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2021年式 BMW330e

BMW330e


つい最近マイナーチェンジが有ったが、今回短時間だがBMW330eに乗る機会があった。BMWのネーミングも段々ややこしくなってきて、昔は330ならば、3シリーズの3.000ccエンジンだったが、現在はアタマの3シリーズは変わらないものの、30は3000ccではなく、3000cc"並み"と言う事らしい。そして末尾の"e"は昔の530eを引きずっているとは思うが、今ではイメージで"エコ"では無く"electric"なんだろうか?
と言う訳で、今回はBMW330eなのだが、どんな車かおさらいしてみよう。
現在販売されているものは、2018年にパリサロンでワールドプレミアされたG20シリーズで2019年から日本でも発売された、BMWではDセグメントに属する中核車種だ。その中で、330の名前が示すように上級スポーツモデルと言う位置付けながら、PHEVモデルというスポーツとエコの二兎を狙ったモデルと言える。
エンジンは320iと共通のバルブトロニック+ダブルVANOS付き2.0L直噴4気筒にツインスクロールターボチャージャで、135kw/5000、300Nm/1350〜4000 の出力トルクを発生し、これでも十分強力だが、これに加えて80kw/3140、250Nm/3170 の交流モーターがエンジンとトランスミッション間に追加されるので、特にトルクはシズテムで500Nm以上となり、ターボディーゼルの320dの400Nmを超える高性能になる。
ご存知に様に、そもそもBMWの母国ドイツではカンパニーカーと云う制度があり、中堅以上の規模の会社の管理職には、インセンティブの一つとして会社から社用車を貸与する制度がある。車自体は貸与品として社員は登録されている車の中から好みの車を選ぶことができるが、燃料代は社員持ちなので、BMWとしてはBMWらしいスポーティさと低燃費をアピールして選んでもらおうとしたのだろう。
その狙いが後奏したのか、次項で報告しよう。
ちなみに、日本に入っている330eは全てM Sport仕様だ。

左フロントフェンダーに充電用リッドがある。家庭用200V電源で充電できるが、高速充電はできない。

BMWのハイブリッド車

330eはPHEV車だ。PHEVとは、簡単に言えばバッテリー容量の大きなハイブリッド車という訳だが、例えばトヨタプリウスのバッテリー容量が3.6Ahに対して34Ahと十倍近い差があり、バッテリーのみでのEV走行はWLTCモードで56.4km走ることができる。即ち、プライベートで街乗り主体の人であれば、基本的に一日中EV走行で事足りるという訳だ。
参考までに、トヨタとの考え方の差はモータの出力にも表れており、トヨタの代表的HEV車プリウスのモータが53kw/163Nm(最高出力/最高トルク)に対して、330eでは、80kw/250Nm(同)と高出力となっている。その一方、ハイブリッド燃料消費率(WLTCモード)では、トヨタのPHEV車、プリウスPHVが30.3km/lに対して13.4km/lとなっている様に、トヨタはPHEVといえどもHEV車の延長線上として考えており、日常走行ではガソリンを使わないで済むHEV車という思想で車を造っている一方、BMWは日常はガソリンを使わないで経済的に走り、いざカントリーロードや高速道路へ入った時には、330の名に恥じないBMWらしい"駆け抜ける悦び"を320i並みの経済性で体現できるというわけだ。

330とはいえ、今は2.0Lの4気筒ターボエンジンが、エンジンルームの奥の方に収まる。

今回車を借用した際にはバッテリーは満充電では無く、EV走行可能距離が26kmと表示されていた。走行モードは完全EVモードとHEVモード、パワーモードの3つで、HEVモードは電池残量が有る内はEV優先で走り、残量が少なくなってくるとエンジン併用になるらしいが、今回の走行距離では返却時に未だ12kmほどEV走行が可能だったこともあり確認できなかった。一方、パワーモードでは常にエンジンが掛かっている。では実際走らせてみよう。

EV・HEVモードでは右側のメーター表示はモーターのアシスト/回生状態や電池残量の表示となる。


パワーモードでは表示色が赤色になり、右半分はタコメータ表示となる。

BMW流ハイブリッド(HEV)

