指す将順位戦7th 振り返り vsまえかくさん

指す将順位戦7thにて、B級3組に初参加するしらがと申します。
今回の記事では、指す将順位戦7th 6回戦 (vs まえかくさん) を振り返ります。

1. まえかくさんについて

まえかくさんは、前期の指す将順位戦は不参加だったが、過去には参加経験のあるお方。

駒サプリを定期的に問いており、サプリ君に褒められているところを良くお見掛けする。
また、リアルでの将棋大会にも度々参加されているご様子。
社団戦にも参加されているとのことで、ちょっと羨ましく思っている。

まえかくさんの今期の指す将順位戦は、これまでの戦績が3勝1敗 (不戦勝を除く)。
内容は下記の通り。

・デメテルさん戦 負け (後手角換わり vs 角換わり右玉)
・ふくぴーさん戦 勝ち (先手相掛かりの出だし vs 袖飛車)
・tamunetさん戦 勝ち (後手矢倉 vs 急戦矢倉)
・ドラキーさん戦 勝ち (先手超速2枚銀 vs ゴキゲン中飛車)

棋譜は将棋倶楽部24の東京道場の7、8月分のものに目を通した。
棋譜は居飛車100%で、対振り飛車だと急戦系、相居飛車は角換わり、矢倉、横歩取り(後手番)など色んな戦型が確認できた。

序盤に攻め形を作って、中終盤は着実な指し手を選んでいる印象。
ねじり合いの際に受けと攻めを上手く切り替えており、距離感の掴み方が参考になった。

また、相居飛車においては指す戦型がバラけており、ストライクゾーンの範囲を見定められなかった。
もしかしたら、相掛かりや雁木なんかも得意だったりするのかな…

2. 事前想定

先手の場合は矢倉、後手の場合は三間飛車を採用予定。

矢倉は今大会一度も採用できていないため、どこかで登板させてみたかった。まえかくさんは、基本2手目は△84歩とするため、矢倉にするチャンスは大いにありそう。

後手三間飛車の採用は、相居飛車の後手番を避けるのが一番の目的。
角換わりや横歩取りも指してみたいが、角換わりになった際はまえかくさんに分がありそうなので今回は控えておく。
また、最近は三間飛車について勉強することも多かったため、ホットな内に成果を挙げておきたい思いもあった。

2-1. 先手番 矢倉

ここから相矢倉になるかどうか。
隙があれば急戦矢倉を目指す。

▲76歩△84歩▲68銀の出だしであれば矢倉を採用。
矢倉といえば まえかくさん vs tamunetさん の対局で、まえかくさんは後手番で急戦矢倉を受ける側を持っていた。(結果はまえかくさん勝ち)

その将棋だと、仕掛けの部分ではtamunetさんが押していたように見えたため、その時と同じ展開を避ける意味でも相矢倉にならないことは考えられる。

2-2. 先手番 三間飛車

▲68銀型で急戦に備える。

▲76歩△34歩▲66歩の出だしであれば三間飛車を採用。
まえかくさんの棋譜からは、ここから△65歩と仕掛けるものを何局か見かけた。
この仕掛けに対して、四間飛車と三間飛車のどちらで迎え撃つのが良いか比較し、三間飛車で良さそうだったので上図を対策とした。

2-3. 後手番 三間飛車

△42銀型で急戦に備える。

後手番であれば余程のことがない限り三間飛車。
先手番の時と同じように急戦を想定。

3. 対局本番

先手まえかくさん、後手しらが。
戦型は、こちら三間飛車 vs 居飛車 (左美濃)

3-1. 13手目 ▲78銀

想定を外された銀上がり。

こちら三間飛車に振っての序盤戦。
急戦、持久戦どちらにも戦える心構えでいたが、左美濃は盲点中の盲点!
実は全く予想していなかった。
5秒ほど固まってしまったが、気を取り直して△62玉。

3-2. 25手目 ▲86歩

玉頭に発展性を持たせる歩突き。

なるほどー。ここで▲86歩。
このタイミングで落ち着いて▲86歩とされるのは、素朴ながら上手いと思った。

持久戦になった際、三間飛車からは玉頭を攻める狙いがあるが、事前に備えられると手を出しずらくなる。

また、この局面では急戦と持久戦の選択権を居飛車に握られてるという見解なのだが、▲86歩はその選択権を残せる一手だと思う。
こちらは無理に動いたり、態度を決めようとすると隙を突かれそうなため、言いなりではあるが△74歩として位取りを阻止するくらいが関の山だと思い、本譜でもそう指した。

