おとなになったら腕の骨を切られる
6歳のとき、右腕をギブスで固定され、滑車を使って天井に向けて24時間伸ばし続ける、つまりワイヤーで引っ張られ続ける毎日を過ごしました。
耐えました。おかげで右腕は矯正されました。しかし予想外のことがレントゲン撮影で判明しました。肘関節の内側に、骨が新たに育っていたのです。
この小骨のせいで、右腕を「く」の字に曲げても、指先が右肩に届かないのです。
「手術すればこの骨は切り取れるが、こんな小さな子にはかわいそうだ。もっと大きくなってから、おとなになってから手術して取ろう」と言われました。
おとなになったら、腕を手術して骨を切られる…
23歳のとき、自我の崩壊という、あまりひとが味わうことのないことを味わって、ロールシャッハ・テストによって私の心の奥底にある恐怖を、ようやく診断してもらいました。
その恐怖は、腕の骨を切られる恐怖ではなく、違う恐怖でした。
17年の歳月を経て、私の人格形成のなかで、自分の存在理由すら揺るがすような、異質の恐怖に変容していたのでした。
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