2010年式 シトロエンC4
今回のインプレッションは、ちょっと古いシトロエンC4だ。
この車は、実は以前から気になっていたクルマだ。ちょっとコガネムシっぽい愛嬌のある外形デザインで、ダッシュボード中央の透過式液晶メーターや固定式のステアリングセンターパッドなど、いかにもシトロエンらしい所に惹かれていたわけだ。
今回の車は2010年式なので、マイナーチェンジ後のモデルの為、残念ながらダッシュ中央のメーターは透過式では無い普通の液晶メーターに変わっていた。アイデアは良かったけど、当時のモノクロ液晶では、やはり見難かったのかもしれない。
早速乗り込んでみると、ソフトで包み込まれる様な感触のシートが心地よい。このシートはソフトだがホールドも良く、山道を飛ばしてもお尻の座りも良くサポートも良いので、リラックスして運転できるのが美点だ。残念なのはこの様なシートはシトロエンの伝統だったが、この時代を境に新しいモデルは徐々に固くフラットな座面のシートに変わってきており、現在のモデルはサイズこそタップリしているものの、殆ど面影がなくなってしまっている。後席は近年のBセグメント車(当時C4はCセグメントに属していたはずだが、ボデーサイズ的には現在のBセグメントとほぼ同じ)より一回り広く開放感もあって良い。しかし、シート座面はダブルフォールディングになっていない為、リアシートのバックレストを倒してもフラットにならないのは残念なところだ。
この車のエンジンは、PSAとBMWが共同開発した1.6LのEP6型だが、現行モデルと異なり、NA(自然吸気:即ちノンターボ)仕様でポート噴射のインジェクタにより、88kw/160Nmを発生する。プジョー308やBMWミニにも同じエンジンが搭載されている。トランスミッションは4速ATだ。
車をスタートさせると街中では十分速く、走りで特に不足感は無い。ただし恐らく排気系のコモリ音で加速時などは少々うるさく感じる。乗り心地は全体としてはソフトで、一般的は金属バネのサスペンションなのだが、マンホールや舗装の継ぎ目などでは少し強めのハーシュネスを感じるところや、大きなうねりや段差を乗り越えると緩く一回だけピッチングして収まるところなども、同時代の上級車であるC5やC6で採用されているハイドロニューマチック・サスペンジョン的だ。
さて、いつもの山道に連れ出してみる。この道は結構勾配が急なところやヘアピンが連続するうえタイトなコーナーも多く険しめのコースの為か、この1.6L NA仕様のEP6型エンジンでは力不足を強く感じた。また、A/Tは旧式な4速仕様なので、2ndと3rdのステップアップ比が大きすぎ全くスピードが乗らない。シフトレバーをマニュアルポジションにすれば良いが、結局2ndで引っ張るしかなく、ドライバー席から遠く小さくなんだかやる気のない液晶タコメータをチラチラ見ながら走らせるくらいなら、オートマチックモードでそこそこ走らせるのが、結局ストレスがなくて良い。
ステアリングの手応えはしっかりしており正確だが、ハンドリングは基本的にアンダーステアの特性だ。しかし、フィーリング的には前輪のグリップ力に頼った様な感じで、うっかりアンダーを強く出し滑り出したら、立て直しが効かないのではないかと云う不安感を感じた。もっとも、スピードが乗らないので、余程無茶をしない限りその様な状況に遭遇することはまず無いだろうが、ターボエンジン仕様車が同じ特性だとちょっと怖いかもしれない。
この初代シトロエンC4は、ダッシュボードや内張のプラスチックの質感が少々安っぽかったりはするが、それ以前のモデルよりは全体の造りはしっかりしているし、デザインも先代のクサラよりスッキリ魅力的(個人的見解)だし、旧世代シトロエンの良さを十分残しているので、ちょっと古いシトロエンを選ぶとしたら魅力的な一台だと思う。