『ライジング』 第1話
法務省矯正局局長代理の三浦が発表したライジングプロジェクト。
それは、特別少年刑務所に送られた少年たちが野球チームを作り、甲子園優勝チームと対戦するというものだった。
勝利した暁には、減刑もしくは恩恵などが与えられ、出所出来るチャンスが得られるというもので、少年たちの更生が目的である。
一癖も二癖もある少年たち……そこに監督として現れたのは、MLBで数々の記録を塗り替え、即殿堂入りを果たした野球の申し子でありスーパースター沢村甲子だった。
が、このプロジェクトを潰そうとする者たちも現れ……。
野球×少年院×法務省×警視庁
異色な組み合わせが巻き起こす、青春スポーツドラマ!
○某国・寒村
決して豊かではない出で立ちの人たちが
暮らしている風景──その一角にある建
物に『児童養護施設』と書かれた札があ
る。
* * *
少し離れた広場でワイワイと楽しそうな
表情で野球をしている子供たち。
そこに、1人の男がバッグを肩に担いで
歩いてくる。※後ろ姿で見せる。
バッグの男「(見て)」※表情は見せない。
子供たちと一緒になって野球をしている
髭を蓄えた60代の男がいる。
60代の男「?」
バッグを担いだ男に気づく60代の男。
バッグの男「(微笑む)」※口元だけ見せる。
○ゴールデンファルコンズ本拠地球場・中(夜)
埋め尽くされた観衆が盛り上がってい
る。
実況の声「ワールドシリーズ第7戦。大詰めを迎
えております。ゴールデンファルコンズ、3
点ビハインドで迎えた9回裏!」
各塁、埋まっていて満塁だとわかる。
実況の声「ツーアウトながら満塁。そしてここで
迎えるのはファルコンズ、いや日本の! 世
界のスーパースター!」
バットを手に、打席前に向かう背番号10
のユニフォーム姿──。
実況の声「沢村甲子ッ」
打席に入る沢村甲子(こうし・40)。
甲 子「(キャッチャーに)歩かせるようなこと
はないよな」
キャッチャー「あんたを抑えて世界一にならなき
ゃ意味ないだろ」
甲 子「(微笑み)グッドラック」
○同・外景(夜)
ワーワーと歓声が鳴り響いている球場
──ガーンッと言う音が鳴り響く。
実況の声「大きい大きい! これは行ったか!」
○某駅(日替わり)
駅の売店に置かれている新聞。
新聞一面──『沢村甲子 世界一で有終
の美を飾る』の記事。
別の新聞──『沢村甲子 現役引退!』
の記事。
○収録スタジオ
スポーツニュースが行われていて、女性
キャスターとコメンテーターがいる。
女性キャスター「引退を表明した沢村さんは、ML
Bで即殿堂入りするという異例な快挙も成し
遂げたわけですが」
男性コメンテーター「通算本塁打世界記録の1125
本、本塁打王15回、三冠王5度獲得。それ
以外にも数々の世界記録を塗り替えました
ら」
女性キャスター「当然の結果というわけですね」
男性コメンテーター「日本人として鼻が高い。カ
ッカッカッ」
○自家用ジェット機・外景(日替わり)
N 「引退報道から2週間……」
○同・中
アロハシャツ、短パン姿にサングラスを
掛けてシャンパングラス片手に座ってい
る甲子──首には花のレイを掛けてい
る。※ハワイなどで用いられる装飾品。
甲 子「(優雅に)」
○空港・滑走路
降り立つジェット──。
* * *
扉がプシュッと開き、かっこよく登場す
る甲子。
甲 子「(陽気に)アッロハー」
風がビューッと吹く。
甲 子「(身震いして)寒ッ」
N 「季節は11月」
甲 子「(鼻水を垂らす)」
男の声「甲子!」
甲 子「!」
三浦玄(げん・40)が笑顔で手を振ってい
る。
○車・中
運転している三浦。
三 浦「相変わらずだな、甲子」
甲 子「何が」
三浦から借りたジャケットを羽織ってい
る甲子。
三 浦「野球以外のことは天然というか、アホと
いうか」