ソフトの推奨手は△63銀。
読み筋を見てもあまりピンを来なかったが、なにか可能性を感じる一手。


3-3. 37手目 ▲66歩

△65歩を防がれたようだが、この瞬間なら△65歩と突ける。
進行の一例は、▲67金右、△66歩、▲同金、△65歩打、▲67金引で、
これなら△65歩の位を築ける。

様子見だ様子見だと駒組を進めていき、▲66歩と突かれてからはこちらに主張が見出せず、指し辛さを意識した。
ただし、ここでは△65歩や△45歩などで手を作ることができ、互角の評価値。
振り飛車で互角の仕掛けなら上手くいってると思いたい。

いやーアンテナが鈍い!
しかもソフトの読み筋を見るまで全く気づかず…

本譜はまだまだ様子見だと言いながら△83銀で銀冠を目指す。


3-4. 49手目 ▲35歩

厳密には仕掛けが成立しており、やや居飛車良し。
ただし振り飛車の駒が捌けない訳ではないので、一局の範疇だと思う。

さあ来た!
これは振り飛車の腕が鳴る局面。
この展開なら捌き合って互角にできると踏んでいたが、ソフトは先手有利の評価。理由は後ほど。

因みに、この仕掛けの前に▲77桂が入っていたらどうだったのか感想戦で挙がっていた。
もしここで▲35歩に代えて▲77桂だったら、△45歩で後手有利っぽい。
この将棋で▲77桂と上がれたかどうかは難しいところ。


3-5. 54手目 △32飛

ここで角頭に一発▲55歩が絶妙手!
この含みがあっての先手有利だと思う。

49手目▲35歩からこの局面までは以下の通り。

▲35歩、△22飛、▲34歩、△同銀、▲36飛、△32飛。

ここまでは読み通りで、ここからは▲24歩、△同歩、▲22歩打、△35歩打が読み筋。
一応、捌きとしては及第点といった見込み。
本譜もその後は上記の読み筋通りの進行となった。

ただし、△32飛には▲55歩という幻の一手があり、これは全く読んでいなかった。
もしもこう指されていたら先手の攻めがかなり分かりやすくなるので、評価値以上に勝ちにくくなったと思う。
言われてみれば納得。強者の一手という感じがする。


3-6. 61手目 ▲35飛

△34歩打から飛車を捕獲する手が有力そうに見えるが、
そうなると後に自陣の飛車角を攻められる展開になり、返って忙しくなる。

35の地点で銀交換したこの局面。
ここでは飛車が捌けることに満足してすんなり△35同飛とした。

しかし感想戦で△35歩打という手を教えてもらい、それで先手の飛車を捕獲できれば後手良しだろうと盛り上がった。

がしかし、ソフト先生曰く本譜の△35同飛で良かったとのこと。
これも言われてみれば確かに。
もう何でも信じちゃいそう。


3-7. 65手目 ▲68角

後手に怖いところがなくなり、攻めに専念できるようになった。

飛車交換後、こちらが飛車を先着したところでまえかくさんが指した手が▲68角。
この手で形勢が後手に傾くこととなり、感覚としても指しやすくなった。
感想戦でも真っ先に触れられた局面で、まえかくさんもこの手には後悔していたご様子。

観戦チャットだと、▲68角に代えて▲52銀打が挙げられていたらしく、ソフトもその手を+200点の局面として推奨していた。

というか観戦の方々強い!
※感想戦は最速キメさんに付き合って頂きました。スーパー贅沢!