先ず走り出してみると、トヨタのHEV車の様にエンジンが掛かる事もなく、EV走行のまま普通に一般国道の流れに乗っていける事が印象的だ。加速感はモーターのトルクが大きいので発進から力強くスムースに加速するし途中加速も同様で、完全にEV車のフィーリングだ。更にアクセルを深く踏み込むとエンジンが始動し、モーターはエンジンをアシストする"eブースト"状態になり、更に力強く加速する。平地の一般国道の制限速度ではそこまでで、未だターボチャージャによる過給を意識するに至らないので、長い急坂のある所で再度加速を試みたところ、十分に伸びのある力強い加速を体感でき、なるほどBMWのイメージするHEVコンセプトが理解できた。モーターのアシストと巧みなA/Tミッションのセッティングにより、ターボラグは意識されない一方、ターボバンは感じられずツインスクロールのターボも縁の下の力持ちに徹しており、ひたすら力強くスムースなパワートレインといえる。
EV走行距離が12km位になってくると、信号待ちなどで時折エンジンが始動している事が有ったが、これも窓を開けていないと音量もほとんど分からないレベルであり、縦置きパワートレインレイアウトのおかげか、エンジンの始動・停止時の振動もほとんど気付かないレベルであり、非常に洗練されていると感じた。
音で言えば、エンジンが掛かっていないからか、タイヤからの伝達音がややロードノイズとして車体に響き、特に路面が荒くなった時の"ザー”という騒音は、せっかく全体が静かなのだから、もう少し何とかならないものかと思う。
乗り心地自体は、硬めだがしっかり車体の動きを抑えた快適なものだ。ランフラットタイヤのせいで、路面の突起に対する感度は少し高めだが不快感はない。
山道は僅かしか走行できなかったが、ステアリングは当然正確で不安感は無い。
実は筆者は従来、アクセルによる車体コントロールを拒むBMWのハンドリング特性は性に合わず、かつて2度ほどコーナーから飛び出しそうになった苦い思い出もあり心象は悪かったのだが、今回は大きく印象が変わった。G20 330eでは、アクセルによるコントロールも穏やかに受け入れたうえ、コーナーでもしっかり4輪が路面を捉え、気持ちよく連続してコーナーをクリアして行くことが出来たからだ。

室内及びユーティリティのプラスとマイナス

欧州Dセグメントとなると居住性も十分だ。ドライビングポジションでは、ステアリングホイールの中心もオフセットせずシートセンターにキチンと有し、アクセルペダルも自然な位置にある。ステアリングホィールと電動シートの調整幅が大きいので、どの様な体型の人でも好きな姿勢でポジションをセットできるだろう。
後席も、身長173cmレベルの筆者が合わせた前席のシートに筆者が腰掛けても、膝前に拳2つ以上の余裕がある。また、リアドアは大きく90度近く開くこともあり、乗降性も良好だ。

後席のレッグルームは十分広く、ドアも大きく開く。またサイドシルも高すぎないので乗降性は良い。

一方トランクは、バンパー上から広く開くのは良いが、タイヤの張り出しが有るためフルサイズのゴルフバッグは、後席のバックレストを倒さないと収めることができない。また天地方向が浅いので、高さのあるものは入らない。特に330eの場合、駆動用のバッテリーが有るため、320iに対して10cm程度、トランクルーム奥側が高くなっており、例えば一般的な車椅子などは入れることができない。
トランクの容量や使いやすさでは、直接比較した訳では無いが、国産車のCセグメント(カローラやマツダ3のセダン)の方が上だろうと思う。

330eではトランク奥がバッテリーのため一段浅い。手前の底板を奥に合わせてフラットにする事は可能。

まとめ

BMW330eは、日当たり30〜40km程度街中主体で日常は使用し、時折郊外や山道のドライブを楽しんだり遠出をすると言った用途にはベストの一台だと思う。この車は今後の電動化への切り替えの流れに素直に乗れず、抵抗している車好きを自認している人にとっても、ガソリンエンジンとモーターのシナジー(どっかで聞いた様な?)で新しい車の魅力を感じることが出来る一台と言える。


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