甲 子「ハワイじゃビーチで過ごしてたんだ。そ
の感覚でだな」
三 浦「(呆れて、溜息)嫁さんと娘は?」
甲 子「先に日本に帰って来てるぞ」
三 浦「長い海外生活だったからな。日本での生
活に不自由ないようにしてやれよ」
甲 子「わかってる」
三 浦「それにしても、お前に家族が出来るなん
てな」
甲 子「何だよ、今さら。そういうお前はどうな
んだ」
三 浦「独り身は楽だぞ」
甲 子「相手がいないってことだろ。堅いんだ
よ、玄は」
三 浦「うるせぇ」
甲 子「(微笑む)」
三 浦「……メジャーから誘いはあったんだろ。よ
かったのか、ホントに」
甲 子「愚問だな」
三 浦「(微笑み)悪い」
甲 子「なぁ玄、寄りたいところがあるんだが」
三 浦「?」
○ひまわり児童養護施設・外景
『ひまわり児童養護施設』の表記──。
○同・中
テーブルの前に座っている園長の西川靖
(72)。
西 川「改めて……お帰り、甲子、玄」
西川の前に座っている甲子と三浦。
甲 子「ただいま帰りました」
三 浦「(頭を下げる)」
西 川「なんじゃ、それは。ここはお前らのウチ
なんじゃぞ」
甲 子「まあ」
三 浦「照れくさくて」
西 川「悪ガキが成長したもんじゃのぉ」
三 浦「やめてくださいよ」
甲 子「悪ガキはこいつです(三浦を指す)」
三 浦「お前もだろ」
西 川「ホッホッホ……やはり、成長しておらん」
照れくさそうにする2人。
甲 子「でもホント、今の俺たちがあるのは先生
のお陰です」
西 川「わしは何もしておらんぞ」
甲 子「俺が野球を始めるきっかけをくれたんで
すから」
○同・外(回想)
中庭で喧嘩をしている子供の甲子(7)と三
浦(7)。
西川(39)「こら、やめなさい!」
2人の間に入って止める西川。
甲 子「だって玄が俺に」
三 浦「甲子が悪いんだよ、先生」
西 川「わかった。2人とも悪いんだな」
甲子・三浦「(お互いを指して)こいつが悪
い!」
西 川「はあぁ……(見て)!」
物置から見える野球のグローブとボー
ル。
西 川「ちょっと待ってなさい」
* * *
西 川「はい」
甲子と三浦にグローブを渡す西川。
甲 子「何これ」
三 浦「野球だよ」
甲 子「野球?」
西 川「2人でキャッチボールをしてみなさい。
お互いにボールを投げ合うんだ」
甲子・三浦「???」
* * *
キャッチボールを始める2人。
が、上手くキャッチボールが出来ない。
三浦が投げた球がとんでもない方向に。
甲 子「(ジャンプするが取れない)うわッ」
拾いに行く甲子。
甲 子「(ボールを拾って)ちゃんと投げろ!」
三 浦「お前もだろ!」
西 川「甲子、玄!」
西川のところに駆け寄る2人。
西 川「いいかい。2人とも初めてやるんだか
ら、ちゃんと投げられなくて、取れなくて当
然なんだ」
2 人「……」
西 川「上手くやろうと思わなくていいんだよ。
でもね、これだけはちゃんとやりなさい」
甲 子「何?」
西 川「相手を思いやること」
三 浦「思いやる?」
西 川「そう。どこに投げたら相手が取りやすい
のかを考えてあげるんだ。甲子はどこに来た
ら取りやすい?」
甲子はグラブを胸のところに置く。
甲 子「ここ」
西 川「玄は?」
三 浦「(甲子と同じ所を指し)ここ」
西 川「じゃあ、お互いそこを目指して投げてみ
よう。出来る?」
甲 子「うん!」
三 浦「俺も!」
西 川「(微笑む)」
○同・中
西 川「そんなこともあったかのう」
甲 子「あの時のことは忘れません」
三 浦「俺たちの原点です」
西 川「(感慨深い)」
静かにお茶を啜る西川。
西 川「(湯飲みを置きながら)しかし、玄。あ
れは驚いた」
三 浦「?」
西 川「まさか、あんなことを考えてたとはな」
○会見場(回想)
三浦と他数人が長机の前に座っている。
目の前にはマスコミ関係者がズラリと並
