Japan, the beautiful, and myself
ノーベル文学賞受賞記念講演で、日本の小説家が語った内容は、後に「美しい日本の私」として数日遅れで朝日新聞に全文が掲載され、新書と文庫となり、サイデンステッカーによる英訳版をはじめ複数の外国語版が刊行されています。
著作権が今も生きているので検索しても見つからない――と思ったらノーベル賞の公式サイトに載っていました。ウィキにある要約も紹介しておきます。
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久しぶりに目を通してみて思った。明治の頭に、パリやベルリンやロンドンとかの万国博覧会に日本からも何か出品しないといけないということで、幕末を経て没落武家が手放したいろいろな物品をかき集めて、それらを歴史年表化して解説カタログを急遽書き上げて会場でばら撒いたのが、その後日本美術史として正史化されたという、あれの文学版かなって。
そういうのは遡るとやはり明治の頭にアーネスト・サトウとも同僚だったとかいう滞日ガイジンさんが綴っていて、ヤスナリ・カワバタの講演もその流れにあるものだったという気がします。ここには堅固な I はなくて、日本の風土と歴史の清流のなかを泳ぐ、アユの一匹としての〈私〉がある、と。
近代化(=自己の自己西洋化手術の痛みに耐え続けること)の痛みを和らげ、癒すための語りだった… と思えなくもない。