指す将順位戦7th 振り返り vsまついさん

指す将順位戦7thにて、B級3組に初参加するしらがと申します。
今回の記事では、指す将順位戦7th 5回戦 (vs まついさん) を振り返ります。

1. まついさんについて

まついさんは、指す将順位戦に何度か参加されており (おそらく第三回から?)、過去どんな対局を経験されてきたか気になるお方。
アカウント名の末尾には絵文字が付いていて、見るたびに絵文字の種類が変わっているのが面白い。
その日の天気が関係してるのかな?

また、今期B3の途中成績を動画で定期的に教えてくれる凄い技術の持ち主。
動画では成績が分かりやすく把握できるだけでなく、次の対局に向けてのモチベーションも上がってくる。
結構大変だと思うのですが、非常にありがたいです!

まついさんの今期の指す将順位戦は、これまでの戦績が2勝2敗。
内容は下記の通り。

・デメテルさん戦 負け (三間飛車を採用 vs エルモ右四間)
・JUNさん戦 勝ち (三間飛車を採用 vs 天守閣美濃)
・うぃるさん戦 負け (三間飛車を採用 vs へなちょこ急戦)
・かのいさん戦 勝ち (四間飛車を採用 vs へなちょこ急戦)

棋譜は将棋倶楽部24の大阪道場の2021年以降のものに目を通した。
おそらく指す将順位戦の過去棋譜のみ。
棋譜を見るとほとんど三間飛車、たまに四間飛車、囲いは安心の美濃囲いという純度の高そうな振り飛車党。

序盤の駒組にかなり気を遣われている感じで、相手の形に対応して捌き方を変えているという印象。正に振り飛車のお手本。
居飛車からのありとあらゆる仕掛けに対して、あの手この手での捌きが見られた。
これは事前の作戦なのか、その場の読みなのか、感覚なのか、スペシャリスト特有の指し回しなのだと思う。

特に左銀の扱いに幅を持たせてる感じもしており、同じ三間飛車を指す身としてとても勉強になりました。

また、終盤にはドラマを生むことでも知られており、一部では『まついワールド』とも評されている。
※これについては詳しいことは分かっていません…

棋譜を見れば見るほど、掴みどころがあるようで分からない。
戦型を絞れるので作戦は立てやすいと踏んでいたが、そんな単純なものじゃないと考えが改まった。

2. 事前想定

三間飛車にはエルモ急戦、四間飛車には居飛車穴熊を採用。

自分の勝手な見解だが、
三間飛車は、居飛車に穴熊に組ませても戦える。
四間飛車は、居飛車に穴熊に組まれると厳しい。
と考えている。

理由は、持久戦において三間飛車は真部流や石田流の組み換えが目指せるのに対し、四間飛車は駒組の発展性に乏しそうだから。
(鈴木先生ごめんなさい。何も分かってない雑兵の戯言です)

よって、
三間飛車には急戦で行きたい!
四間飛車には穴熊に組みたい!阻止されそうなら無理はしない!
が今回の方針。

2-1. 先手番 vs 三間飛車

▲56歩を突くエルモ急戦

ここまではありそう。
ここから後手は方針が分岐しそう。
先手は▲57銀右の形を目指す。

2-2. 先手番 vs 四間飛車

こちらは居飛車穴熊を採用。
特に工夫も無いので、想定局面は無し。
穴熊に組ませてくれるのか、阻止されるのか。

2-3. 後手番 vs 三間飛車

△54歩を突くエルモ急戦

ここまではありそう。
ここから先手は方針が分岐しそう。
先手番での作戦と同じ駒組だが、場合によっては△53銀右は保留するかも。

2-4. 後手番 vs 四間飛車

やはりこちらは居飛車穴熊を採用。想定局面は無し。
穴熊に組ませてくれるのか、阻止されるのか。
超序盤に端歩の挨拶があったら、お返事して美濃にする予定。

3. 対局本番

先手しらが、後手まついさん。
戦型は、居飛車 対 ノーマル四間飛車

3-1.  20手目 △74歩

知らないタイミングでの歩突き。
実はソフトの推奨手。

三間飛車を本命視してたいたが四間飛車に。
自惚れではあるが、『しらがが三間飛車を指すから』という理由での四間飛車採用は全然有り得るかも。

局面は序盤の駒組だが、不気味なタイミングでの△74歩。
藤井システムとは違った歩突きだと思うけど…
取り合えず、後手からの仕掛けは流石に無いと判断してこちらは▲88玉。

3-2.  32手目 △62金

こちらの穴熊が完成しかけてるが、評価値は互角。
穴熊に過信は禁物…

20手目 △74歩の正体は、四間飛車ミレニアムだった。
どうやって美濃囲いの沼から抜け出せたのか!
美濃囲い党 (振り飛車時) からすると信じられない!