んでいる。
三 浦「私たちが新たに立ち上げる法……ライジン
グプロジェクト!」
* * *
『ライジングプロジェクト』と書かれた
冊子──。
N 「ライジングプロジェクトとは……現在少年
法改正により、刑事処分が下される年齢が14
歳以上となり、犯罪の低年齢化や凶悪化が社
会問題になっていた」
犯罪を犯す少年たちの描写──。
N 「それに伴い全国に6か所ある少年刑務所
とは別に、14歳から18歳の内、特に目に余る
犯行等を犯した者を収監する施設を法務省に
よって設立される」
特別少年刑務所の外景──。
N 「刑務所内で、どの様な事が行われている
かは完全に非公開の為、民間のNPO法人や人
権団体等から問題視されていた」
北海道、東京、大阪、鹿児島に印が付け
られている日本地図──。
N 「全国に4か所ある特別少年刑務所は、厳
重に管理されており、一切の情報も漏れるこ
とはない」
* * *
三 浦「今回、問題視されている特別少年刑務所
の更生プログラムを新たに作成しました」
ザワつく会場。
三 浦「全特別少年刑務所の中から選抜し、野球
チームを構成します!」
記者1「野球?」
記者2「チームを作ってどうするつもりですか」
三 浦「試合をしてもらいます」
記者1「どのチームと」
三 浦「来年開催される、夏の全国高校野球の優
勝校です」
全 員「ええッ」
どよめく会場──。
三 浦「選抜したチームが勝利した場合、罪の軽
減ないし、活躍により恩赦を与え、一定の条
件のもと出所を認めることとします。それが
ライジングプロジェクトです!」
記者1「そのプロジェクトが子供たちの更生に繋
がるとでも?」
記者2「野球をそのようなことに使っていいので
すか!」
記者3「優勝校って、真っ当に野球をしてきた球
児に失礼ではないですか?」
三 浦「私たちが少年たちに手を差し伸べること
で、明るい未来を照らすきっかけになればと
思っています」
○北海道・札幌時計台
雪が降り積もっている。
○神威特別少年刑務所・外〜隣接グラウンド
作業服を着て雪かきをしている少年た
ち。
「エイヤぁ、エイヤぁ、ヤッヤッ!」の
掛け声が聞こえる。
* * *
野球の練習着を着た少年たちが、刑務所
に隣接されたグラウンドでランニングを
している。
* * *
雪かきの手を止め、その様子を見ている
少年・三田村隆三(17)は、筋骨隆々な風
貌。
三田村「……」
刑務官「三田村! サボってんじゃねぇぞ!」
三田村「(舌打ちして)ちッ」
持っていたスコップで大量の雪をかき上
げる。
三田村「ふんッ」
その雪が刑務官の全身に降りかかる。
三田村「(悪気なく)すいやせぇん」
○鹿児島・桜島
──が巌々としている。
○薩摩特別少年刑務所・隣接グラウンド
元気に野球の練習をしている少年たち。
○同・独房
外から「さぁ、来ぉい!」などと声が響
き聞こえてくる。
少年1「いいよな、あいつら。野球してここから
出れるなんて」
眼鏡を掛けた少年・多田誠(16)が本を読ん
でいる。
多 田「静かにしてもらえますか」
「さぁ、来ぉい!」の声が響き渡る。
少年1「あいつらのがうるさいだろ!」
多田「(少年1を見て)せからしか」※鹿児島弁で
「うるさい」
○大阪・太陽の塔
──がそびえ立っている。
○飛鳥特別少年刑務所・隣接グラウンド
バッティング練習をしている少年たち。
○同・中庭
自由時間を様々に過ごしている少年た
ち。
「待て、コラあ!」の声。
4、5人に追いかけられている少年・井
田天馬(てんま・17)。
天 馬「(走り逃げながら)おしーりペンペン」
ブチッと切れる少年たち。
天 馬「うっひょお!(さらに加速する)」
追いつけぬどころか離されていく少年た
ち。
と、突然現れた刑務官に掴まれる天馬。
天 馬「げッ」
刑務官「やめんかあッ」