自分は▲52銀打は見えてませんでした…
こうやって皆さんの読み筋が聞けるのは非常にありがたいです。


3-8. 71手目 ▲68金

やはり後手玉が手つかずなのが大きい。
△65歩で後手優勢となる。

▲68角と後手の銀が交換となったこの局面。
△65歩が急所の一着だが、本譜でも無事にそう指すことができた。
これを逃さなかったのが、自分としては一番のハイライトかもしれない。
自分自身を褒めたいと思う。

3-9. 109手目 △78金 (投了図)

▲87玉、△88角成の即詰み。

最後は守りのカナ駒を削って先手玉を追い詰めることができた。
お疲れさまでした。


4. 対局後

VS まえかくさん。結果は勝ち。

4-1. 本局の振り返り

序盤はこちらから動くことができず、どんどん主張が見出せない展開になりやや劣勢となったのが反省。
本局を糧として、もっと機敏に動いていけるよう今後は意識したい。

中盤の捌き合いのところは結果として上手くいったが、あの瞬間の読み抜けは確実に致命傷になるのでもっと慎重になっても良かった。
また、飛車を打つところでたっぷり時間を使ったにも関わらず、▲52銀打の攻めが読めていなかった。本局のおかげで筋として勉強できたので良しとしたい。

終盤は優勢のまま押し通せたので今回はヨシ!

4-2. 振り返っての感想

今回の三間飛車は万全の態勢で投入したつもりでしたが、しっかり隙を突かれて冷や汗物でした。
今は後手番のエース戦法として若干依存気味でもあり、もし今回負けていたら大ダメージになってました。
これについては自分が甘いのは勿論ですが、まえかくさんの作戦が素晴らしかったことに尽きます。

後手番で三間飛車に依存しちゃうのは、相掛かり、雁木、その他振り飛車を指せないことが原因でしょう。
残りの指す順戦の隠し玉要員として、どれか準備しておくと良いかもしれない。
あとはやっぱり矢倉も指したい。

また、これは今更ですが、棋譜に残されている戦法って本番には登板させないんですね!
今回を含む3連戦で確証に至りました!
これできるの結構凄いと思うんですけど…

最後にまえかくさん、対局ありがとうございました。
船橋の将棋大会直後ということもありお疲れだったと思いますが、感想戦にもみっちり付き合って頂きとても嬉しかったです。

船橋の将棋大会では、まえかくさんの4戦目の相手が誰だったのかちょっと気になりました。

今回採用された左美濃からの銀冠の作戦については、優秀さを痛感したのでちょっと対三間に真似させて頂こうかなと企んでおります!