これがまつい流の居飛車穴熊対策ということかな?
まついさんの対居飛車穴熊情報は少なかったので興味はあったが、ミレニアムは予想外で驚いた。

対振り飛車ミレニアムの経験はほとんど無い。
守りと攻めのどちらに手を掛けるべきか、スピード感はどれくらいか、局面の急所がイマイチ良く掴めない。
そんな迷いの中で放った次の手は、居飛車の税金▲16歩。

3-3.  44手目 △62飛車

ミレニアムの特権と言えそうな攻め形。
△62飛車と△73桂が、自然に6筋攻めに参加できている。
ただし先手も▲86角で備えが可能。

囲いあってから3筋で1歩交換を果たし、後手が△62飛と指しての局面。後手の攻めはかなり迫力のある形だが、こちらは右桂を跳ばしたくて仕方がない。

『次に△65歩から攻められるのは分かってますよハイ。
まあでも何とかなるやろ穴熊だし!
それより早く右桂を跳ねさせてくれい!』

この楽観は大袈裟だが、それだけ右桂の跳躍に目が眩んでいた。

ただし、やはりここでは先に▲86角とし、その後に余裕を持っての▲37桂としなければならなかった。
我慢が足りずに結局▲37桂と指してしまった。

3-4.  47手目 ▲65歩

まず△62飛が偉大である。
▲86角としなかった罪、
および相手の駒台に1歩乗せた罪は大きい。

△65歩の仕掛けに対し、簡単に▲65同歩としてしまい後手の攻めが繋がる形に。
▲65同歩については、下図の局面で先手有利を覚えていたのでそれを参考に指してしまった。
また、前回の熊田さん戦でも下図と似た攻め筋が発生し、その際も自分は同歩と応じて上手くいったので、きっと良いはずと妄信していた。

【参考局面①】

相手が△42飛車型で美濃囲いの場合は、
▲65同歩で先手有利。


また本譜△65歩の仕掛けに対して、▲65同歩に変えて▲45桂がソフトの推奨手。
それから後手が駒を全部ぶっちぎってくると下図のような局面になる。
正直、これだと先手を持ちたくない。

【参考局面②】

互角ながら△57角打ちがきつい。
先手としては実践的に選びたくない変化。


色々ありつつ劣勢となった本譜の▲65同歩。
綺麗に転ばされてる。

3-5.  56手目 △77桂成

▲同金に△85桂打、▲78金なら、手順に金を収納できて
相手の攻めを遅らせることができた。

まついさんは受けの棋風と認識していたが、本譜では鋭い攻めが目立つ。
47手目 ▲65同歩によって、角交換から先手陣に角を打ち込まれることとなり、こちらだけ一気に終盤戦に突入。

これはいつもの負けパターン!!

ここでは既に形勢を悲観していたが、▲同金でまだまだ勝負できてたっぽい。
本譜ではここで▲同銀左と取ってしまい、67の金は格好の獲物として晒されることとなった。

最近は押され気味の時に受けの手を間違えるのが一番悔しい。

3-6.  70手目 △74飛

後手は 6 ,7筋の両方に歩が打てるのが大きく優勢。
紛れを生む意味でも、次は▲31飛成が勝った。

とにかく後手の飛車だけは成りこませないよう受け駒を足すが、まついさんの攻めを繋ぐ技術に圧倒され被害は拡大する一方。
ここで将来の守りに期待して▲53角成と馬を作ってみたが、やはり悠長過ぎた。
ここからは、いつものひたすら受けるだけの展開に突入。トホホ…

3-7.  98手目 △66角打

鋭い角打ちが成立。
後手玉に王手が掛からない形なのも大きい。

飛車を取れればなんとか…と思っていた矢先の角打ち。
指がしなる一手。

3-8.  133手目 △77金打 (投了図)

▲9九玉 △8八金打 ▲同銀 △8九飛打で詰み

ここで投了。
最後になんとか▲31飛成は指せました。

4. 対局後

VS まついさん。結果は負け。

4-1. 本局の振り返り

今回は居飛車穴熊 vs 四間飛車の、△65歩の仕掛けについて新たな見解を得ることができた。
そして『四間飛車は、居飛車に穴熊に組まれると厳しい。』という見解は改める余地が多いにあることに気づいた。