○東京・スカイツリー
観光客で賑わっている。
○武蔵特別少年刑務所・食堂
ご飯を食べている少年たち。
* * *
1人ぽつんと座っている少年・清和(きよ
わ)リキ(15)が、銀皿に乗せられたご飯に
手を付けようとする。
が、ガシャンと銀皿が地面に落ちて、ご
飯が散らかる。
リ キ「!」
「悪い悪い」と、人相の悪い少年・真田
郷(ごう・18)と取り巻き2人がニヤニヤし
ている。
リ キ「な、何するんですか」
真 田「あ? 謝っただろうが」
少年1「(床のご飯を指し)食べればいいだろ」
リ キ「食べろって……(泣きそうになり)」
真 田「おいおい、それでも殺人犯か。ほら、か
かってこいよ」
リ キ「(泣くのを我慢しながら)僕は……僕は殺
人なんて!」
刑務官「何をやってる、お前ら!」
真 田「これはこれは刑務官殿。心配しないで下
さい。仲良くしているところでして」
リキと肩を組んで仲良しをアピールす
る。
真 田「(リキに)なあ?」
リ キ「……(小さく頷く)」
刑務官「面倒事を起こすなよ。まったく」
去っていく刑務官。
真 田「(ニヤリと)ふんッ」
リキの腹部を殴る真田。
リ キ「うッ」
真 田「てめぇは一生檻の中だ」
「ははははッ」と笑いながら去っていく
真田たち。
お腹を押さえて伏せっているリキ。
リ キ「(涙を流し)何で僕が……」
コツンと音が聞こえる。
リ キ「(顔を上げ見る)!?」
テーブルの上にご飯が乗った銀皿が置か
れている。
リ キ「(横を見る)……」
立っていたのは橘光平(17)。
光 平「……」
リ キ「あの……」
光 平「やる」
去っていく光平の後ろ姿──。
リ キ「……」
○警視庁・警視総監室
机に『警視総監 林田正義』のプレート
──。
木更津の声「以上4つの施設で1チームずつ作
り」
机の前に立っている警視正の木更津円(ま
どか・45)。
木更津「総当たりで試合を行い、その中から選手
選考をし、最終的にチームライジングを形成
するという流れに」
林田正義(まさよし・61)「すでに練習を行っている
と?」
木更津「はい。元々野球やソフトボール、他のス
ポーツを取り組むということをしていまし
て」
林 田「知ってる」
木更津「それで、このプロジェクトが始動する前
段階から既に全国の少年院、少年刑務所、鑑
別所等で選別が行われており、その少年たち
が4つの特別少年刑務所に送致され、日々、
野球に関するあらゆる教育を受けていると」
林 田「(怪訝そうな表情で)気に食わん」
木更津「総監、事前に法務省から通達は」
林 田「あるわけないだろ!」
木更津「(ビクッとして)」
林 田「法務省のやつら……いや、三浦の独断
か……?」
木更津「矯正局局長代理」
林 田「ここまで世論、マスコミが盛り上がって
るんだ。今さら無かったことには出来んだろ
う」
木更津「しかしそれだと」
林 田「なぁに、試合が出来なければ問題なかろ
う」
○法務省・法務大臣室
法務大臣・近藤剣(つるぎ・62)と事務次
官・殿重正隆(とのしげまさたか・53)が
いる。
殿 重「警視庁から抗議の文が届いています」
近 藤「放っておけ」
殿 重「かしこまりました」
近 藤「三浦は?」
殿 重「彼と一緒に」
近 藤「このプロジェクトを失敗するわけにはい
かん」
殿 重「三浦が人生かけて取り組んできましたか
らね」
近 藤「警視庁の動向を注視しておけ」
殿 重「はい……しかし、ようやくですね」
近 藤「ああ」
○マスコミ・各所
社 員「局長! 大変です!」
編集局局長「!」
* * *
記者1「(PC画面を見て)20時から記者会
見?」
PC画面──『ライジングプロジェクト
に関する重大発表』と書かれている。
* * *
編集部長「今夜空いてるやつはいないのか!」
新人女性記者・上原美菜(23)がいる。
