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北欧③ ―2 ノールカップ・真夜中の沈まぬ太陽

どうにかバスに乗れて、最北地へと向かった。
北に向かうに連れて風景は、荒涼としてきた。
あるのは、岩山と岩肌にこびりついているような草だけだった。
あちらこちらに、トナカイがいた。



野生であろうか?
大きな角をゆったり動かしながら、草というか岩に生えているコケを食べていた。
高度が、上がってきた。
粉雪も、舞い始めた。
岩山ばかりのこんな場所にも、家があった。
途中から乗り込んできた現地の老婆が、バスを降りていった。
周りを見渡しても何もなかった。
こんな場所に降りて、どこに行こうとしているのか、興味がわいた。
少し走った山の山頂付近に、ポツンと小さな家があった。
あそこまで行くのであろうか?
老婆の服装は、とても裕福には見えなかった。
細雪の中、あの服装であそこまで行くには、わたしの想像にはなかった。
日常の慣れている行動であろうが、人間の適応力に感服した。

こんな僻地のはずなのに、車の多さにびっくりした。
それもバスが多かった。観光バスであろう。
やはり観光客が最北端の「沈まぬ太陽」を見に行くのであろう。
その答えは正解であった。
ノールカップに到着すると、駐車場には多くの車が止まっていた。
立派なノールカップホールがあり、そこにはレストラン・カフェを始め、美術館などもあった。
ノールカップ到着証明書を発行する郵便局もあり、キリスト教会まであった。
岬の先には、地球をモチーフにしたモニュメントがあり、観光客が写真を撮っていた。
わたしたちも番を待って、撮った。
世界中の子供たちがデザインした地球のモニュメントも7個あった。
日本人のもあり、日本語がしっかりと大地に根ざしていた。

まだ、真夜中の太陽まで時間があった。
外は寒くて、長くはいられなかった。
昼でもこの寒さなのに、真夜中はどんなに寒いのかとホッカイロに期待をかけた。
ホールのなかの美術館というか博物館をぶらぶらと散策したり、レストランで時間つぶしをした。

ようやく、太陽が地平線に近づいてきた。
着れるものすべてを身体につけ、ホッカイロも3個身につけた。
外を出ると冷風が、頬や耳を切り裂いた。
脚踏みしながら、岬の先端の柵の空いているスペースを確保した。
鈴なりだった。
あいにくと雲が厚く、雲の隙間から太陽の光が、射していた。
辺り一体はグレーだった。
その中、数本のオレンジ・黄色・赤の筋が見えた。
水平線に着いたかどうかわからない一瞬が来た。
真夜中の太陽は雲の中にいた。
デジカメを向けた。
すると、カメラの中で太陽はまばゆい光を放った。
その一瞬後に、新たな光を放ちながら上に向かっていった。
一瞬で翌日になった。
その一瞬はやはり、人間の力ではない。
まさしく神と呼んでもよかった。

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