まついさんのミレニアムから△62飛車の構想には面喰ってしまった。
結果、致命的なミスを犯して挽回もできなかったが、得るものが大きかったので良しとしたい。

でもやっぱり▲86角を指せなかったのは後悔…

4-2. 振り返っての感想

今回は四間飛車に対して2連続の居飛車穴熊採用となったため、もしかしたらまついさんに作戦を読まれて術中にハマったのかもしれません。
こういうのも良い経験になっていると捉えています。

ただ、やっぱり『勝つための作戦』を立てる技術が全く磨けてない問題にそろそろ向き合おうかとお悩み中。
今までは『負けないための作戦』しか考えてなかったので。
そしてやっぱり負け越すと降級が怖い (>_<)

最後にまついさん、対局ありがとうございました!
四間飛車ミレニアムが、美濃囲いとあれほど毛色が違う戦法になるとは思いませんでした!
完全にやられましたー

今回のミレニアムはやっぱり居飛車穴熊を想定しての対策だったのでしょうか?
もし△65歩の仕掛けに、▲同歩と応じさせるのが作戦だったとしたら鳥肌ものです!

またいつか対局できると嬉しいです。

おしまい。

4-3. 棋譜

開始日時:2022/08/11 21:00:30
棋戦:R対局 持ち時間15分
手合割:平手
先手:su0625(1002)
後手:yms125(639)
手数----指手---------消費時間--
1 7六歩(77) ( 0:06/00:00:06)
2 3四歩(33) ( 0:05/00:00:05)
3 2六歩(27) ( 0:02/00:00:08)
4 4四歩(43) ( 0:06/00:00:11)
5 2五歩(26) ( 0:08/00:00:16)
6 3三角(22) ( 0:02/00:00:13)
7 4八銀(39) ( 0:06/00:00:22)
8 3二銀(31) ( 0:05/00:00:18)
9 6八玉(59) ( 0:03/00:00:25)
10 4二飛(82) ( 0:02/00:00:20)
11 7八玉(68) ( 0:03/00:00:28)
12 6二玉(51) ( 0:01/00:00:21)
13 5八金(49) ( 0:02/00:00:30)
14 5二金(41) ( 0:03/00:00:24)
15 5六歩(57) ( 0:01/00:00:31)
16 4三銀(32) ( 0:03/00:00:27)
17 5七銀(48) ( 0:01/00:00:32)
18 7二玉(62) ( 0:03/00:00:30)
19 7七角(88) ( 0:02/00:00:34)
20 7四歩(73) ( 0:12/00:00:42)
21 8八玉(78) ( 0:06/00:00:40)
22 7三桂(81) ( 0:04/00:00:46)
23 6六歩(67) ( 0:03/00:00:43)
24 6四歩(63) ( 0:06/00:00:52)
25 7八金(69) ( 0:03/00:00:46)
26 8二銀(71) ( 0:02/00:00:54)
27 9八香(99) ( 0:06/00:00:52)
28 7一金(61) ( 0:03/00:00:57)
29 9九玉(88) ( 0:01/00:00:53)
30 8一玉(72) ( 0:04/00:01:01)
31 8八銀(79) ( 0:03/00:00:56)
32 6二金(52) ( 0:04/00:01:05)
33 1六歩(17) ( 0:09/00:01:05)
34 9四歩(93) ( 0:12/00:01:17)
35 3六歩(37) ( 0:22/00:01:27)
36 5四銀(43) ( 0:11/00:01:28)
37 6七金(58) ( 0:25/00:01:52)
38 7二金(62) ( 0:00/00:01:28)
39 3五歩(36) ( 0:40/00:02:32)
40 同 歩(34) ( 0:50/00:02:18)
41 3八飛(28) ( 0:02/00:02:34)
42 4五歩(44) ( 1:39/00:03:57)
43 3五飛(38) ( 0:04/00:02:38)
44 6二飛(42) ( 0:46/00:04:43)
45 3七桂(29) ( 1:43/00:04:21)
46 6五歩(64) ( 1:45/00:06:28)
47 同 歩(66) ( 1:18/00:05:39)
48 7七角成(33) ( 1:06/00:07:34)
49 同 桂(89) ( 0:03/00:05:42)
50 6九角打 ( 0:15/00:07:49)
51 7九金(78) ( 0:30/00:06:12)
52 5八角成(69) ( 0:27/00:08:16)
53 6八銀(57) ( 0:53/00:07:05)
54 6五桂(73) ( 0:39/00:08:55)
55 6六歩打 ( 1:18/00:08:23)
56 7七桂成(65) ( 0:26/00:09:21)