美 菜「(手をバッと挙げ)私が行きます!」
○甲子の家・リビング
三 浦「大きくなったなぁ、めぐみちゃん」
甲子の娘・めぐみ(7)の頭を撫でる三浦。
めぐみ「玄おじちゃん、髪くしゃくしゃになる」
三 浦「ははは」
唯の声「お茶でもいかがですか、三浦さん」
キッチンで洗い物をしていた甲子の妻・
唯(36)が言った。
三 浦「いえ、ゆっくりしている暇は」
甲 子「(もいた。唯に)また今度な」
唯 「それは残念」
めぐみ「もう行っちゃうの」
三 浦「おじちゃんも行きたくないんだよ、ホン
トは」
唯 「大丈夫ですか、今回のプロジェクト。批
判が多いと聞きますが」
三 浦「初めてのことですから。みんな不安なん
です。でもその1歩を誰かがやらないと」
甲 子「成功も失敗も、やってみなきゃわからな
いからな。もし、失敗してもそこから学ぶこ
とは必ずある」
三 浦「ですから失敗も成功と同じことだと俺は
思ってます」
唯 「でも……」
甲 子「野球は真摯なスポーツだ。更生プログラ
ムに野球をなんて言う人もいるが、1つの白
球が人と人を繋ぎ、その白球が魂となり、野
球が人が成長させる」
めぐみを抱っこする甲子。
めぐみ「パパ?」
甲 子「子供たちの未来はこれからなんだ。な
ぁ、めぐみ」
顔をスリスリする甲子。
めぐみ「(髭がジョリジョリして)痛い、パパ」
唯 「(ふふふと笑い)じゃあちゃんと身だし
なみ整えないといけませんね、あなた」
グイグイと甲子を遠ざけるめぐみ。
甲 子「(嫌そうな表情で)えええ、めんどくさ
い」
置かれているバットとボール──。
○記者会見場(夜)
100人近いマスコミが集まっている。
人混みを掻き分け、グイグイと前に来る
美菜。
美菜のM「(フンスと意気込んで)この案件、絶
対ものにしてみせる!」
と、ドアが開き、入ってくる三浦。
美 菜「!」
三浦は深々と一礼し、椅子に座る。
三 浦「急遽お集まり頂き、誠に感謝いたしま
す。各方面に通達させて頂いた通り、今回ラ
イジングプロジェクトに関しての重大発表を
させていただきます」
カメラのシャッター音がパシャパシャと
鳴る。
三 浦「ライジングプロジェクトは、本日から正
式にスタートいたします!」
「おおお」と会場がざわつく。
三 浦「それに伴い、チームライジングの指揮を
執る監督を発表します」
○ひまわり児童養護施設・子供部屋(夜)
子供たちを寝かしつけている西川。
スタッフ「園長、会見が始まりました」
西 川「(指を口元に当て、シーっとする)」
○武蔵特別少年刑務所・独房(夜)
ベッドに横になっている光平。
光 平「(目を瞑っている)」
そこにリキが入って来る。
リ キ「橘さん、今日はありがとうございまし
た」
光 平「(目を瞑っている)」
リ キ「僕なんかのために……」
光 平「光平」
リ キ「!?」
光 平「光平でいい」
リ キ「え」
光 平「お前は」
リ キ「清和……清和リキ」
光 平「じゃあリキな」
リ キ「へ……」
光 平「嫌か?」
リ キ「(首をブンブンと横に振る)はい、光
平……君」
○記者会見場(夜)
三 浦「中に(スタッフに合図する)」
スタッフがドアを開ける。
美 菜「(緊張した面持ちで)」
張り詰められた空気が漂う会場。
美 菜「!」
ドアから入って来た人物、それは甲子だ
った。
甲 子「(髭も剃り、さっぱりした風貌でビシッ
と決めたスーツ姿)」
シャッター音が鳴り響く会場。
甲 子「(凜々しい表情で)」
三浦の横に座る甲子。
更に勢いを増してカメラのシャッターが
パシャパシャと光る。
甲 子「(ネクタイをキュッと締め)私がライジ
ングの監督を務める、スーパースターの沢村
甲子です!」
第2話へ続く。
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