22金打が一例で詰み。

最後は馬捨てで鮮やかな詰み。お疲れさまでした!

3. 対局後

VS 最速キメさん。結果は負け。

3-1. 本局の振り返り

序盤は7手目▲58玉に対しての警戒心が足りておらず、取り合えずの△32金から△86歩は迂闊だった。
冷静に警戒していれば、△88角成等で局面を落ち着かせる方針も選べたはず。

時間を使い過ぎた点は、今回に関しては仕方が無い。
完全に相手の術中にハマっているが、直ぐに負けてしまうよりはマシだと、諦めるしかない。

中終盤は良いところが無かったが、途中『受けきれた』と判断していたのが相当にマズい!
持ち時間が15分もあれば、普段は切れちゃう細い攻めも繋げられてしまう。
最速キメさんの4分の大長考からは貫禄が感じられ、時間の使い方におけるメリハリも参考になった。

3-2. 振り返っての感想

またもやあっさりと負けてしまいました。
特に今回は、相手が準備した形に自分から飛び込んで、ごめんなさい何も分かりませんという将棋だったので、行儀が悪かったなと反省してます。
『やさい式相掛かり』は、自分が相掛かりを指さないということで、名前で完全にノーマークにしちゃってました。本当に迂闊…

棋力も去ることながら、やっぱり作戦の立て方に大きな問題がある。
これでもちゃんと自覚はあります。

今までこういう反省の機会すら無かったことを思えば、かなりの成長。
今後も、痛い目を見ていくのは覚悟するしかなさそう。
伸びしろしかない!

最後に最速キメさん、対局ありがとうございました!
正直対局前から格上だと思ってましたが、実際に対局&感想戦を交えて予想以上の差を痛感しました。

そして本局の自戦記、凄く面白かったです!
何もかも見習うことだらけでした。
今回、しらが対策をどこまで立ててもらうのかが楽しみだったのですが、まさか全て用意されるとは!
こっちはもう、これ以上指せる戦型増やす余裕ありません!

またいつか対局できると嬉しいです。

おしまい。


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