57 同 銀(88) ( 0:05/00:08:28)
58 8五桂打 ( 0:59/00:10:20)
59 8八銀(77) ( 0:31/00:08:59)
60 6五歩打 ( 0:07/00:10:27)
61 同 歩(66) ( 0:21/00:09:20)
62 同 銀(54) ( 0:13/00:10:40)
63 6三歩打 ( 0:21/00:09:41)
64 同 飛(62) ( 0:07/00:10:47)
65 5五桂打 ( 0:12/00:09:53)
66 6四飛(63) ( 0:13/00:11:00)
67 8六角打 ( 0:06/00:09:59)
68 7五歩(74) ( 0:27/00:11:27)
69 同 角(86) ( 0:29/00:10:28)
70 7四飛(64) ( 0:09/00:11:36)
71 5三角成(75) ( 0:34/00:11:02)
72 7八歩打 ( 0:21/00:11:57)
73 同 金(79) ( 0:20/00:11:22)
74 7七歩打 ( 0:04/00:12:01)
75 同 銀(88) ( 0:23/00:11:45)
76 同 桂成(85) ( 0:07/00:12:08)
77 同 銀(68) ( 0:11/00:11:56)
78 6六歩打 ( 0:17/00:12:25)
79 6八金(67) ( 0:32/00:12:28)
80 6七銀打 ( 1:13/00:13:38)
81 7九桂打 ( 0:50/00:13:18)
82 7八銀成(67) ( 0:24/00:14:02)
83 同 金(68) ( 0:02/00:13:20)
84 7六銀(65) ( 0:49/00:14:51)
85 同 銀(77) ( 0:48/00:14:08)
86 同 飛(74) ( 0:54/00:15:45)
87 7七歩打 ( 0:17/00:14:25)
88 6七歩成(66) ( 0:53/00:16:38)
89 同 桂(79) ( 0:26/00:14:51)
90 6九銀打 ( 0:28/00:17:06)
91 8九銀打 ( 0:49/00:15:40)
92 7八銀成(69) ( 0:46/00:17:52)
93 同 銀(89) ( 0:00/00:15:40)
94 6八馬(58) ( 0:49/00:18:41)
95 7一馬(53) ( 0:44/00:16:24)
96 同 金(72) ( 0:19/00:19:00)
97 8九銀打 ( 0:48/00:17:12)
98 6六角打 ( 0:55/00:19:55)
99 8八金打 ( 0:38/00:17:50)
100 7九金打 ( 0:45/00:20:40)
101 6九銀打 ( 0:36/00:18:26)
102 8九金(79) ( 0:40/00:21:20)
103 同 金(88) ( 0:35/00:19:01)
104 7七飛成(76) ( 0:49/00:22:09)
105 同 銀(78) ( 0:14/00:19:15)
106 同 馬(68) ( 0:40/00:22:49)
107 8八金打 ( 0:08/00:19:23)
108 6七馬(77) ( 0:53/00:23:42)
109 7二歩打 ( 0:52/00:20:15)
110 同 金(71) ( 0:42/00:24:24)
111 3一飛成(35) ( 0:30/00:20:45)
112 7一歩打 ( 0:14/00:24:38)
113 7三歩打 ( 0:24/00:21:09)
114 同 銀(82) ( 0:53/00:25:31)
115 7七歩打 ( 0:38/00:21:47)
116 7六桂打 ( 0:48/00:26:19)
117 同 歩(77) ( 0:23/00:22:10)
118 7七銀打 ( 0:20/00:26:39)
119 同 金(88) ( 0:18/00:22:28)
120 同 角成(66) ( 0:28/00:27:07)
121 8八銀打 ( 0:06/00:22:34)
122 同 馬(77) ( 0:37/00:27:44)
123 同 金(89) ( 0:09/00:22:43)
124 7九銀打 ( 0:44/00:28:28)
125 8九飛打 ( 0:56/00:23:39)
126 8八銀成(79) ( 0:39/00:29:07)
127 同 飛(89) ( 0:06/00:23:45)
128 7七金打 ( 0:02/00:29:09)
129 8九銀打 ( 0:53/00:24:38)
130 8八金(77) ( 0:48/00:29:57)
131 同 玉(99) ( 0:03/00:24:41)
132 7七金打 ( 0:34/00:30:31)
133 投了 ( 0:02/00:24:43)
まで132手で後手の勝ち

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