またいつか対局できると嬉しいです。

おしまい。


4-3. 棋譜

開始日時:2022/08/21 21:00:18
終了日時:2022/08/21 21:37:42
棋戦:R対局 持ち時間15分
手合割:平手
先手:corneavant02(945)
後手:su0625(1009)
手数----指手---------消費時間--
1 7六歩(77) ( 0:01/00:00:01)
2 3四歩(33) ( 0:01/00:00:01)
3 2六歩(27) ( 0:02/00:00:03)
4 4四歩(43) ( 0:01/00:00:02)
5 2五歩(26) ( 0:04/00:00:07)
6 3三角(22) ( 0:01/00:00:03)
7 4八銀(39) ( 0:02/00:00:09)
8 9四歩(93) ( 0:01/00:00:04)
9 9六歩(97) ( 0:03/00:00:12)
10 3二飛(82) ( 0:01/00:00:05)
11 6八玉(59) ( 0:04/00:00:16)
12 4二銀(31) ( 0:01/00:00:06)
13 7八銀(79) ( 0:09/00:00:25)
14 6二玉(51) ( 0:05/00:00:11)
15 7七角(88) ( 0:20/00:00:45)
16 7二銀(71) ( 0:06/00:00:17)
17 5八金(49) ( 0:03/00:00:48)
18 7一玉(62) ( 0:01/00:00:18)
19 7九玉(68) ( 0:02/00:00:50)
20 5二金(41) ( 0:01/00:00:19)
21 8八玉(79) ( 0:07/00:00:57)
22 5四歩(53) ( 0:06/00:00:25)
23 5六歩(57) ( 0:05/00:01:02)
24 6四歩(63) ( 0:03/00:00:28)
25 8六歩(87) ( 0:14/00:01:16)
26 7四歩(73) ( 0:13/00:00:41)
27 8七銀(78) ( 0:18/00:01:34)
28 6三金(52) ( 0:10/00:00:51)
29 7八金(69) ( 0:06/00:01:40)
30 8四歩(83) ( 0:11/00:01:02)
31 3六歩(37) ( 0:06/00:01:46)
32 8二玉(71) ( 0:15/00:01:17)
33 5七銀(48) ( 0:28/00:02:14)
34 7三桂(81) ( 0:11/00:01:28)
35 4六銀(57) ( 0:06/00:02:20)
36 4三銀(42) ( 0:55/00:02:23)
37 6六歩(67) ( 0:14/00:02:34)
38 8三銀(72) ( 0:20/00:02:43)
39 6七金(58) ( 0:03/00:02:37)
40 7二金(61) ( 0:02/00:02:45)
41 3七桂(29) ( 0:07/00:02:44)
42 1四歩(13) ( 0:20/00:03:05)
43 1六歩(17) ( 0:03/00:02:47)
44 1二香(11) ( 0:03/00:03:08)
45 2六飛(28) ( 0:51/00:03:38)
46 4二角(33) ( 0:03/00:03:11)
47 6八角(77) ( 0:10/00:03:48)
48 5三角(42) ( 0:05/00:03:16)
49 3五歩(36) ( 0:58/00:04:46)
50 2二飛(32) ( 0:30/00:03:46)
51 3四歩(35) ( 1:11/00:05:57)
52 同 銀(43) ( 0:14/00:04:00)
53 3六飛(26) ( 0:46/00:06:43)
54 3二飛(22) ( 0:04/00:04:04)
55 2四歩(25) ( 0:25/00:07:08)
56 同 歩(23) ( 0:11/00:04:15)
57 2二歩打 ( 0:11/00:07:19)
58 3五歩打 ( 0:29/00:04:44)
59 同 銀(46) ( 0:04/00:07:23)
60 同 銀(34) ( 0:14/00:04:58)
61 同 飛(36) ( 0:22/00:07:45)
62 同 飛(32) ( 0:18/00:05:16)
63 同 角(68) ( 0:03/00:07:48)
64 3八飛打 ( 3:33/00:08:49)
65 6八角(35) ( 2:45/00:10:33)
66 6九銀打 ( 0:52/00:09:41)
67 7九金(78) ( 0:58/00:11:31)
68 5八銀成(69) ( 0:04/00:09:45)
69 2一歩成(22) ( 0:09/00:11:40)
70 6八成銀(58) ( 0:14/00:09:59)
71 同 金(79) ( 0:08/00:11:48)
72 6五歩(64) ( 0:01/00:10:00)
73 7七銀打 ( 0:45/00:12:33)
74 6六歩(65) ( 0:31/00:10:31)
75 同 銀(77) ( 0:03/00:12:36)
76 3九飛成(38) ( 0:27/00:10:58)
77 6九歩打 ( 0:07/00:12:43)
78 1九龍(39) ( 0:10/00:11:08)
79 2二飛打 ( 0:23/00:13:06)
80 6五歩打 ( 0:36/00:11:44)
81 5二銀打 ( 1:18/00:14:24)
82 6二金(63) ( 0:11/00:11:55)
83 1二飛成(22) ( 0:26/00:14:50)
84 6六歩(65) ( 0:06/00:12:01)
85 6三香打 ( 0:44/00:15:34)
86 6七歩成(66) ( 0:14/00:12:15)
87 6二香成(63) ( 0:03/00:15:37)
88 同 角(53) ( 1:14/00:13:29)
89 6七金(68) ( 0:12/00:15:49)
90 6九龍(19) ( 0:11/00:13:40)
91 7八金打 ( 0:03/00:15:52)
92 6六歩打 ( 0:31/00:14:11)
93 7七金(67) ( 0:40/00:16:32)
94 6七銀打 ( 0:14/00:14:25)
95 6三歩打 ( 0:17/00:16:49)
96 7八銀成(67) ( 0:10/00:14:35)
97 同 金(77) ( 0:02/00:16:51)
98 6七歩成(66) ( 0:17/00:14:52)
99 6二歩成(63) ( 0:54/00:17:45)
100 7八と(67) ( 0:04/00:14:56)
101 同 銀(87) ( 0:51/00:18:36)
102 7九角打 ( 0:07/00:15:03)
103 7七玉(88) ( 0:53/00:19:29)
104 6八龍(69) ( 0:11/00:15:14)
105 8七玉(77) ( 0:51/00:20:20)
106 8八金打 ( 0:07/00:15:21)
107 9七玉(87) ( 0:27/00:20:47)
108 7八金(88) ( 0:03/00:15:24)
109 投了 ( 0:03/00:20:50)
まで108手で後手の勝ち

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