北欧④ ラップランド サーリセリカ
秘境とか、先住民族と聞くと、何故か心の奥から興味や好奇心が湧き起こる。
もうそこに行きたいとの切望が、強い欲求として出てくる。
このラップランドはその気持ちが強まって、
コース的には非合理的なルートにもかかわらず、行くことになった。
ラップランドとは、スカンジナビア半島北部からコラ半島にかけての北極圏限界線から北がラップランドだ。
西部のラップランドでは、フィヨルドや深い谷、氷河や山(最高峰はケブネカイセ( :標高2,111m))が続く。
東のラップランドでは、低い高原に多くの湿地や湖(イナリ湖等)があり、
フィンランド最長の川であるケミ川が流れている。
最東端にはツンドラ地帯が広がっている。
伝統的にサーミ人が住んでいる地域を指しており、ウラル語族系のサーミ語を話す。
サーミ人の3分の1は移動生活を営んでいる。
夏は海岸部に住み冬は内陸部に移動していく。
他のサーミ人は海岸とフィヨルドに散り散りに定住しており、
多くは湖の側や谷の奥で村を構成して生活している。
サーミ人の多くはノルウェーに住んでおり、そこで彼らは「サーメ」(Samer)と呼ばれている。
彼らの主な職業はトナカイを飼う事である(食料と衣料も調達できるため)が、
他方で狩りや釣りで生計を立てる人もいる。
ラップランドは、ノルウェー・スウェーデン・フィンランド・ロシアの国境をまたぐ、
半国家の体をなしている。
議会もあるが、非常に弱い政治的影響力しか持っていない。
議会はスカンジナビア半島の諸政府に支配されているものの、公式な機関であり、
民主的に議員も選出している。
議会の役目は、サーミ人のために活動する事である。
サーリセリカは、フィンランドのラップランド最北のリゾート地であり、
ウルホ・ケッコネン国立公園が広がっている。
この国立公園のトレッキングも楽しみだった。
サーリセルカの町は、すべてが徒歩圏内で、30分で一周できた。
ハイキング・ルートの入り口も、町の中にあった。
町を歩いていると、町中にトナカイの群れが、闊歩していた。
どこを歩いてもトナカイの糞が転がっており、足元を注意しないと、踏んづけてしまいそうだった。
トナカイが通る時は、人も車も待っていた。
地元の人の話では、昼は町にいて、夜になると森に帰っていくという。
これだけ多くのトナカイがいるのだから、さぞかし森では多くの野生のトナカイに出会えるであろうと思った。
だが、2日間で2回のトレッキング中には、結局1頭のトナカイとも出会えなかった。
そして町に戻ると、トナカイがいた。
何故か解せなかった。
サーリセリカは、フィンランドのリゾート地で、冬のスキーやオーロラ観測が本番だった。
この時期はシーズンオフのため、ホテルも格安料金があったのでホテルに泊まった。
格安料金だから、本館には泊まれず、別棟の部屋だった。
チェックイン後に、鍵を渡され、言葉で部屋を教えられた。
一度本館を出て、別棟まで歩いた行ったのだが、入り口がわからなかった。
あちらこちらのドアを試し、何とか鍵のかかっていなかったドアを見つけて、中に入った。
2階だったのだが、エレべーターの位置もわからず、重いカバンを引きずるように運んだ。
この別棟は3・4階建で部屋数は100以上位はあるだろうが、客の姿はなかった。
ここはサウナの本場だ。
もちろん、サウナを大いに楽しんだのだが、サウナはもちろん本館にあった。
町中もホテルも閑散としており、レストランも休業中が多かった。
わたしたちのみの宿泊のような気がしたが、翌日の朝食では数組がいた。
わたしたち以外は、本館に泊まったのであろう。
翌々日には老人会の慰安旅行のような老齢者の団体がいた。
どこの国も老齢者は安い時に、旅をするのだろうか?
同伴した友人も海外旅行が好きで、何度も旅行をしていた。
だが2人とも、経済的に恵まれているので星☆付きホテルしか、泊まったことがなかった。
ましてや、ユースホステルに泊まるのは2人とも、始めてだった。
各地のユースホステルの部屋を開けるときは、恐る恐る静かに開けて部屋の様子を見る。
その様子でホッとしたり、ため息をついたりしていた。
海外のユースホステルは本当に場所によって、あたり外れが大きいのだ。
北欧は物価が高く、スウェーデンでもノルウェーでも今回の旅は節約ムードだった。
当時(2012年)ランチでは1500円。普通のレストランでも夜の食事なら、一人3000から4000円もした。
ワインは1本7~8000円で、美味しければ文句も出ないが、そうではなかった。
さらにレシートにはサービス料や税金も加算された金額となった。
バス移動中に国境を超え(境界線も検問もなく、普通の道路)フィンランドに入り、
停車中に近くにスーパーがあったので、行った。
すると、どの商品もはるかに安かった。
ついつい買いすぎてしまった。
そして、レストランの食事も北欧では一番美味しかった。
そろそろ夕暮れどきになると、レストランの窓の外にはトナカイが通り、森の中へと帰る途中だった。
雰囲気も食事代にも大いに満足したものだ。
だがわたしたちは、町にいるトナカイは野生ではなく、放牧のかたちで町が飼っていると、自分達で勝手に結論した。
次の町、サーメ人の首都(カラショーク)では、ラップランドの真髄を味わった。